桜才学園での生活   作:猫林13世

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これが一位なのー!?


メイドの講習会

 行事もマンネリ化を起こし始めているので、何か良い案でも無いかと生徒会会議にかけたものの、やはりあまりいい案は浮かばないようだな……

 

「会長」

 

「なんだ、津田? 何か良い案でも浮かんだのか?」

 

 

 こういった時に津田はかなり頼りになる。私たちでは考えつかないような角度から切りこんできたりするから、津田の意見は無視する事は出来ないんだよな。

 

「全校生徒に関わる事ですし、学食の新メニュー同様に目安箱を活用してはどうでしょう?」

 

「そうだな! 我々だけで決めた行事が、本当に全校生徒が楽しめるかなんて分からないものな! さすがは津田だ」

 

「じゃあ早速準備しなきゃね~」

 

 

 そう言ってアリアが張り紙を作成し始める。一度勢いがつけばあっという間に物事を決める事が出来るのだ、我々は。

 

「関心のある職業を聞いて、その道の人に話を聞く事にしよう!」

 

「それでいいんですか?」

 

「将来の役に立つだろうし、あんまり学業と関係無かったら意味無いからな」

 

「学校行事を決めるのだから、形なりとも学業に絡め無きゃダメという事ね。それなら目安箱じゃ無くアンケートでも良いのではないでしょうか?」

 

「では、明日の朝までにアンケート用紙を作成し、各担任の先生に配ってもらおう」

 

 

 アンケート用紙は津田とアリアが即座に完成させ、萩村と私で在校生分をコピーし先生方に協力を仰いだ。そして集計結果は――

 

「メイドの出島です」

 

「これが一位なの……」

 

 

――家政婦・メイドが選ばれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全校生徒の意見を無視する訳にもいかず、七条家メイドの出島さんを招いての講習会が開かれる事になった。意外な事に掃除についての知識は豊富で、私でも知らない事がいくつかあった。だけど、参加兼監視のタカトシは、いずれも知っている様な風だった。

 

「あんた、何で参加してるのよ?」

 

「コトミ、畑さん、出島さんの監視」

 

「ご苦労様です……」

 

 

 精神的疲労が蓄積しているだろうタカトシを労い、出島さんの話に再び耳を傾ける。

 

「掃除の際の注意事項ですが、意外と腰を痛めやすいので注意です。特に重い物を運ぶ時。腕の力だけで持ち上げようとすると腰への負担が非常に大きいので、しっかりと踏ん張って持ちましょう」

 

 

 まぁ私は重たいものを持ち上げる場面なんて無いけどね……殆どタカトシが代わりに持ってくれるし、タカトシがいなくても誰かしらが持ってくれるだろうしね……

 

「ですから、この時の浣腸プレイは厳禁です。出ちゃうから!」

 

「……今の部分は聞かなかった事にしてください。そして貴女は何を言い出すんでしょうね?」

 

「はっ!? し、失礼いたしました、タカトシ様」

 

「………」

 

 

 タカトシに叱られそうになり、恍惚の笑みを浮かべた出島さんに、タカトシは侮蔑の眼差しを向けた。

 

「では、次は調理室で料理講座を開きます。参加はご自由に」

 

「お嬢様、不肖出島サヤカ、お嬢様以外で欲情してしまいました」

 

「相手はタカトシ君だし、仕方ないよ~」

 

「お嬢様~!」

 

 

 謎の主従を放置して、私たちは調理室を目指したのだけど、肝心の出島さんを置いておくわけにはいかないのでタカトシが無理矢理現実に復帰させたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ兄に言われてメイドの心得や家事の作法などを習う為に参加したけど、私には難しいな……

 

「天草さん、味見をお願い出来ますでしょうか?」

 

「私ですか。では……」

 

 

 目の前で美味しそうな匂いをさせているものを会長が飲んでいる……羨ましいけど、ここで何か言えばタカ兄に怒られるだろうしな……

 

「どうですか?」

 

「うん……なんか欲情してきました」

 

「でしょー?」

 

「なんか入れましたね?」

 

 

 欲情しているシノ会長をスルーして、タカ兄は出島さんに滲みよった。あの目、結構本気で怒ってる時の目だな~

 

「で、では! 皆さんも調理を開始してください」

 

「……怪我には注意してくださいね」

 

 

 タカ兄の言葉に、参加している女子の殆どが腰をくねらせた。多分だけど、タカ兄に心配してもらって興奮したんだろうな~……私も興奮したし。

 

「やっぱりタカトシ君は手慣れてるね、コトミちゃん」

 

「自慢の兄ですからね~……って、うわぁ!?」

 

 

 アリア先輩とおしゃべりしていたら、私のフライパンが火を上げた。こんな事ばっかだから、タカ兄からキッチンに入るなとか言われるんだよね……

 

「落ち着いて。メイドを目指すのでしたら何事にも動じてはいけませんよ。平常心を保つ事が大切です」

 

「あっ、それ私得意です」

 

 

 あれ、この人確か……ロボ研の轟先輩だ……アリア先輩と同類で、タカ兄が頭を悩ませてる内の一人だっけ?

 

「実は私……三回絶頂をむかえてるんですが誰にもバレてません」

 

「素質ありますね~」

 

「……真面目にやれよな」

 

 

 既に料理を完成させたタカ兄が、出島さんと轟先輩にツッコミを入れる。てか、タカ兄の料理の周りに人が集まってるんだけど……

 

「コトミ、少しは落ち着いて作業しろよな。普段からやってる人なら良いが、慣れて無い人間が別の事をしながら火を扱うなんて危ないだろ」

 

「ゴメン、タカ兄……でもこの展開は、ドジっ子キャラを確立させるチャンス!」

 

「正解です!」

 

「不正解だよ!」

 

 

 出島さんとサムズアップしてたらタカ兄に怒られた。まぁ仕方ないよね……家事に関してタカ兄はこの場にいる誰よりも真摯に向き合ってるんだし。

 

「では、今日の講習はこれまでです。バイ」

 

 

 出島さんの講習が終わり、挨拶をして片手を上げる。

 

「バイ」

 

「バイ」

 

「バーイ」

 

「バイ?」

 

 

 一人意味が分からず言っているようだけども、このバイにはある意味が隠されているのを、私は確信している。タカ兄とスズ先輩、それとカエデ先輩は首を傾げているけど、さすがに会長とアリア先輩、畑先輩に轟先輩と歴戦の勇者たちは理解しているようだった。私もあの人たちみたくなりたいものだ……

 

「馬鹿な事考えてないで、後始末はちゃんとしておくんだぞ」

 

「はい……」

 

 

 現実逃避していたのがバレて、タカ兄に怒られてしまった……でも、あの優しい目は私を心配してる時の目だし、私にしか向けられない目なんだもんね。頑張らなきゃ!




メイドより立派なタカトシでした……

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