国際通りを散策していると、何だか見覚えのある携帯を拾った。これは確か……桜才生徒会の萩村さんの携帯?
「サクラ、どうかしたの?」
「いや、知り合いの携帯を拾ったから、近くにいるのかなって思って……」
辺りをきょろきょろと見回したが、萩村さんの姿は見つけられなかった。
「あっ、タカトシさんから着信だ……」
一緒に行動していてはぐれたのだろうか? そんな事を思いながら私はその電話に出た。
『もしもしスズ? 今何処にいるんだ?』
「えっと……タカトシさん、私です。サクラです」
『サクラさん? 萩村の携帯を拾ったんですか?』
すぐに状況を把握できるのはさすがだと思いますが、その勘の鋭さはちょっと怖いですよ……
「国際通りで拾いました。えっと……ムツミ通りって場所です」
『それなら近くですね。今からそっちに向かいますので、待っててもらえますか?』
「ええ、大丈夫ですよ」
友人たちに目線で確認すると、ニヤニヤしながらOKをくれた。別に皆が思ってるような間柄でも無いんだけどね……タカトシさんは競争率高いし……
『じゃあすぐにそっちに向かいますね。……ちょっと横島先生――』
そこで電話が切れた。横島先生が何をしようとしたのかが気になったけど、どうせすぐにタカトシさんと合流するんだし聞けるかなと思い気にしない事にした。
暫く待ってから、タカトシさんが走って現れたので手を振って合流する。
「すみません、ちょっと待たせましたよね?」
「いえ、横島先生が何かを仕出かしたんだろうって思ってましたし」
実際そのようだったようで、タカトシさんは苦笑いを浮かべながら頷いた。
「もし見つけられなかったら男子生徒を襲うとか言い出したので、気絶させて大門先生に預けてきました」
「ご苦労様です。ところで、萩村さんは迷子なんですか?」
「みたいですね。ちょっと目を逸らしたらはぐれてまして……」
何だか子供みたい、と思ったのは多分私だけでは無いはず。きっとタカトシさんも思ってるんだろうな。
「とりあえず、携帯が落ちていた場所に案内してください。そこからスズが行きそうな場所を探してみますので」
「手伝いますよ。私も心配ですし」
「じゃあ一緒に探しましょう。他の連中も探してますし、見つけ次第連絡してくれる手筈になってますので」
そう言って私とタカトシさんはまず、萩村さんの携帯を拾った場所へと移動する。そこに到着してすぐ、タカトシさんは一件のお土産屋さんを見つめていた。
「どうかしました?」
「いえ、あのお土産屋さん……攻めてるなと思いまして……」
「お土産屋さん? ……あぁ、攻めてますね」
そこにはちんこすうと書かれたポップが前面に押し出されている。誤字とかでは無く実際にそういうお土産があるようです。
「スズなら、誰かがあのポップに反応すると思うかもしれない。ちょっと覗いてみましょう」
「そうですね」
タカトシさんと二人でお土産屋さんを覗くと、見覚えのある金髪ツインテールの少女を発見した。
「スズ、探したよ」
「ゴメン、携帯も落として連絡出来なかったのよ」
「あっ、携帯なら私が拾いましたよ」
萩村さんに携帯を手渡して、私もタカトシさん同様安堵の息を吐いた。
「森さんにもご迷惑おかけしました」
「いえ、私は携帯を拾っただけですから」
私はタカトシさんたちと別れ、友達と合流する為に自分の携帯を取りだした。もう少し一緒にいたかったけど、学校行事中ですからね……生徒会役員が率先してはぐれるのは良くないものですし……
朝から服装検査、書類整理、風紀向上会議と忙しい生徒会の仕事をこなして、私は今会長たちと一緒に帰路についている。
「普段からこんなに忙しいなんて、生徒会役員ってMじゃなきゃ出来ない仕事なんですね」
「いや、普段はこんなに忙しくないぞ」
「そうだね~」
なんだって!? じゃあタカ兄に要求する報酬を上方修正しなければ……
「タカトシとスズが優秀だからな。一人頭の仕事量は多くてもすぐに片付くからな」
「そうだね~」
「……すみません、足を引っ張ってばっかりで……」
忙しかった原因はどうやら私だったようだ。つまりは私が仕事が捌けないのが原因で忙しくなっているらしい……報酬の上方修正はしない方がよさそうだ。
「あの二人がいるおかげで仕事が捗るからな!」
「そうだね~。ボケ倒して脱線しないからね~」
「なるほど、ツッコミ不在だったから仕事が捗らなかったんですね!」
「「「………」」」
「誰かツッコまないと話が進まないぞ」
「でも、シノちゃんもコトミちゃんも私も、普段からツッコミ慣れてないから……お尻には突っ込んでるけど」
「お尻って気持ちいいんですか?」
「「「………」」」
またしてもツッコミ不在の所為で話が脱線してしまった……やっぱりタカ兄とスズ先輩の存在は、生徒会にとって必須なんだな~。
「そういえばコトミ、今度の試験で平均点取らなかったら補習というのは本当か?」
「誰から聞いたんですか!?」
「風の噂でな。トッキーと一緒に補習になりそうなんだろ? 今から勉強見てやるぞ」
「そんな事言って、シノ会長の目的はタカ兄の部屋でトレジャーハンティングなんじゃないですかー?」
「そんな事無いぞ? まぁ、興味が無いと言えば嘘になるが、純粋にコトミの夏休みを心配してやってるんだ、私は」
「じゃあ私もコトミちゃんのお勉強を見てあげるよ~。シノちゃんだけじゃ脱線するだろうしね~」
おそらくだけど、アリア先輩が来ても脱線すると思う……だけど私の反論は二人に届く事は無く、そのまま二人を引き連れたまま帰宅し、晩御飯までみっちり勉強する破目になってしまったのだった……
ちなみに、先輩二人を家に連れてきても、お母さんもお父さんも驚く事は無かった。私が冗談で「タカ兄のセフレ」だと紹介しても、「はいはい」とあっさり流してしまうほどに……どれだけタカ兄の信頼が高く、私が低いのかが良く分かったやり取りだった……
さすがっす、萩村さんマジパネッす……