桜才学園での生活   作:猫林13世

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相変わらずのモテ具合……


聖戦間近

 ついに今年もこの季節がやってきてしまった。普通であれば私はチョコを渡す側なのだが、何故か毎年大量にチョコを貰うのだ。それも悩みの種なのだが、別の事でも私は頭を悩ませていた。

 

「今年は、津田のヤツはどれくらいチョコを貰うのだろうか……」

 

「タカトシ君に渡すのが確定してるのはねー……カエデちゃん、スズちゃん、ムツミちゃん、マキちゃん、カナさん、サクラちゃん、後はクラスメイトとか同級生、エッセイのファンといっぱいいるね~」

 

「アリアは渡すのか?」

 

「私~? もちろん渡すよ~。タカトシ君には色々とお世話になってるし~」

 

「つまり、義理だと?」

 

 

 この確認に深い意味は無く、あくまでも確認だと認識してほしい。断じてアリアが本気になったら勝ち目がないとか考えてないからな!

 

「義理ものの方が萌えるんじゃない? 血縁より義理なら本番が出来るし」

 

「なるほど! ……ん? どこから話が変わったんだ?」

 

 

 私は義理チョコか否かを確認していたのに、何故血縁の話になっているのだろうか……まぁ、興奮したから別にいいが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何だかクラス中が色めきだってる気がするが、何かあったのだろうか……

 

「萩村、何だか周りがざわざわしてる気がするんだけど」

 

「今日と言う日がどういう日なのかを自覚してないのね、アンタ……」

 

「今日? 今日は二月の……あっ、なるほど」

 

 

 今日は二月十四日だったのか……道理で男子の目がぎらぎらしてるなと思ったんだよな……

 

「おはよう、タカトシ君!」

 

「……去年も言ったが、今日気合い入れても意味無いだろ。アピールしたところでチョコを買ったり作ったりは出来ないんだから」

 

 

 眼鏡を新調し、髪の毛をオールバックにして気合いを入れて登校してきた柳本にツッコミを入れて、俺は読みかけの本を読む為に机の中を漁ろうとした、のだが……

 

「なんか箱がいっぱい入ってるんだが……」

 

「アンタ、自分の人気を自覚してないからね……それは当たり前の数だと思うわよ」

 

 

 昨日本を忘れて帰ったため、残りわずかが気になって登校してきたのに、その本が見当たらないほど机の中に箱が詰まっている。誰がどうやって詰めたんだ……

 

「タカトシ君、これあげる」

 

「どうも」

 

「一応手作りだから!」

 

「ありがとう。ちゃんと感想を言った方が良い?」

 

 

 包みを丁寧に解き、俺は三葉から受け取ったチョコを一個口に運んだ。

 

「うん……美味しい。これはミルクチョコ?」

 

「上手に出来てたかな……?」

 

「市販されてても不思議じゃない出来だと思うけど」

 

 

 普通に美味しいので、俺は率直に感想を告げた。そうしたら三葉の顔がみるみる真っ赤に染まっていき、気づいたら逃げられてしまった。

 

「……俺、何かマズイ事言った?」

 

「リア充許すまじ……」

 

 

 柳本に問いかけると、血涙を流しながらそう言われた……何が何だか分からないが、男子連中に一日中鋭い視線を向けられる日になるのだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カナ会長と一緒に、タカトシさんにチョコを渡しに行く為だけに桜才学園を訪れた。私たちは既に桜才でも有名になっている為に、誰も不審がる事も無く校内に入る事が出来た。

 

「さてと、愛しのタカ君は何処にいるかなー」

 

「会長、普通に生徒会室にいると思いますけど」

 

「分かってますが、こうやって何処にいるか探してる時間も楽しいじゃないですか」

 

 

 そう言うものなのでしょうか……私には会長の気持ちはよく分かりませんが、何となく胸の辺りがモヤモヤしてるのは感じてます。

 

「あら? 英稜の魚見会長と森副会長……何かご用でしょうか?」

 

「桜才風紀委員長の五十嵐さん。いえ、ちょっと生徒会室に用事がありまして」

 

「そうですか」

 

「ところで、貴女もタカ君にチョコを渡すのですか?」

 

 

 カナ会長がズイっと五十嵐さんに身体ごと近づき、そんな事を聞いた。確かこの人、男性恐怖症なのにタカトシさんだけ大丈夫だという不思議な体質だったような……

 

「い、一応は……色々とお世話になってますので」

 

「主に、夜ですか?」

 

「ち、違います! 私は天草会長や七条さんのようにふしだらな目的でお世話になってるわけじゃありません!」

 

「別に私はふしだらとかなにも言ってませんが? 何故そのような事を言うのでしょうか?」

 

 

 獲物を見つけた狩人のような眼差しで五十嵐さんに近づいていくカナ会長……これは私が止めた方が良いのでしょうか?

 

「何を騒いでるんですか、貴女たちは……」

 

「つ、津田君! 助けて下さい!」

 

「何かご用ですか? 魚見さん、森さん」

 

「いえ、普段からお世話になっているタカ君に、これを渡しに来ました」

 

「それだけで、何故五十嵐さんがこれ程震える結果になったのか、詳しく説明してもらえますか?」

 

 

 タカトシさんに聞かれたので、私は正直に今のやり取りを伝えた。

 

「ハァ……とにかく、一応部外者は簡単に校内に入れないのはお二人も十分お分かりのはずですよね? 誰かしら生徒会メンバーに連絡を入れてから入ってくるようにしてください。そして五十嵐さんも、墓穴を掘るのだけは気をつけて下さい」

 

 

 そう纏めて、タカトシさんは私たちを生徒会室へと案内してくれる事になった。場所は分かってるし、案内が必要ではない事はタカトシさんも理解してるでしょうが、また同じような面倒事が起きるのを避けるための配慮なのだと、私もカナ会長も納得してタカトシさんの後をついて行った。これから、私たちはこの人にチョコを渡すのですが、おそらく生徒会室にはあの三人がいるでしょうし、また色々と問題が起こりそうな予感が、私はしていたのでした……




この後の場所が場所なので、ムツミは先に渡しました

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