桜才学園での生活   作:猫林13世

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そろそろサブタイトル変えないとな……


津田家での勉強会 その4

 お風呂から出てきて部屋に戻ったら、何故か天草さんがタカトシ君の部屋にいた。

 

「何してるんですか?」

 

「生徒会の話をな。それじゃあタカトシ、例の件よろしくな」

 

「はぁ……」

 

 

 何だか納得してないような表情を浮かべながらも、タカトシ君は天草さんに了承を返した。

 

「なんの話だったんですか?」

 

「夏休みに企画を考えてくれとのことでした……まだプール開きとか行事が残ってるのに気が早いと思うんですがね」

 

「天草さんらしいわね。そうだ、お風呂開いたのでどうぞ」

 

「あれ? カエデさんが最後でしたっけ?」

 

「他の皆は既にお風呂済ませてるみたいでしたよ」

 

 

 そもそもじゃんけんに負けて最後になったのだから、私の後はタカトシさんしか残って無いはず。

 

「キリが良いところまでやったら入ります。カエデさんも勉強しますよね?」

 

「そうですね。試験勉強の為に来てるんですから」

 

 

 天草さん、七条さんの二人には勝てないけど、他の人には負けないように努力しなきゃいけないし。

 

「さてと、それじゃあこっちの机使ってください。俺はテーブルでいいので」

 

「えっ、タカトシ君の部屋なんだし、私がテーブルでいいわよ」

 

「終わったら風呂なんで、カエデさんの方が長く使いますよね」

 

「それは……」

 

 

 確かにそうかもしれない。タカトシ君がどの程度お風呂に入るかは知らないけど、お風呂に入ってる間も私は勉強するのだから、使う時間で言えば私の方が長い。でも、タカトシ君の部屋なのに、机を借りるのはずうずうしい気も……

 

「カエデさん? 何か悩み事でも?」

 

「い、いえ! 何でも無いわよ」

 

「そうですか。ではどうぞ」

 

 

 既に机の上のものを片付け終わったようで、タカトシ君は私に机を勧めてくれた。

 

「あ、ありがとう……」

 

 

 断るのも悪いと思い、結局机を使わせてもらった……ここで普段タカトシ君が勉強してると思うと、ちょっと緊張するわね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キリが良いところまで勉強を進めたので、今日はもう勉強しないでも怒られないだろうし、そろそろお風呂にでも入らなきゃな……

 

「あれ? タカ兄も今からお風呂?」

 

「ん? まだ入って無かったのか? カエデさんが最後だって言ってたからてっきり入ったものだと思ってたが」

 

「あのじゃんけんに参加してないからね。あれはお泊り組の順番決めで、この家の住人の私とタカ兄は含まれて無かったんだよ」

 

「そうなのか……じゃあ先に入っていいぞ。掃除とかお前に任せると余計に汚れるから」

 

「信用ないな~……あっ、一緒に入る?」

 

「入るか、このバカ者」

 

 

 頭を軽く小突いて、タカ兄はリビングへ向かって行った。多分部屋に戻るのも気まずいから、キッチンでお茶でも飲んで時間を潰すんだろうな。

 

「さてと、タカ兄も待ってるし早めに出なきゃ!」

 

 

 普段はのんびりお風呂に入る私だが、この時間にのんびり入ってるとタカ兄が出る頃には日付が変わってしまうかもしれないからね。それはさすがに怒られるし、下手すればそれだけでお小遣いが減らされてしまう恐れがあるのだ。

 

「お母さんたちは私よりタカ兄の事を信頼してるし……当然だけど」

 

 

 日頃の行いを見て、どちらを信頼するかなど、私が聞かれてもタカ兄と応えるだろう。それくらいタカ兄の生活態度は真面目であり立派だと思う。同じ血が流れてるはずなのに、何で私とこんなにも違うのかと本気で悩んだ事もあるくらいだ。

 

「性知識だけはタカ兄に勝ってると自負してるんだけどね」

 

 

 悲しい勝利宣言がお風呂場に響き渡り、私はさっさとこの空間から出る事にした。普段はツッコミがあるから気にしないけど、一人でいる時にこの勝利宣言は寂しいとしか思えなかったのだ……

 

「コトミ、早かったな」

 

「タカ兄を待たせるのも悪いし、お小遣いの為にもう少し勉強しようかと思って」

 

「殊勝な考えだな。それじゃあ、俺は風呂に入ってくる」

 

 

 タカ兄に勝てるなんて思わないけど、大差で負けないように頑張ろうと思ったなんて、タカ兄には分からないだろうな……出来る兄は羨ましい……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風呂掃除も終え、部屋に戻るとカエデさんが真剣な表情で辞典を眺めていた。開いて使ってるならまだしも、閉じたまま辞典を見つめて何をしてるんだ?

 

「どうかしましたか?」

 

「うひゃ!? ノックしてください!」

 

「……ですから、ここ俺の部屋なんですが」

 

 

 早朝で着替えてるならまだしも、風呂上がりで勉強してるだけなのだから、自室に入る時にノックする理由が俺には分からない。

 

「それで、辞書なんて見詰めてどうしたんです?」

 

「先ほど天草さんと七条さん、それと魚見さんがこの部屋に来てですね『思春期男子の電子辞書には性的な言語を調べた履歴があるに違いない!』といって辞書を開いていたんですけど……」

 

「なにしに来てるんだ、あいつらは……」

 

 

 しかも人が風呂に入ってる間になにしに来てるんだ……だいたい会長は電子辞書使えないんじゃ……

 

「それで辞書を眺めてたんですか?」

 

「なんか色々調べてたんですけど、何を調べてたのか気になりまして……」

 

「調べてた? ちょっとすみません」

 

 

 カエデさんから辞書を受け取り、俺は履歴を開く。すると案の定、履歴はおかしな言葉で埋まっていた。

 

「カエデさん、先に寝ててください。ちょっと説教して来ます」

 

「無理しないでくださいね。タカトシ君は人より動いてるんだから」

 

「慣れてるので問題ないですが、お気持ちはありがたいです」

 

 

 テーブルを片してカエデさんが使う布団を敷いて、俺はコトミの部屋にいるアリアさんとカナさん、そして両親の部屋にいる会長を呼び出して廊下に正座させた。寝てる人もいるだろうから、日付が変わる辺りには声量を抑えて説教した。

 十分反省したようなので部屋に返して、時計を見たら既に二時を過ぎていた事に驚いたが、さっきまで怒ってた所為か不思議と眠くなかったので、カエデさんを起こさないように注意しながら部屋に戻り、残ってたエッセイを終わらせたのだった。




次回、珍しく一人の視点だけで行く予定です

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