桜才学園での生活   作:猫林13世

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真面目に勉強してる……のか?


津田家での勉強会 その2

 今回の勉強会では、意外な事にコトミが必死になって勉強している。さすがに夏休み半減、お小遣い無し、放課後の塾の三つの脅し効いているようだった。

 

「シノ会長、ここってどう解くんですか?」

 

「あぁ、そこはだな――」

 

 

 会長に質問しながらタカトシがやるように言っていた個所を一つ一つ解いていっている。これなら今回のテストは、多少なりともマシな結果になりそうね。

 

「そう言えばムツミやチリは大丈夫なのかしら?」

 

「その二人なら轟さんと一緒に勉強するって言ってたよ、はいお茶」

 

「そうなんだ、ありがとう」

 

 

 タカトシに淹れてもらったお茶を啜りながら、私は時さんの間違いを発見して指摘した。この子も基本的には頭が悪いわけではなさそうだけど、どうしてもドジっ子なのか細かなミスをしている。これさえなければコトミより良い点が取れると思うんだけどな……

 

「ねぇタカトシ君。私たちが泊まる部屋を決めるくじを作ってくれないかな? シノちゃんが用意してたヤツだと不正が行われるから」

 

「八人分で良いんですよね? 俺とコトミは自分の部屋で寝ますし」

 

「何言ってるのタカ兄! 私もタカ兄と一緒の部屋が良い!」

 

「そう言うわけだから、くじは九人分だな! 使える部屋は幾つだ?」

 

「コトミの部屋とここを片づけて、それから両親の部屋に二人ですかね」

 

 

 わざと惚けてるのだろう。タカトシの部屋が選択肢の中に無かった。誰もツッコミを入れなかったらそのまま惚けるつもりだったのだろうけども、生憎誰も見逃す事はしなかった。

 

「では内訳は、コトミの部屋に三人、リビングに三人、津田両親の部屋に二人、タカトシの部屋に一人だな」

 

「今回は当たりが一個しかないのね」

 

「ご両親の部屋が解放されましたからね。その分タカ君の部屋に泊まれる人数が減りました」

 

「じゃあそういう事で。タカ兄、くじの作成とお母さんたちの部屋の掃除をお願いね」

 

 

 さすがにタカトシも反論せずにリビングからご両親の部屋の掃除に向かった。それにしても一人か……カエデ先輩やサクラさんはくじ運良いからな……この二人以外ならまだそれ程リードされて……

 

「(って、何を考えてるのよ私は……)」

 

 

 自分の考えにツッコミを入れて、私は時さんに指摘する事に集中する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕食を済ませた我々は、いよいよ運命のくじ引きを行う事にした。今回泊まる日数は二日、月曜日は津田家から学園に向かう事にした為、二泊三日の予定になっている。ちなみに、荷物などは生徒会室で保管し、月曜日の放課後に自宅に持って帰る段取りになっているのだ。

 

「俺は洗い物をしているので、勝手に決めちゃってください」

 

 

 そう言い残してタカトシはキッチンへ姿を消した。誰と同じ部屋になるのか興味が無いというのだろうか……年頃の男子としてそれは正常なのかと疑いたくなるが、アイツはそういうヤツだと思いなおしてくじに向き合った。

 

「誰から引く~?」

 

「ここは公平にじゃんけんで決めようじゃないか!」

 

「なぁマキ、何でこいつらはこんなに張りきってるんだ?」

 

「多分、津田先輩と同じ部屋になりたいんじゃないかな?」

 

 

 後輩二人は、それ程タカトシと同じ部屋になりたいとは思って無いらしい。八月一日は純情だからな、タカトシと同じ部屋になったら失神してしまうかもしれないと思っているのだろう。

 じゃんけんの結果、私は三番目に引く事になり、トップバッターはカナだ。アイツも中々くじ運が良いからな……一発目で当たりを引くなんて事もあり得るかもしれん……

 

「全員引いたな? じゃあ開くぞ」

 

 

 全員が引いたのを確認して、それぞれのくじを開いて行く。えっと……私は……

 

「両親の部屋か……」

 

「天草先輩と一緒ですか、よろしくお願いします」

 

 

 同室になったのは八月一日か……ボケてもツッコんでくれなさそうな相手だな……

 

「私、コトミちゃんの部屋~」

 

「私もです」

 

「タカ君の部屋が良かったな~」

 

 

 コトミの部屋に泊まるのは、アリア、スズ、カナの三人。またしてもスズはツッコミが大変そうな組み合わせだな……

 

「私はリビングだ」

 

「私もー! トッキー、朝まで喋り倒そう!」

 

 

 時とコトミがリビングか……となると、残ってるのはサクラと五十嵐の二人……争奪戦の一番手と二番手じゃないか……

 

「えっと……私のくじ、白紙なんですけど?」

 

「なにっ!? 貸してみろ!」

 

 

 五十嵐のくじを全員で確認すると、確かに白紙だった。ちなみにサクラのくじにはリビングと書かれている。

 

「つまり、これが当たりくじだと言うのか?」

 

「何か問題でもありました?」

 

「タカトシ君、このくじ白紙だったんだけど?」

 

「なんて書けばいいのか分からなかったので、俺の部屋に泊まる人のくじは白紙にしました。だからそれを引いた人は残念ながら俺の部屋で寝てもらいます」

 

 

 何故タカトシは残念だと思ってるのだろうか……誰しもそのくじを引きたくてしょうがなかったというのに……

 

「それで、白紙は誰が引いたんですか?」

 

「わ、私です……」

 

「カエデさんですか、なら安心ですね」

 

 

 何が安心なのか分からないが、初日の部屋割が決まってしまった。私は津田両親ルームで寝る事になり、相方は八月一日だ……

 

「大人しく勉強しよう」

 

「あっ、天草先輩。ここ教えてもらえますか?」

 

「ん? 君は学年でも上位なんじゃないのか?」

 

「津田先輩に教わって漸くですよ、私は」

 

 

 なるほど、コイツもタカトシの教え子で、争奪戦に参加しているライバルなんだな……でもまぁ、後輩に頼られたんだからしっかりと教えないと、後でタカトシに怒られるからな……一応教えておこう。




二、三歩遅れてるカエデがどう動くか……

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