桜才学園での生活   作:猫林13世
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優秀なのか、ダメメイドなのか……


ドジっ子メイドのお迎え

 生徒会の仕事で遅くなってしまったので、私たちは今七条家の出島さんが運転してくる車を待っていた。

 

「すみません、七条先輩」

 

「気にしないで~。ところで津田君、今は周りにシノちゃん達しかいないからさ」

 

「?」

 

「『アリア』って呼んで」

 

 

 私の頭上で、何やら看過できない内容の会話が聞こえてきた。確かに七条先輩はあの日以降、生徒会室や学外では何かにつけて津田に名前で呼んでもらおうとしているが、津田はそれを受け入れない。それは同様に、私の事も苗字で呼んでいて「スズ」と呼んでくれていないのだが。

 

「てか、俺は近所ですし歩いて帰りますよ」

 

「ダメだよ~。いくら津田君が強いからって、沢山の女子相手に勝てるかどうか……」

 

「何故女子? そして、俺を襲おうなんて考える女子はいるんですかね」

 

「相変わらず自己評価が低いわね、アンタ」

 

「そうかな?」

 

 

 クラスメイトの半数以上は津田の事を意識してるというのに、当の本人たる津田はこの有様。鈍いわけでは無く、私たちの恋心には気づいているようだし、英稜の森さんには私たちとは違う雰囲気で接してる場面が多々見られるし……

 

「お待たせしました」

 

「なんか凄い車が来たぞ、アリア」

 

「うん、これがウチの車だよ~」

 

「そうなのか! 早速乗り込むぞ」

 

「……相変わらずコドモだなぁ」

 

 

 見た事の無い車にテンションが上がった会長を見て、津田は会長たちに聞こえない声量で呟いた。年上なんだけど、確かに会長は子供っぽいわよね……

 

「津田様、さぁお乗り下さい」

 

「普通は主人である七条先輩が先なのでは?」

 

「私のご主人様はタカトシ様ですので」

 

「……あの時名前を呼び捨てて黙らせたのが原因か」

 

 

 怪しい息遣いの出島さんを前に、津田は頭を抑えていた。本当に、津田は一人で帰った方がよさそうね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局タカトシ君も私たちと一緒に車に乗ってくれたのだけど、タカトシ君の隣はスズちゃんに取られてしまった。

 

「じゃあタカトシ君。車の中だからさ」

 

「はぁ……しかし、そんなに名前で呼んでほしいものですか?」

 

「うん!」

 

 

 タカトシ君は特にそう言う事は無いのかもしれないけど、私たちからしたら、タカトシ君に名前で呼んでもらえるなんて絶頂モノなのだ。

 

「タカトシ様、出来れば私の事も……」

 

「ちょ! 出島さん、前みて前!」

 

「タカトシ様に命令されなければ動きません!」

 

「……大人しく前を見て運転しろ、サヤカ!」

 

「ッ! かしこまりました、ご主人様」

 

 

 スズちゃんに言われても前を向かなかった出島さんは、タカトシ君に名前を呼び捨てにされ、命令口調でそう指示されると嬉しそうに前を向き運転に集中し始めた。

 

「ハァ……何で俺がこんな目に」

 

「大変ね、タカトシも」

 

「ねぇねぇ、私も呼び捨てが良いな~。ダメ?」

 

「……アリアも黙ってろ」

 

「ッ! はい」

 

 

 タカトシ君に呼び捨てにされただけでイっちゃった……もう大洪水だよ。

 

「な、何で私の事は会長としか呼ばないんだ! 私の事も名前で呼べ~!」

 

「シノちゃん、タカトシ君に名前を呼んでもらうとこうなっちゃうよ~?」

 

「なん…だと……アリア、大洪水じゃないか!?」

 

 

 シノちゃんに見える角度でスカートを捲り、その中を確認してもらった。シノちゃんにタカトシ君の前で絶頂を迎える覚悟があるのかを確認する為の行為だったんだけど、シノちゃんは私のパンツを見て興奮してるようだった。

 

「それほど興奮するものなのか?」

 

「そりゃもう! あの出島さんですら大興奮するんだから~」

 

「「………」」

 

 

 向かいの席のタカトシ君とスズちゃんの視線が何となく痛いけど、そんな事も気にならないくらいの大興奮だよ~。結局シノちゃんは覚悟出来なかったのか、そのまま不貞寝をしちゃったんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 出島さんのミスで、何故かこの車は高速に乗っている。時間が時間なので、俺以外の三人は船をこいでいたり、完全に寝てしまっている。

 

「申し訳ありません、タカトシ様。後でご存分にお仕置きを……」

 

「しません。それよりもさっさと帰ってください」

 

「あぁ!! まさかの放置プレイとは……」

 

 

 ホント、この人はダメ人間だな……横島先生といい勝負かもしれない……

 

「う~ん……はっ! ご、ゴメン……」

 

「別にいいよ。疲れてるんだろ?」

 

「うん……じゃあもうちょっとだけ……」

 

 

 目を覚ました萩村だったが、やはり疲れてるのか再び寝てしまった。俺の肩に寄りかかる――肩じゃ無く腕だな。とにかく俺を枕に寝ている萩村の頭を、俺は軽く撫でた。

 

「萩村のおかげで、俺も頑張れるんだ。だから、ありがとう」

 

「えへへ……」

 

 

 そう言えば、睡眠聴取が出来るんだっけ? じゃあ今のセリフも聞かれたのか。まぁ別に起きてても言える事だし、恥ずかしがる事も無いか。

 

「う~ん……」

 

「何故こっちに倒れてくる……」

 

 

 向かい側の席で寝ている七条先輩が、何故か俺の方に向かって倒れてきた。元々船をこいでいただけだったのだが、どうやら本格的に寝てしまったようだ。だが、この動きはおかしいんじゃないか?

 

「タカトシ君……良い匂い……」

 

「何処の匂いを嗅いでるんですか、貴女は……」

 

 

 向かい側の席に七条先輩を戻し、シートベルトで固定させる。少しやりにくいが、やってやれない事は無かった。

 

「あとどのくらいかかります?」

 

「間もなく戻れるかと」

 

「ホント、お願いしますよ……」

 

 

 学校を出てから既に二時間。やっぱり歩いて帰った方が早かったな……シフト入って無くてホント良かったよ……




とりあえずは奮闘中のアリア……


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