桜才学園での生活   作:猫林13世

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普通にしてればトップでしょうがね……


クラス平均トップを目指し

 来週からの試験、どうやらクラス平均を発表するようになったらしい。

 

「と、言うわけで我々2―Bはクラス平均トップを目指すわよ!」

 

「でもさースズちゃん。スズちゃんにタカトシ君にネネがいるんだから、間違いなくトップだと思うよ?」

 

「ムツミにチリ、それに柳本と不安材料が多すぎるのよ」

 

「いやー、面目ない」

 

 

 スズがやけに張り切ってるのが気になるが、どうせ目指すならクラストップの方が良いだろう。

 

「それにしても、良く会長たちが生徒会室を貸してくれたね」

 

「うん……」

 

 

 何かを思い出しているのか、スズの表情が微妙な感じになる。

 

「どうしたの?」

 

「いや、何でも無いわ……」

 

 

 確実に余計な事を言われたのだろう。スズはその記憶を無かった事にするらしい。

 

「それじゃあまずは、一時間ね。分からない所は飛ばして出来るところから埋める事! 特にムツミと柳本」

 

「はーい! 頑張ってみまーす」

 

「補習じゃなければいいよ、俺は……」

 

 

 やる前から撃沈している柳本に、スズの蹴りが入った。それでやる気が出たのか、柳本は答案に向かって真剣な眼差しを向けた。でも、何で蹴られてやる気が出るんだろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 普段から勉強してない私は、答案に向かってすぐ眠気に襲われた。

 

「こらぁ! 寝るんじゃない!」

 

「ふぁ!? ……部活したい」

 

「テストが終われば出来るでしょ! それに、勉強しなかったら補習になって部活出来ないかもしれないのよ?」

 

「よし、チリ! 頑張って補習を回避するわよ」

 

「相変わらずの部活バカ……」

 

 

 気合いを入れたものの、どうしても眠気が襲ってきてしまう。何か対策は無いのかな……

 

「スズちゃん、眠くならない方法って無いかな?」

 

「じゃあ空気椅子でもしてれば」

 

 

 そうか! 空気椅子なら寝る事が出来ないし、身体を鍛えられて一石二鳥だね!

 

「じゃあチリも一緒に!」

 

「えっ!?」

 

 

 私と同じように部活が出来なくて体力が余ってるに違いないチリと一緒に、私は空気椅子を始める。これは確かに眠くならないね。

 

「……でも、問題も解けないよ」

 

「……まさか本当にやるとは思って無かったわ」

 

 

 向かい側の席では、柳本君が必死に問題を解こうとしているけど、どうも進みは遅いらしい。その隣ではタカトシ君がスラスラと問題を解いているのに……

 

「もしかして、タカトシ君の問題だけ簡単なのかな?」

 

「全部同じに決まってるでしょ。てか、タカトシの問題だけ若干難易度を上げてるわよ」

 

「そうなんだー……って、タカトシ君だけ難しいの!?」

 

 

 それでも私たちより早く解いているタカトシ君は、やっぱり頭が良いんだろうな……羨ましいなー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会室で勉強会を開いているのは聞いているが、どうしても生徒会室に行かなければいけない用事が出来たので、私とアリアは後輩たちが勉強会を開いている生徒会室を訪れた。

 

「会長、何かあったんですか?」

 

「ちょっとな」

 

「椅子をどうぞ」

 

 

 既に全問解き終わったのか、萩村とタカトシが私たちに椅子を勧めてきた。

 

「大丈夫だよ~、私が椅子になるから」

 

「斬新な解決法ですねー……」

 

「スズ、ツッコミ諦めないで……」

 

 

 桜才きってのツッコミコンビの片割れである萩村がツッコミを放置する。それに反応したタカトシが萩村にツッコミを入れた。

 

「私には対処しきれないわよ……」

 

「それでも、放置だけはしないであげなよ……」

 

「別にタカトシ君が私に座っても良いんだよー?」

 

「全力で遠慮させていただきます」

 

 

 普通の男子ならアリアの提案に二つ返事で飛びつくのだろうが、相変わらずタカトシはアリアの魅力的な提案もきっちりと断る。さすが影でホモを疑われているだけの事はあるな……

 

「? なんだ、津田」

 

「その噂、誰が広めてるんですか?」

 

「噂……あぁ、私は畑から聞いた」

 

「なるほど……スズ、少し畑さんに用事が出来たから抜けるね」

 

「……頑張ってね」

 

 

 何かを感じ取った萩村は、タカトシを止める事無く見送った。あぁ、私はまた余計な事を言ってしまったのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勉強会の成果があったのか、テスト終了後の三葉と柳本の表情は明るかった。

 

「出来たのか?」

 

「平均点は無理だけど、それに近い点数は取れたと思うよ」

 

「俺は補習にはならない程度に出来たと思うぞ」

 

「……もう少し上を目指そうぜ」

 

 

 普段赤点スレスレ、もしくは赤点の二人からすれば十分高い目標だったのだろうけども、それでもまだまだ低いと思う。

 

「タカトシ、ちょっと自己採点に付き合ってくれない」

 

「別にいいけど、珍しいね。何処か不安な箇所でもあるの?」

 

「英語でね。問題がおかしかった様な気がするのよ」

 

「あぁ、あそこね……職員室にいって横島先生に確認してこようか」

 

 

 俺も気になってた箇所が、スズも気になっているらしい。という事は、問題に不備があった可能性が高いのだ。俺とスズは試験終了直後なのにだらけている横島先生に、あの問題について聞く事にした。

 

「あそこはだいたい合ってればOKにするわ。良い問題が出来なくてな。いやー、面目ない」

 

「なら良いですけど……ちゃんと問題を作ってくださいよ」

 

 

 やる気が無かったわけではなさそうだが、横島先生は相変わらずいい加減だった。

 そして試験結果が発表される日――

 

「無事2―Bは学年トップね」

 

「トップ3が在籍してるんだし、順当と言えば順当かもしれないけどね」

 

 

 個人成績は、俺と萩村が全問正解で同率一位で、三位に轟さんが四十点差の結果だ。普通ならこれで平均ぶっちぎりのはずなのに、何故か平均では二位とさほど変わらないのだった……

 

「そう言えば、何でスズは気合いが入ってたの?」

 

「……平均身長下げてるから」

 

「あっ……」

 

 

 なんか聞いたらマズイ事だったようだ……俺はそっとスズから視線を逸らし、一年の結果に目をやった。

 

「八月一日さんが十五位か……ん?」

 

 

 その横に貼り出された紙に書かれている名前に、俺は膝から崩れ落ちたくなった。そこには――

 

『赤点補習  津田コトミ、時』

 

 

――と書かれているではないか。あいつ、また遊んでたな……




プラス要素とマイナス要素が相殺してしまう……

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