桜才学園での生活   作:猫林13世

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辛さは分からないですね……


花粉症

 最近七条先輩がくしゃみをしたり鼻をかんだりする事が多い気がする。風邪でも引いたのではないかと心配するが、この人の場合は風邪を引く理由が多そうだからなぁ……

 

「アリア、ひょっとして風邪か?」

 

「どうだろう……くしゃみや鼻水が止まらないけど」

 

「お腹出して寝たとか?」

 

 

 会長が話を振ってくれたのに便乗して、私は可能性を一つ上げてみる事にした。

 

「アリアの場合、お腹だけじゃ無く全部出して寝てるんじゃないか?」

 

「そんな事ないよ!」

 

 

 あっ、良かった。さすがに全裸で寝てるなんて言われたらどう対処すればいいか分からなかったし……

 

「白い靴下は履いてるよ!」

 

「胸を張って言う事じゃない!」

 

 

 七条先輩の中では、靴下を履いているだけで全裸では無いようだが、私からしてみれば全裸だと表現しても差し支えが無い格好だ……

 

「もしかして、花粉症じゃないですか?」

 

 

 最近花粉症の人が増えていると言うし、七条先輩が花粉症デビューをしたとしてもおかしくは無いだろう。

 

「鼻水が止まらないのも?」

 

「花粉症ですね」

 

「涙が出ちゃうのも?」

 

「花粉症ですね」

 

「最近お尻の締りが悪いのも?」

 

「花粉症ですねー」

 

「萩村、落ち着け」

 

 

 ツッコムのが面倒だったので流したら、背後からタカトシにツッコまれた……別に私は落ち着いているし、七条先輩の相手が面倒になったとかじゃないんだけどな……ただ処理に困ったから花粉症の所為にしただけなんだけど……

 

「最近花粉症、流行ってますよね~。そんな私も花粉症」

 

「コトミ、何だそのティッシュは」

 

 

 振り返ると、タカトシの他にコトミも立っていた。会長が指摘したように、コトミの鼻にはティッシュが詰められていた。

 

「鼻水止まらなくて」

 

「だからと言って、女子がそんな格好で歩くものではない。今良い物を貸そうではないか」

 

 

 そう言って会長は生徒会室に保管されていたあるモノをコトミに手渡した。

 

「ゴクリ……」

 

「何の解決にもなって無いし、まだその本あったんだ……」

 

 

 コトミが会長から受け取った本を見て、タカトシが呆れている……

 

「タカトシ君も一緒に見れば?」

 

「興味が無いですし、仕事があるんですから遊んでないでさっさと仕事してください。コトミも、用が無いならさっさと帰れ」

 

 

 会長と七条先輩に仕事をするように促し、コトミから本を回収し生徒会室から追い出したタカトシは、さっさと自分の仕事を始めていた。さすがに真面目だし、切り替えの速さも立派よね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バイト終わりにタカ君とサクラっちと一緒に甘いものでも食べようと思い、近所の甘味処に寄り道をしました。タカ君は男の子だけど甘いものが好きらしいので、誘う時にあれこれ理由を考える必要が無くて助かります。

 

「そう言えばタカ君」

 

「なんです?」

 

「桜才学園では花粉症が流行っていると聞きましたが」

 

「そうみたいですね。七条先輩やコトミ、後は横島先生などが今年から花粉症になったようですし」

 

「そうですか。タカ君の貯蔵ティッシュが無くなるかもしれませんね」

 

 

 男子は常にティッシュを持ち歩いているでしょうし、花粉症の人が欲しがるのは仕方ないでしょうけどね。

 

「会長、何故津田さんがティッシュを貯蔵していると思うんですか? 普通ポケットティッシュ一つくらいだと思いますけど」

 

「え? だって何処でもソロプレイ出来るように大量に持ち歩いてるんじゃないんですか?」

 

「……貴女の頭の中はどうなってるんですか」

 

「それ、七条先輩とコトミと横島先生にも言われました……俺の思考がおかしいんですかね?」

 

 

 どうやらタカ君はティッシュを大量に持ち歩いているわけでは無いようですね……まぁ、タカ君がそんな思考の持ち主であったのなら、とっくの昔にサクラっちの処女は失われているでしょうが……

 

「とにかく、タカ君は少し多めにティッシュを持ち歩いた方が良いよ? 特に花粉症の時期は欲しがられるだろうし」

 

「自分で用意しろとは言っておきましたけどね……」

 

「それってタカトシさんの仕事じゃ無いような気も……」

 

 

 タカ君とサクラっちに呆れられたような視線を向けられ、私は密かに興奮していたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 花粉症の所為か、最近ゴミ箱にティッシュが多く捨てられている。それ自体は別に問題無いのですが、男子が女子が使ったティッシュを狙っているのではないかと思うと見回りを強化しなければならないんですよね……

 

「委員長、見回り終わりました」

 

「ご苦労様。それで、異常は無かった?」

 

「問題無しですね。やたらと鼻をかんでいる人が目立ちましたが、それ以外は平和そのものでした」

 

「そう……ご苦労様」

 

 

 後輩を労い、私は少し考え込む。鼻をかんだティッシュを狙うなんて、さすがにあり得ないのかしら? でも、畑さんがそれもグッズになると言っていたし……

 

「ちょっと出てきます」

 

「行ってらっしゃい」

 

 

 後輩に見送られ、私は風紀委員会本部から見回りに出た。自分の目で確かめれば、畑さんの言っていた事が事実かどうか分かるでしょうしね。

 

「男子に近づくのは……でも、風紀を守る為」

 

 

 見回りを始めてすぐ、廊下の角に集まっている男子の集団を発見した。だけど、何をしているのかはここからでは確認出来ないし、私は男子に近づくのが苦手だし……どうすればいいんでしょうか……

 

「何してるんです?」

 

「ひゃっ!? つ、津田君……驚かさないでよ」

 

「いえ、普通に近づいただけなんですけど」

 

「それでも! ……ところで、あの男子たちが何をしてるか、津田君は分からない?」

 

「……またアイツらは余計な物を持ちこんでるな」

 

「余計な物?」

 

 

 それなら風紀委員長権限で回収しなければ……そう思い私は男子の集団に近づき声を掛けた。

 

「何をしてるんですか」

 

「ふ、風紀委員長……いや、これは……」

 

 

 慌てた男子が隠そうとした物が下に落ちた。私はそれを見てパニックに陥りそうになる……

 

「は、破廉恥! 変態! 風紀が乱れてるわ!」

 

「だから余計な物だって言ったのに……」

 

 

 私が慌てている横で、津田君が冷静に「その本」を回収し、男子全員に鋭い視線を向けた。

 

「生徒会室に同行してもらうからな」

 

 

 あっさりと事態を収拾した津田君と違い、私はなにも出来なかった……風紀委員長なのに情けないわ……




萩村、ツッコミ放棄はダメだろ……

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