桜才学園での生活   作:猫林13世

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まだ諦めませんよ


それぞれの朝

 津田副会長にやられたが、その結果として室内に侵入する事が出来たので、これはこれで良かったのかもしれない。誰がどうアピールするのかも気になるが、津田副会長の料理が食べられるのは大いに嬉しい事だ。

 

「ところで、何故畑がここにいるんだ?」

 

「実は昨晩、津田副会長に襲われまして……」

 

「なにっ!? タカトシ! 襲うなら私を襲え!」

 

「いえ……会長が思ってる『襲う』ではなく」

 

「つまり、タカ君の事を盗撮しようとしたところ、逆にタカ君に殴り倒されたと?」

 

「ええ。英稜の生徒会長さんの言うとおりです」

 

 

 天草会長は私が狙った通りに勘違いしてくれたが、英稜の生徒会長はそこまで直情的では無かったようだ。てか、この人は確か、津田副会長と同じ部屋で寝てたのだから、それくらいの理解力はあって当然か。私に夜這いを掛けようとしたんだから……

 

「折角タカトシ君の布団に忍び込んだのに、寝てたのが畑さんだったからね~、残念」

 

「でも、禁断の関係ってのも良いですよね~」

 

「コトミさんは、タカ君との禁断の関係を狙っているからですよね?」

 

「あっ、バレました?」

 

 

 この空間にはツッコミという概念が存在していないのでしょうか。津田副会長は食事の準備、萩村さんと英稜副会長の森さんは洗濯と、主だったツッコミは甲斐甲斐しく家事に勤しんでいるのだ。ちなみに、五十嵐さんはこの状況に耐えられず気を失っているのだけども……

 

「タカ兄に襲われるのでしたら、私は何でもしますよ~」

 

「でも、タカトシ君にアピールしても、怒られて終わりだもんね」

 

「性的アピールはタカ君には逆効果ですからね……いっそのことツンデレで攻めてみては?」

 

「タカ兄にはツンデレは利きませんよ。ちなみにヤンデレもクーデレもダメです」

 

 

 なるほど、津田副会長は直接的アピールしか受け付けない、と……これはいい情報が……? 何だか急に寒気がしてきたような……

 

「なに、メモってるんですかね?」

 

「こ、これは、その……」

 

 

 あっ、私死んだわね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リビングから誰かの悲鳴が聞こえたような気がしましたが、おそらくはタカトシさんに怒られた誰かの悲鳴だろうという事で、私も萩村さんも特に気にする事無く洗濯を続けていた。

 

「それにしても凄い量ね……」

 

「仕方ありませんよ。私たちだけでも六人分、更にタカトシさんとコトミさんのもあるんですから」

 

 

 最初はタカトシさんが洗濯もすると言っていたのですが、さすがに下着を洗濯してもらうのは恥ずかしいとのことで、じゃんけんで負けた私と萩村さんが洗濯を担当する事になったのです。

 

「そういえば、五十嵐先輩と森さん、どっちがタカトシのベッドで寝たの?」

 

「さすがに使えないので、二人で床に布団を敷いて寝ました」

 

 

 本当は私も五十嵐さんもタカトシさんのベッドを使いたかったのですが、争うのは不毛だという事で仲良く使わないという事にしたのです。

 

「へぇ……会長たちなら我先にって感じだろうけど、森さんと五十嵐先輩はそんな感じなのね」

 

「萩村さんならどうしました? タカトシさんのベッドで寝ましたか? それとも私たちと同じように床に布団を敷きましたか?」

 

「どうかしらね……その時にならなきゃ分からないわよ、そんな事」

 

 

 口ではそんな事を言っている萩村さんですが、顔にはベッドで寝たいとハッキリそう書いてありました。やはり萩村さんもタカトシさんの事を想っているのですね。

 

「競争率、高いですね……」

 

「えっ? ゴメン、聞こえなかった」

 

「いえ、独り言ですから」

 

 

 そもそも私が出会った時から、倍率はかなり高い状態でしたし……今のところ私が一番自然にタカトシさんと話せていますが、それはただの偶然でしょうしね……ふとした拍子に私以外の誰かと自然に話してるかもしれませんし……

 

「(露骨にアピールは出来ないけど、異性だという事を忘れられないようにしなくちゃ!)」

 

 

 随分と明後日な方向の目標だけども、異性だと思ってさえもらえれば、恋人になるチャンスはあるはずだもんね。異性だという事を忘れられたら――友達だと思われたら、もうそこから先は無いのだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 畑さんの分まで用意しなければいけなくなったけれども、これだけいるんだから今更一人分増えたところで労力は大して変わらない。俺は九人分の朝食を作り終えてテーブルへと運ぶ事にした。

 

「コトミ、少し手伝え」

 

「えぇー! 私が手伝っても戦力にならないよ」

 

「運ぶのくらいは出来るだろ。お前はこの家の住人なんだから、少しは動け」

 

「しょうがないなー……あっ、これ美味しそう」

 

「摘まみ食いするなよ」

 

 

 コトミは昔から摘まみ食いをする癖があるので、軽く釘をさしておく。最近はその癖は治りつつあるが、ふとした拍子に再発されたら面倒だからな。

 

「分かってるよー。さすがにそこまで子供じゃないよ。生えて無いけど」

 

「……口だけじゃなくシッカリ身体を動かせ。全然運ぶ気配が無いぞ」

 

「大丈夫だって! でも、タカ兄ほど持てないけどね」

 

「持てる分だけでいい。回数を分ければいいんだから」

 

 

 下手に纏めて持ってこぼされるのが一番面倒だからな。コトミはコトミのペースで運ばせる事にして、俺は俺で運ぶ。コイツが料理とか出来ればそっちも手伝ってもらったのだが、さすがに客人に朝から謎の物体を食べさせるわけにはいかないからな……




コトミはさておき、他のキャラは思うところが多々ある一日になるでしょうね。

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