桜才学園での生活   作:猫林13世

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このセリフはやりたかった


修学旅行 首里城編

 沖縄に到着して、空港で注意事項の説明がある。高校生にもなって騒がしいのはどうかと思うけど、普段と違う空気だから仕方ないのかもしれないな。

 

「えー、今から注意事項について、横島先生から説明をしてもらう」

 

「(あの先生で大丈夫なのかしら?)」

 

「(あれでも教師だし、大丈夫じゃない?)」

 

 

 小声で話しかけてきたスズに、小声で返事をする。心配なのは分かるけど、あれでも教師であり生徒会顧問、大丈夫だと思いたい。

 

「えー、旅行って事で羽目を外したがるのは仕方ないけど、これが学校行事である事を忘れないように。特に――地元の男子を引っかけて(自主規制)するなんてもってのほかです!」

 

「横島先生、良く言えました」

 

「みんな、横島先生を見習うように」

 

「「「はーい」」」

 

 

 泣き崩れた横島先生を完全にスルーして、俺たちは空港から移動する事にした。

 

「ねぇねぇタカトシ君、(自主規制)って何?」

 

「三葉は知らなくて良い事だ」

 

「そうね、ムツミは知らなくて良い事よ」

 

 

 俺も良くは分からなかったけど、あの人の事だからろくでも無い事である事は確かだろう。てか、ナンパしてる時点でろくな事では無い事が分かる。

 

「おーい津田、早くバスに乗ろうぜ!」

 

「スズちゃーん! こっちこっち!」

 

 

 はしゃいでる柳本と轟さんを見て、俺は何となく面倒事が起こりそうな気がしていたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ兄の代理で生徒会の仕事をしたけど、朝から大変だったんだなーって改めて思い知らされた。

 

「コトミ、アンタ今日は随分と眠そうだね。授業中に寝るなんて津田先輩に知られたら怒られるんじゃない?」

 

「そのタカ兄の所為で眠いんだよ……生徒会があんなに忙しいなんて思わなかったよ」

 

 

 普段から会長やアリア先輩が遊んでるのを見てると、生徒会って思ってるほど忙しくないんだと勘違いしていたのだ。でも実際は目が回る程忙しく、あの仕事をこなしてなお遊んでられる二人を尊敬するくらいだ。

 

「そっか……二年生は修学旅行だっけ。あっ、ところでコトミは家事とかどうするの? お母さんたちいるの?」

 

「奇跡的に帰って来てるから大丈夫だよ。タカ兄がいないって分かってて帰って来たっぽいけどね」

 

 

 私に家事をやらせたら、タカ兄が帰ってくる前にキッチンがダメになると分かってたからだろうな。お母さんが無理をして家に帰って来たのは……

 

「お前、そんなところでも兄貴に迷惑かけてるのかよ」

 

「トッキー、この間タカ兄に頭撫でられてから雰囲気変わった? 何だか前よりタカ兄の味方みたいだけど」

 

「お前と比べれば兄貴に味方したくなるだろ……実際兄貴のお陰で補習を逃れた事だってあるんだ」

 

「確かに津田先輩がいなかったら二人とも補習だらけだったかもね」

 

「今回はタカ兄に教わって無いから赤点だったけどねー」

 

 

 自力のあるマキはともかく、私とトッキーはタカ兄に見捨てられたら補習どころか留年もあり得るのだ。それくらい私とトッキーの成績は酷い物なのだ。

 

「とにかく、お前も少しは兄貴に迷惑掛けるの止めたらどうだ? この間だって小遣い前借したんだろ」

 

「だってトッキーとマキに奢ってもらってばっかじゃね」

 

 

 タカ兄に素直に話して借りたんだから、トッキーに色々と言われる事は無いんだけどなー。やっぱりタカ兄に撫でてもらってから、トッキーのキャラが変わったような気がするよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 首里城を訪れた私たちは、工事中の天守閣を見てしみじみと思った。

 

「ウチの学校ってこういったタイミングで訪れるのかしら」

 

「去年は本能寺が工事中だったんだっけ?」

 

「それでおいたした生徒がいたって聞いたけど」

 

 

 本能寺マニアの生徒が、工事現場に殴りこみをしたと桜才新聞で見た気がするけど、本当にそんな人がいるのかしら?

 

「そういえば、大門先生と道下先生が随分と仲が良いような気がしない?」

 

「別にいいんじゃない? 仲が悪いよりかは仲が良い方が見ている方も落ち着けるし」

 

「それもそうね」

 

 

 先生たちも良い大人なんだから、別に仲が悪くても私たちに覚られる事は無いでしょうけども、タカトシは普通の高校生より観察眼が優れているからね。タカトシから見ても仲が良いのなら、本当に仲が良いんでしょう。

 

「? なんか視線を感じるような……」

 

「英稜の人たちじゃない? さっきから津田君の事を視○してるし」

 

「表現はともかく、英稜の人とは違う視線を感じる……向こうか」

 

 

 タカトシが感じる視線が気になり、私はネネたちと別れタカトシと行動する事に。べ、別に視線が怖いとかじゃないからね!

 

「ウェルカムめんそーれ!」

 

「畑さん? 何故三年生の貴女が沖縄に?」

 

「……新聞部に、二年生がいないから」

 

「はぁ……それで、学校側には許可を取って――無いんですね」

 

 

 道下先生が声を掛けてきたタイミングで、畑さんはシーサーの背後に隠れた。つまりは無断で着いてきたという事だ。

 

「自腹切ってまで何の用です?」

 

「大門先生と道下先生の関係を調べるのと、貴方のスクープを狙って……」

 

「あっ、大門先生だ」

 

 

 タカトシの言葉に畑さんが反応して再びシーサーの背後に隠れた。だが大門先生は側にいない。つまりタカトシが嘘を吐いたのだ。

 

「さっさと帰ってください。生徒会役員として、サボりを見逃す事は出来ませんので」

 

「じゃあ、貴方たちが協力してくれる? あの二人の関係を明るみに……」

 

「大人なんですから、俺たちがとやかく言うべきではないですね。はい、帰ってください」

 

 

 畑さんの相手をさっさと切り上げて、タカトシは男子生徒たちの集団に合流した。残された私も、畑さんの側を離れネネたちと合流する事にしたのだった。




部活動の延長で沖縄まで来るとは……

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