桜才学園での生活   作:猫林13世

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カエデも考えているんだな……


津田家での勉強会 その3

 タカトシ君と同じ部屋で寝る事になってしまい、私はドキドキが止まらなくなっていた。タカトシ君は他の男子と違って寝込みを襲ってくるとか、そういった心配は無いけども、私の気持ちを何となく理解してるだろうし、キスまでしちゃってるんだから何も無いのも寂しい気がしているのよね……

 

「いったいどうすれば……」

 

「何がですか?」

 

「うひゃぁ!? ……おどかさないでください」

 

「……ここ、俺の部屋なんですけど」

 

 

 急に背後から声をかけられたので驚いてしまったが、確かにここはタカトシ君の部屋で、私の方がお邪魔しているのだ。ここにタカトシ君が入ってきても何も不思議は無いのだ。

 

「お風呂入れるようですので、カエデさんも入っちゃってください」

 

「タカトシ君はまた最後なんですか?」

 

「掃除もありますし、男の後に入るのは嫌ですよね?」

 

 

 タカトシ君は私が男性恐怖症である事を忘れてはいないようだった。最近はタカトシ君と普通にお話ししたりしてるので、忘れられてるかと思っていましたがさすがですね。

 

「タカトシ君の後なら……」

 

「はい?」

 

「な、何でも無いです! それじゃあ入らせてもらいますね」

 

 

 わ、私はなにを言うつもりだったのかしら……タカトシ君に変な女って思われたりしないわよね……

 

「あれ? カエデ先輩がお風呂ですか? てっきりタカ兄が入ると思ってたのに」

 

「掃除があるからって、先に入らせてくれたわ」

 

「タカ兄は真面目だなぁ……折角先輩たちのエキスが染み込んだお湯を満喫出来るのに……」

 

「タカトシ君はそんな人じゃないでしょ? それは妹のコトミさんが一番分かってるでしょうに」

 

「時々EDなんじゃないかって思いますけどね」

 

 

 コトミちゃんはそれだけ言い残してリビングへと戻って行った。お小遣いと自由時間が懸かってるらしく、今回の勉強会は気合いが入っているようね。

 

「タカトシ君も、男の子なんだよね……」

 

 

 可能性は低いとはいえ、彼も思春期の男の子。これだけの女子がいれば興奮してしまうかもしれない……そうなったらちゃんと落ち着かせる事が出来るのかしら?

 

「……バカな事考えて無いでお風呂入ろ」

 

 

 今まで散々泊まったりしてるんだし、今更タカトシ君が暴走するとも思えないので、私は自分の考えを否定してお風呂に入る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 問題を解いている時に、どうしても分からない問題が出てきてしまったので、私はタカトシさんの部屋を訪ねた。スズさんでも良かったんですが、カナ会長と七条さんがいるので落ち着いて勉強出来なさそうだと思ってしまったんですよね……

 

「タカトシさん、サクラです。ちょっと良いですか?」

 

『構いませんよ』

 

 

 中から返事があったので、私はタカトシさんの部屋にお邪魔した。どうやら五十嵐さんはお風呂のようで、部屋にはタカトシさん一人だった。

 

「何かありました?」

 

「ちょっと分からない個所があったので教えてもらおうと」

 

「真面目ですね。コトミに爪の垢でも煎じて飲ませたいですよ」

 

「あはは、コトミちゃんも今回は頑張ってるようですよ?」

 

「尻を叩かれなければやる気にならないのは問題ですけどね」

 

 

 苦笑いを浮かべながら、タカトシさんはこちらを向いた。

 

「それで、分からない問題とは?」

 

「はい、ここなんですが……」

 

 

 桜才と英稜で進み具合が違うのではないかと心配しましたが、タカトシさんとスズさんにその心配は無用だと理解させられましたしね……この二人は本当に頭が良いですし、努力を怠りませんからね……

 

「――と言うわけですが、分かりましたか?」

 

「はい、ありがとうございます。さすがタカトシさん、分かり易かったですよ」

 

 

 説明を聞いて、漸く理解出来た問題の残りを解き、あっているかどうかの確認をしてもらった。

 

「あってます。サクラさんは理解が早くて助かります」

 

「そんな事無いですけどね。タカトシさんの教え方が上手なんですよ」

 

「クラスメイトには理解させるのにてこずりましたけどね」

 

 

 学校でも苦労が絶えないのだろうか、凄く疲れてる顔をしている。あれ? タカトシさんの机の上に広げられてるのって、試験勉強の為のものじゃない?

 

「何してたんですか?」

 

「えっ? あぁ、これですか? 新聞部に頼まれたエッセイですよ。試験後に発行するからって頼まれまして」

 

「試験前に、ですか?」

 

「実に畑さんらしいです」

 

 

 少し読ませてもらえないか聞こうとしたタイミングで、ノックの音が聞こえてきた。

 

『タカトシ、少し良いか?』

 

「会長? どうぞ」

 

 

 どうやら訪ねてきたのは天草さんのようだ。でも、上級生の天草さんが何の用なんだろう……

 

「何故森がいる?」

 

「ちょっと分からない問題があったので、タカトシさんに教わってました」

 

「そうか……生徒会の話しなんだが、席を外してもらえるか?」

 

「分かりました。それじゃあタカトシさん、お休みなさい」

 

 

 エッセイが気になったけど、生徒会の話じゃ仕方ない。私だってカナ会長と話す時には他の人には席を外してもらうでしょうし、ましてや私は学校が違うのだから尚更席を外すべきなのだろう。

 

「あれ? サクラ先輩、タカ兄の部屋に行ってたんじゃ?」

 

「生徒会の話しがあるって、天草さんに言われちゃってね。それよりその問題、間違ってるわよ」

 

「えぇー! まだ違うんですかー!」

 

「考え方はあってるから、後は何処が間違ってるのかを理解出来れば大丈夫よ」

 

 

 私がタカトシさんに教えてもらってるので、代わりに私はコトミちゃんの勉強を見ている。これで恩返しになるのかは微妙だけど、少しでも手助けをしたいと思っているのは本当ですからね。




みんな何か狙ってる模様……

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