生徒会室から逃げ出して暫くした後、自分の格好が思いっきり校則違反だと言う事に気が付いた……仕方ない、生徒会室に戻るか。
「ちょっとそこの男子!」
「はい?」
「服装がだらしないわよ!」
「ああ……」
やっぱり注意されたか……噂では今の風紀委員長は校則違反者には厳しいって言うからな、風紀委員に見つかったのなら此処は素直に怒られよう……
「って、貴方は生徒会の……」
「ん?」
俺の事を知っているのか?
「何処かで会った事ありましたっけ?」
「何言ってるんですか、貴方はこの学園で一番有名な男子生徒なんですよ」
「俺が?」
特に目立つような風貌をしてる訳でも無いし、飛びぬけて運動や勉強が出来る訳でも無いのに、何故だ?
「あの~ところで……」
「何ですか?」
「遠くないですか?」
「!?」
近づこうとしたら近づいた分だけ逃げられてしまった……何でこの人は俺を避けるんだろう……知らない間に何かしてしまったのだろうか。
「おや~?」
「あっ、畑さん……」
「これはこれは風紀委員長、早速噂の生徒会副会長をチェックですか~?」
「噂?」
てか、あの人が風紀委員長だったのか……
「学園で一番ツッコミ上手な苦労人副会長津田タカトシ、見出しはこれで如何かしら?」
「あながち間違っては無いですが、内容が酷いので没収です」
「うわ~ん、結構渾身な出来だったのに~」
「それで、俺にまつわる噂ってどんなのですか?」
どうせろくな事では無いんだろうがな……
「次々と女子生徒を落としていく無自覚ラブハンター」
「その噂の出所は?」
「ん」
「おや~私ですか~?」
「ちょっと別室で話しましょうか?」
「いや~ん犯される~」
「そんな事しねぇよ!」
何で生徒会以外でもこんな人が多いんだ、この学園は……いや、生徒会でも居ちゃいけないんだろうがな……
「その前に貴方、服装がだらしないわよ!」
「スミマセン、生徒会室で作業してたら暑くって……」
「ですが、外に出るのならちゃんとした服装をしてくれないと困ります!」
「慌てて逃げてきたものでして……」
「逃げてきた?」
「ええ実は……」
俺は生徒会室であった出来事を事細かに風紀委員長に伝えた……
「またあの人ですか……」
「七条先輩の本質をご存知なんですか?」
俺の周りの男子に言っても信じてもらえないのに……
「1年の間では如何なのか知りませんが、2年以上の生徒なら誰でも知ってると思いますよ」
「そうなんですか……」
あの人、自重するつもり無いのか?
「そう言った事情があるのなら今回は見逃しますが、次からは気をつけてくださいね」
「分かりました……それで、何でそんなに離れてるんですか?」
「何でも無いですよ……」
「はぁ……」
「風紀委員長は男性恐怖症なのよ」
「男性恐怖症?」
何かトラウマでもあるのだろうか?
「それに、貴方は就任直後に更衣室やシャワー室の壁を取っ払うと宣言してますから」
「それはアンタの捏造だろうが!」
「えっ、それは本当なの?」
「当たり前ですよ!」
そもそもそんな事実行出来る訳無いでしょうが……しかも風紀委員長さんは俺が本当に言ったと思ってるみたいだったし……俺ってそんなに危険な男に見えるのか?
「えっとそれで風紀委員長さん……」
「それ、呼びにくく無い?」
「若干……え~っとお名前聞いても良いですか?」
「2年の五十嵐カエデです」
「五十嵐先輩ですか、一応俺も自己紹介しておきますね。1年、副会長の津田タカトシです」
「それじゃあお2人、手を握ってください」
「何でです?」
「こう見えても風紀委員長は男子の間で人気が高いんですよ」
それが如何して俺と手を握らなきゃいけないんだ?五十嵐先輩にいたっては既に震えてるし……だから俺はそんなに危険に見えますか?
「そして貴方は男女問わず人気ですし」
「せめて男女は問えよ!」
確かに女顔だとは言われた事はあるが、せめて人気があるのは女子だけにしてほしかった……
「その2人の仲の良い感じの写真が撮れれば、マニアにはたまらないでしょうからね」
「けだものー!!」
「今から生徒会室で説教ですね」
「さらば~」
「「逃がすか!……え?」」
五十嵐先輩も畑さんに手を伸ばしていて、同じく畑さんに手を伸ばしていた俺の手をぶつかった。
「きゃ!」
「あぶない!」
咄嗟に手を引いてバランスを崩した五十嵐先輩の手を引っ張って体勢を戻し、その勢いで今度は俺がバランスを崩した。
「痛っ……」
「シャッターチャンス!」
「何処が?……ああ!?」
俺の手を離さなかったのか、五十嵐先輩が俺の上にのしかかってる感じになっている……これはあらぬ誤解を生むぞ……
「津田君、大丈夫?」
「大丈夫ですが……先輩の方こそ平気なんですか?」
「何が……!?!」
「グエッ!」
鳩尾に体重の乗ったパンチを喰らい、俺はそのまま意識を手放した……何で俺が……
「えっ、あれ?」
「おやおや~津田副会長は気絶してしまいましたね~」
自分の体勢を自覚して、私は慌てて津田君を殴ってしまった……津田君は私を助けてくれただけなのに……
「如何しよう、津田君を保健室に運んだ方が良いですよね?」
「私に聞かれても困りますよ~。後はお若い2人に任せます」
「何を言って……」
「では、邪魔者は去りますね~」
「ちょっと!」
畑さんはいつの間にか居なくなってしまいました……てか、貴女も同い年でしょうが。
「如何しよう……とりあえず生徒会室に応援を呼びに行かないと」
私1人では運べないし、津田君のブレザーとネクタイはそこにあるみたいだしね。
「あら?」
「五十嵐、お前津田を襲ったのか?やるじゃん!」
「横島先生!?」
今一番会いたくない教師がドア越しに覗いていた。
「そっか、男嫌いな五十嵐が津田をね~……」
「違いますよ!」
「でも、津田を触っても平気なんだろ?」
「えっ?」
「だって今津田のこと揺すってたし」
そう言えば何処も鳥肌立ってないわね……
「風紀委員長にも春が来たってか……畜生、私にだって何時かは春がくるもんね!」
「教師が廊下を走らないでください!……とりあえず事情説明して生徒会メンバーに手伝ってもらうか……」
横島先生の言う事は大抵信じられてないので放っておいても平気でしょうし、それよりも今は津田君を如何にかしないとね。
「そう言えば、触られても平気だった……」
私は自分の手を見ながら生徒会室に向かった……事情を話したら会長と七条さんは案の定誤解したが、萩村さんが宥めてくれたおかげで暴走しないで済んだ。津田君のブレザーとネクタイは何故か七条さんが鞄に入れていたが、詳しく聞いて卑猥な話になったら嫌なのでスルーした。
津田君の気絶している教室に戻ったら、七条さんが上に跨ろうとしたので全力で萩村さんと2人で止めた……その騒ぎのおかげで(?)、津田君は意識を取り戻したのだった。
自分がカエデ好きなので早めに登場させました。この作品では最初から津田にだけ触れる設定にしましたが、基本的には原作通り男性恐怖症です