桜才学園での生活   作:猫林13世

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原作五巻目に突入しました。


暑い日には…

 生徒会室で作業していたら、首筋に冷たい物を当てられた。

 

「うひゃ!?」

 

「差し入れだ」

 

「驚かさないでくださいよ」

 

 

 首筋に感じたものは、会長が差し入れでもって来てくれた缶ジュースだった。

 

「普通に渡してくださいよ」

 

「普通じゃつまらないだろ?」

 

 

 そう言って会長はもう一つの缶ジュースを七条先輩に手渡――

 

「ひゃぁ!」

 

「差し入れだ」

 

 

――さなかった。

 七条先輩の胸の辺りに缶ジュースを当て、そして満足そうに手渡した。

 

「あの、透けてるんですけど……」

 

 

 今この部屋にタカトシがいなくて良かったと思った。だってもし七条先輩のポッチを見たら、さすがのタカトシでも何かしらの反応を示すだろうから。

 

「アリア、今日もブラしてないのか」

 

「近頃暑いからね~」

 

「だが、こうも透けてしまうと男子生徒たちの目の毒だぞ! ただでさえ大きいんだから」

 

 

 そもそも会長が缶ジュースを当てなければ透ける事も無かったのではないか、というツッコミは私の心の中だけで済ませた。

 

「暑い日は水分補給をしっかりしなきゃね~」

 

「熱中症対策としては、塩分補給もしなければいけません」

 

 

 水分だけではダメなのだ。だからと言って過剰に塩分摂取をしても身体に悪い。しっかりと注意しなければこの時期は体調を崩しやすいのだ。

 

「でも、夏場はおしっこ出にくいよ?」

 

「老廃物飲むな」

 

「汗を舐めれば良いんじゃないか?」

 

「老廃物舐めるな」

 

 

 どうしてこういった考えしか出て来ないのだろうか、この生徒会は……

 

「よーす、生徒会役員共」

 

「遅れました」

 

 

 横島先生の手伝いで遅れていたタカトシが合流して、これで漸く私の心休まる時間が始まる。だってツッコミに頭を悩ませなくて良いのだから……

 

「しっかし暑いわね~。こんな日は全裸で過ごしたいわ」

 

 

 生徒会室に来るなりこの発言……本当に教師なのだろうか、この人は……

 

「横島先生って、黙ってれば美人なのにね」

 

「まぁ本性を知ってるから何とも言えないけど、知らない人が見ればそうなのかもね」

 

 

 タカトシに小声で話しかけると、タカトシはそれに合わせるようにしゃがんで小声で返してくれた。

 

「聞こえてるぞ」

 

「はぁ……」

 

 

 別に悪い事を話していたわけでは無いので、タカトシは特にリアクションを取らなかった。

 

「確かに、咥えてる時は良い表情してると自負しているのだが」

 

「黙っててもダメな人だな、この人は……」

 

 

 タカトシがそう纏めてくれたおかげで、私は横島先生にツッコミを入れる事無くスルーする事が出来た。本当にタカトシのお陰で私の安寧は保たれているのね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バイト終わりにカナさんとサクラさんと一緒に近くのカフェに寄る事になった。最近はお決まりとなって来たこの集まりだが、別に毎回約束を取り付けているわけではないのだ。

 

「タカ君も最近忙しそうだね」

 

「えぇまぁ……妹が補習になったりしてましたから」

 

「コトミさんがですか? タカトシさんが勉強を教えてあげてたのでは?」

 

「クラスメイトで手いっぱいでした。それでも赤点にならないように問題集を作っておいたのですが……」

 

「コトミちゃんの事です。他の事に感けてやらなかったのではないですか?」

 

 

 コトミ、カナさんにもバレてるぞ……

 

「それで、コトミちゃんは無事に合格出来たのですか?」

 

「期末テストで平均以上取れなければ夏休みの半分は補習だそうです」

 

「そうですか。コトミちゃんは将来有望なので、夏休みは私やシノッチで鍛えるつもりだったのですが」

 

「一応聞きますが、何が有望なんです?」

 

「もちろん、私たちの跡を継ぐ貴重な下ネタキャラとして……」

 

 

 やっぱりか……だがコトミとカナさんたちとの決定的な違いは、勉強が出来ない事だな……

 

「ところで、桜才学園では何か企画は無いんですか?」

 

「企画ですか? そうですね……そろそろ修学旅行がありますね」

 

「それは英稜も同じです。何処に行くんですか?」

 

「沖縄です。去年までは京都奈良だったはずなんですけどね」

 

 

 何やらとある生徒が色々とやらかした所為で沖縄に行き先が変わったとか言う噂も流れているが、おそらく畑さんだろうな。

 

「英稜も沖縄です。ちなみに時期は」

 

「えっと……この日から三日ですね」

 

「同じです! もしかしたら沖縄で会えるかもしれませんね」

 

 

 サクラさんは同学年だし、確かに会えるかもしれない。サクラさんなら会っても疲労感は覚えないし、それに……

 

「タカ君? どうかしましたか?」

 

「いえ、何でも無いです。あっ、サクラさんってもう泳げるんでしたっけ?」

 

「………」

 

「察しました」

 

 

 黙りこくったサクラさんの反応で、俺は答えを得た。

 

「タカ君、サクラっちの水着姿を男共に見せたら、その日のおかず間違い無しだよ」

 

「何を言い出すんですか!」

 

「カナさん、一応公共の場ですので、そういった発言は控えた方が良いですよ」

 

 

 一応周りに人がいない事を確認して言ってるのだろうが、一応カナさんも女子高生だし、あんまりそういった発言は聞かれたくないだろうしな。

 

「別に私は構いませんよ。シノッチと違って純情少女ではありませんので」

 

「……会長も純情では無いと思いますがね」

 

 

 桜才で純情と言えば誰だろう……三葉辺りかな? 五十嵐先輩は純情とはちょっと違う感じがするし……

 

「修学旅行の後には期末試験がありますし、完全に旅行気分ではいられないでしょうけどね」

 

「一応学校行事ですからね」

 

 

 その後は取りとめの無い雑談をし、この日は解散となった。カナさんとサクラさんを駅まで送り、俺は家で待つ問題児の相手をしなければならないという思いからため息を吐いたのだった。アイツ、ちゃんと勉強してるんだろうな……




変な考えばっかだな……

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