桜才学園での生活   作:猫林13世

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皆色々と繋がっている……


繋がっているのは

 五月も中ごろになり、最近は暖かな陽気が続いている。

 

「過ごしやすい季節になって来たな」

 

「そうだね~。お風呂上がりとかに庭に出ると気持ちいいよ~」

 

「ま、まさか裸……」

 

 

 この前靴下だけ履いて寝ていると言っていたので、七条先輩ならあり得そうで怖いわね……

 

「嫌だな~、ちゃんと服は着てるよ~」

 

「そうですか、よかった……」

 

 

 敷地内とはいえ、全裸で庭に出るなんて想像しただけでツッコミを入れたくなってしまうものね……最近タカトシにまかせっきりだったけど、やっぱり私はツッコミの部類なのだろう。

 

「アリア、シースルーもダメだぞ」

 

「えっ、ダメなの!?」

 

「その発想は無かった……」

 

 

 服は着ている、でも全裸と大して変わらなかったなんて……

 

「お待たせしました。見回りに……って、萩村はどうしたんですか?」

 

「何でも無いわ……見回りに行きましょう」

 

 

 職員室に用事があったタカトシが合流して、私たちは見回りに出る事にした。うん、なんにも無かったのよ……

 

「あのカップル、また手を繋いでいますけど、風紀的に良いんですかね?」

 

 

 共学になったので、付き合いだす人たちがいてもおかしくは無いのだが、この学園は校内恋愛を禁止している。共学になる前からこの校則がある事に関しては触れてはいけない事になっているので誰も触れないが……

 

「別にあれくらいなら問題ないだろう」

 

「寛容ですね」

 

「繋がってるのが下半身なら怒るがな。あっはっはっは」

 

「俺は今から怒るよ」

 

 

 高らかに笑いだした会長に、タカトシがゆっくりと近づいて行く。ああ、これは結構本気で怒ってる時のタカトシだ……

 

「皆さん、他人事のように言ってますが、津田副会長はかなり人気高いですよ」

 

「畑さん……貴女は本当に神出鬼没ですね」

 

「頭脳明晰、容姿端麗、文武両道に家事が得意で文才まであるんですから」

 

「人の話を聞いてませんね、貴女は……」

 

 

 畑さんの評価に、私と七条先輩は納得してしまった。確かにタカトシは学年トップの頭脳に運動神経、背も高いし家事も私たちの誰よりも慣れている。そうして考えると、タカトシって彼女がいない方が不思議なんじゃ……

 

「津田が人気なのは知っている。だが、我が校は恋愛禁止の校則があるから問題ない!」

 

「たった今、会長も健全な交際なら認めると発言してますよね? ほら」

 

 

 畑さんが懐からボイスレコーダーを取り出して会長の発言を再生した。

 

「つまり、津田副会長が誰かと『健全な』お付き合いをした場合でも、会長はそれを認めると言う事ですよね」

 

「いや、それは、その……それとこれとは話が違うだろ!」

 

「一緒ですよ。むしろ、何故違うと思うのかご説明願いたいところですね」

 

「いい加減大人しくしててください、貴女は。見回りの邪魔をするようでしたら、今月分のエッセイは書きませんよ」

 

「それは困りました……では、今日のところはこれで。時機を改めて会長の考えをインタビューしたいと思いますので」

 

 

 それだけ言って畑さんは何処かに消えてしまった。現れる時もだけど、消える時も私たちには視認出来ないスピードで移動するのよね……

 

「さてと、見回りを続けますか」

 

「津田」

 

「はい、何でしょうか」

 

 

 空気を変えようとしたタカトシに、会長が声を掛けた。

 

「お前は誰かと付き合うつもりがあるのか?」

 

「いきなりなんですか……」

 

「良いから!」

 

「……余裕が持てれば付き合いたいとは思いますけど、家の事とかで忙しいですからね。当分は無いと思いますよ」

 

「そうか! なら問題ない! 見回りを続けるぞ」

 

「……会長、何がしたかったんだろう」

 

「さぁね。頭脳明晰のアンタなら分かるでしょ」

 

「……何で気にするんだか」

 

 

 会長の気持ちを知らないのか、タカトシはしきりに首を傾げていた。でもまぁ、誰とも付き合うつもりが無いって分かったから、当分は私も安心出来るわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トッキーがさっきからウロウロしているので何処に行くのかと尋ねたら、食堂を目指してたんだけど道に迷ったと言ってきた。

 

「相変わらずトッキーはドジっ子だな~」

 

「ウルセェ!」

 

「仕方ないから私について来なさい!」

 

 

 ドジっ子トッキーを食堂に連れて行くべく、私はずんずんと廊下を進んでいく。これってトッキーを従えているように見えるのかな。

 

「おい、何で生徒会室何だよ。私は食堂に行くって言っただろ」

 

「うん、だから連れて来たんだよ」

 

「何を言って……」

 

「タカ兄、食堂の場所教えてー」

 

「お前は阿呆の子だ!」

 

「……君らの気が合う理由、分かったような気がする」

 

 

 タカ兄は目を通していた書類を棚にしまい、廊下に出てきてくれた。

 

「何で生徒会室の場所は分かって食堂の場所が分からないんだ、お前は……」

 

「だって私はお弁当だし。タカ兄の愛情がタップリ詰まったお弁当を教室で食べてるから、食堂の場所って知らないんだよね~」

 

「飲み物とか買う時はどうするんだ? 食堂の自販機が近い時だってあるだろ」

 

「水筒持って来てるから大丈夫! お小遣いをやりくりする為にはそれくらいしなきゃ!」

 

「普通に無駄遣いしないって考えは起こらないのか……」

 

 

 タカ兄に案内してもらい、私たちは無事に食堂に到着した。

 

「それじゃあ、俺は戻るからな」

 

「うむ、ご苦労だった」

 

「……ホント、すみません」

 

 

 トッキーが深々と頭を下げたのを見て、タカ兄は気にしなくて良いって感じでトッキーの頭を撫でた。我が兄ながら、女子の扱いに長けているなんて……さすがは学園の種馬と揶揄されるだけは……ん?

 

「タカ兄、揶揄ってどういう意味?」

 

「……帰って辞書を引け。てか、何で揶揄なんて言葉が出てきたんだ?」

 

「だって畑先輩が『津田副会長は学園の種馬と揶揄されるくらいですから』って言ってたから」

 

「なるほど……コトミ、今日の晩飯はこれで何とかしろ」

 

 

 タカ兄は二千円を私に渡してから何処かに行ってしまった。せっかくタカ兄のご飯が食べられると思ってたのに……まぁお金もらえたから良いや。




手だったり思考だったり縁だったり……

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