桜才学園での生活   作:猫林13世

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まだまだ可能性は十分にある…はず


攻める二人

 カナさんとのじゃんけんに勝った私は、タカトシ君の隣に布団を敷く権利を得た。それ程広いわけではないので、当然の如く布団はくっつけて敷く事になる。

 

「タカトシ君、間違って私の布団に入って来ちゃダメだぞ?」

 

「入りませんよ。そもそも、何でこんなにくっつけるですか? いくら広くは無いとはいえ、もう少し離して敷く事くらい出来ますよね?」

 

「そこはほら、お泊りだし」

 

 

 私の理由になっていない言い訳に首を傾げながらも、タカトシ君はそれ以上ツッコんで来なかった。それでも、顔は私を疑っているようだったけども。

 

「折角タカ君と同じ部屋で寝れるのに、私はベッドでタカ君は布団……こうなったら夜中にトイレにいったフリをしてタカ君の布団に……」

 

「カナさ~ん? 思考がダダ漏れだよ?」

 

「しまった!? これじゃあタカ君に夜這いを掛ける計画が……」

 

「アンタは大人しく寝てろ!」

 

 

 計画が露呈してしまったカナさんは、タカ君に睨まれて竦み上がった。それでも、何処か気持ちよさそうな雰囲気がするのは、私もカナさんもタカトシ君相手ではドMなんだなと思い知らされた。

 

「電気消しますよ」

 

「暗くなったシチュも悪くないですな」

 

「だから余計な事を言うな」

 

 

 タカトシ君に再び睨まれたカナさんは、慌ててベッドにもぐりこんだ。おそらく大洪水を誤魔化す為なんだろうな~。だって私も濡れてるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 普段だったら津田副会長の部屋を覗きこむのは簡単だ。覗きこめてもすぐにバレるが、見ようと思えば見えるのだ。

 だが今日は津田副会長の部屋にいるのは、風紀委員長と英稜の副会長の二人で、津田副会長はあの部屋にはいない。もしあの部屋にいてくれれば、爛れた生活を目撃出来たかもしれないのに……

 

「津田副会長はコトミさんの部屋だったわね……そうなると何処から覗きこめばいいのかしら」

 

 

 隣の部屋なのだが、構造的にこの電柱からではコトミさんの部屋は覗きこめない。隣の部屋を覗きこむ為には、新しいポイントを探さなければ……

 

「なに、してるんですかね?」

 

「ッ!? つ、津田副会長……このような時間に何故外に……」

 

「それはお互い様ですよね。それに、電柱によじ登っている畑さんの方がよっぽど不自然です」

 

「私は……その……」

 

「大人しく家に帰るか、警察に突き出されるか、どっちが良いですか?」

 

 

 今回もスクープは諦めるしかなさそうね……津田副会長は私の気配を探れるのか、狙いを定めようとすると私の側に現れてチャンスを潰してくる。写真さえ撮れれば、いくらでもねつ造出来るのに……

 

「だいたい、何で俺ばかり狙うんですか……他の相手じゃダメなんですか?」

 

「津田副会長の記事が一番高く売れるから……あっ!」

 

「アンタ、まだ商売してたのか」

 

 

 ついつい本音を言ってしまったせいで、私は津田副会長に意識を刈り取られてしまった……次に目覚めたのは、コトミさんの部屋で七条さんの隣の布団だった……つまり津田副会長が使うはずだった布団だ。彼は何処で寝たのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キッチンから良い匂いがしてきたので、私は半覚醒状態から完全に目が覚めた。昨日の夜もツッコミが大変で、会長とコトミの相手を普段からしているタカトシの事を改めて尊敬した。

 

「それにしても……今何時だろう」

 

 

 身体を捻って壁掛けの時計を見ると、普段ならまだ寝ててもおかしくない時間だった。疲れてるけど、慣れない場所で寝たから疲れが抜け切る前に目が覚めてしまったのだろう。

 

「顔でも洗ってこよう」

 

 

 キッチンで調理しているのはタカトシだろうし、この時間なら他には誰もいないだろう。それだったら私にだって手伝えることがあるかもしれない。

 

「おはよう、タカトシ」

 

「おはよう、スズ。早かったね」

 

「あの二人の相手をしてた所為で、夢の中でもツッコミを入れてた気がするのよ」

 

「それは……お疲れ様」

 

「何か手伝いましょうか?」

 

「良いよ別に。それよりも、そろそろ他の人も起きてくるだろうから、着替えるように言っておいて。纏めて洗濯するから籠に入れておいてほしいんだ」

 

「それくらい私たちがするわよ。それに、アンタに下着を洗ってもらうのはさすがに恥ずかしいし」

 

 

 主夫であるタカトシにとって、私たちの下着なんてただの洗濯物なのだろう。実際に、昨日お風呂に入る為に脱ぎ、そのまま洗濯籠に放置されている下着にも目もくれていない。コトミちゃんので見慣れてるのだろうし、タカトシはそういった行動を取るような男子じゃないしね。

 

「おや~、萩村さんじゃないですか。朝早いんですね~」

 

「畑さん!? 何故貴女がコトミの部屋から……」

 

「昨日津田副会長に襲われまして……気がついたらここにいました」

 

 

 な、何ですって! タカトシが畑さんを襲ったなんて……ん? 別に「性的な意味で」襲う訳が無いし、そうなると文字通りの意味なのかしら……

 

「何をしたんですか?」

 

「津田副会長が七条さんと魚見さんとくんずほぐれつしてるんじゃないかと思って覗こうとしたら、その場面を津田副会長に見られてね……そのまま外で説教されて、隠してた事をつい喋ったら襲われまして」

 

「やっぱり普通に襲われただけなんですね」

 

 

 普通にという表現もおかしいが、畑さんが私に勘違いさせようとした意味では無いと確信が持てた。だってタカトシがそんな事をするわけ無いものね。

 

「その代わり、私が寝ていた布団に七条さんと魚見さんが忍び込んで来ましたけどね」

 

「あの二人は……」

 

 

 タカトシがそこにいなくて良かったと思う。だっていたら今頃二人は気絶させられてただろうしね……




攻めたけど、畑さんが邪魔をする……

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