桜才学園での生活   作:猫林13世

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これがムツミ救済になればいいが……


勉強会での……

 テストが近い事もあって、最近まともに部活出来て無いんだよなー。身体動かしたいなー。

 

「ムツミ、手が止まってるけど?」

 

「ううん、ちょっと考え事してて」

 

「勉強しなさい! 誰の為の勉強会だと思ってるのよ!」

 

「ごめん、スズちゃん……」

 

 

 補習候補者が多い私たちのクラスは、テスト前に成績優秀者であるスズちゃんとタカトシ君、それとネネが私たちの勉強を見てくれる事になったのだ。

 

「津田ー、これってどう解くんだ?」

 

「お前……これはさっき教えたやつの応用だぞ。何で分からないんだよ……」

 

「誰もがお前のように理解力が高いと思うなよ!」

 

「じゃあ柳本は俺には教わらないんだな? 萩村か轟さんに教えてもらうんだな」

 

「ゴメンなさい。理解力が低くてゴメンなさい」

 

 

 タカトシ君に見放されそうになって、柳本君は必死に謝っている。

 

「ムツミ、アンタ大丈夫?」

 

「へ? 大丈夫って、何が?」

 

「いや、顔赤いけど」

 

「え?」

 

 

 チリに指摘されて、私は慌てて手鏡を取り出して自分の顔を確認した。

 

「あ、あれ? 別に熱があるわけじゃ……熱っ!」

 

 

 自分のおでこを触ると、思ってた以上に熱を帯びていた。

 

「保健室に行った方が良いんじゃない?」

 

「うん、そうするよ……ごめんね、スズちゃん」

 

「気にしないで。それよりも、早く風邪を治しなさい」

 

「うん……あれ?」

 

 

 立ち上がり歩き出そうとしたのだけども、身体がふらついてしまった。

 

「おっと。大丈夫か?」

 

「う、うん……ありがとう、タカトシ君」

 

「津田、アンタムツミを保健室まで連れて行ってあげなさいよ」

 

「そうだね。一人で行かせるわけにはね」

 

 

 そ、それって保健室までタカトシ君と二人っきり……

 

「ふみゅ~……」

 

「ムツミが倒れた!?」

 

 

 私の意識はそこまでしかもたなかった。次に気がついた時、私は何故か自分の家の自分のベッドに横たわっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシの対応は、本当に早かった。ムツミの鞄から携帯を取り出して、中里さんに操作させて自宅に電話を掛けさせた。それで状況説明などはタカトシが行い、迎えに来るまでは保健室でムツミを寝かせておく。そして親が迎えに来たら車までタカトシがムツミを運んで自宅に帰させたのだ。

 

「津田君って、こういった時の判断が冷静で的確だよね」

 

「まぁ、何時も周りがやかましい事が多いから、不本意ながら常に冷静でいられるようになったんだろうね」

 

「それにしても、津田君がムツミの鞄を開けた時は驚いたよ」

 

「鞄にあれば一番良かったし。さすがに三葉の制服のポケットを漁るわけにはいかないだろ?」

 

「まぁね。そんな事してたら私が津田君を抑えつけてたけど」

 

 

 今タカトシは、中里さんと雑談を交わしている。勉強会は一時中断で、今は脳を休めているのだ。

 

「ほへ~……」

 

「情けないわね。まだ一時間程度しか勉強してないでしょ」

 

「そんな事言われてもな……俺はお前らみたいに優秀じゃないんだよ」

 

「こんな事でへばってるなんて、アンタ体力無さ過ぎなんじゃ無い?」

 

 

 そもそも、男子生徒がいるウチのクラスは、普通なら体育祭などで有利とされるはずなのに、何故か活躍した男子はタカトシただ一人だけ……これはつまり、他の男子の体力が無い事を証明しているのではないだろうか。

 

「まぁまぁスズちゃん。津田君以外の男子は、自家発電で体力を消耗してるんだよ」

 

「そうだそうだ!」

 

「……アンタらは津田に謝れ!」

 

 

 タカトシは家事全般やアルバイト、そして時間があれば走っていて、体力が有り余っているわけではない。そして、そんなふしだらな行為で言い訳しようなんて、本当に失礼ではないか。

 

「よーす。あれ? 三葉はどうした?」

 

「体調不良で先に帰しましたけど、何か用だったんですか?」

 

「いや、アイツもなかなかの成績不良者だからな。今回ヤバかったらさすがに庇いきれないって言いに来たんだが……」

 

「俺はアンタの行動を庇いきれないよ……」

 

 

 倒れこんでいる柳本の背後に周り、舌舐めずりをしている横島先生に、津田が呆れたツッコミを入れた。

 

「まぁ、今回赤点だったら柳本は留年、もしくは私に童○を捧げる事になるからね」

 

「そ、そんな~」

 

 

 この人、何で本当に教師なんて出来てるのかしら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クラスメイトの勉強を見る日々だが、ウチに帰ればもう一人問題児がいるのだ。

 

「タカ兄……これ、どう解くの?」

 

「昨日教えただろ。何で分からないんだ?」

 

「だって~」

 

「はぁ……ほら、シャーペン貸せ」

 

 

 コトミからシャーペンを借り、問題の横に必要な公式と解き方を書いていく。限りなく答えに近いかもしれないが、今はこれくらいして自分で解かせるしか方法が無いのだ。

 

「なるほど! こうやって解くんだね!」

 

「……お前昨日も同じ事言ってただろ」

 

「そうだっけ?」

 

「まぁいい。とりあえず赤点だけは取るなよ」

 

「分かってるって!」

 

 

 こうして前日までクラスメイトとコトミの勉強を見ていた所為で、俺は自分の勉強がろくに出来なかった……

 そしてテスト結果が発表される日……

 

 一位 津田タカトシ 800点

 一位 萩村スズ   800点

 三位 轟ネネ    750点

 

 

 あ、何とかなった……

 

「さすが津田ね」

 

「今回は私も津田君のおかげで点数が上がったよ」

 

「復習も兼ねてたからね。あれで何とかなった」

 

 

 今回は補習者の名前は貼り出されていなかった。つまり、誰も補習者がいないという事なのだろう。

 

「タカトシ君のおかげで、私も赤点回避が出来たよ」

 

「そっか。おめでとう」

 

「うん!」

 

 

 果たして喜んで良い事なのか疑問だが、とりあえず三葉が喜んでるんだから水を差すのは無粋だろう。

 

「タカ兄! 私も赤点補習じゃなかったよー!」

 

「まぁ、声を大にして言う事じゃないが、とりあえず良かったな」

 

「でも、さすがタカ兄だよね~。この私を補習から救ってくれるなんて」

 

「さすがに今回補習だと、留年が現実的になったからな……」

 

 

 身内が留年したなんて、恥ずかしくてたまらないからな……とりあえず、全員問題無く試験を終える事が出来て良かった。うん、これで心配事は無くなったはず……だよな?




やっぱりコトミは問題児……だが、タカトシも見捨てないお人好しなんですよね。

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