桜才学園での生活   作:猫林13世

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かなり危ない状況じゃないだろうか……


問題児二人の状況

 津田家に泊まる時、必ずと言っていいほど家事はタカトシ君が担当している。私たちもお手伝い程度はするんだけども、家主であり主夫でもあるタカトシ君の手際の良さには、如何に女子だろうと敵わないのよね。

 

「てな訳で、今日の昼食と夕食は私たちで作るから、タカトシはコトミとトッキーの勉強を見てやってくれ」

 

「それは構いませんが、何故急に?」

 

「ほら、さすがに十人分を一人で作るのは大変かな~って。タカトシ君だけ気の休まる時間が無いでしょ?」

 

「そんな事はありませんが……」

 

 

 タカトシ君は何となく不安げな表情を浮かべていたけど、それ以上にコトミちゃんとトッキーさんの成績が気になったのか、結局は私たちに任せてくれる事になった。

 

「では昼食は我々桜才生徒会メンバーが準備しよう。夕食は英稜の二人と五十嵐と八月一日の四人に任せる」

 

「タカ君を休ませる為にも、私たちで頑張りましょう!」

 

 

 妙に気合いが入ってるシノちゃんとカナさんに、カエデちゃんが疑いの目を向ける。そういえば、今日はカエデちゃんもお寝坊だったのよね……タカトシ君の隣でハッスルしちゃったのかしら?

 

「タカトシ君を休ませるのは賛成ですけど、何か企んでるように思えるのは気のせいですか?」

 

「き、気のせいだ! 別にタカトシの料理だけに指向性のある媚薬を入れようなんて考えて無いぞ」

 

「タカ君の料理に○液を入れようなんて企んでませんよ」

 

「……萩村さん、天草さんと七条さんの見張りはお願いします」

 

「とりあえず不審な動きをしたら脛を蹴っておきます」

 

 

 スズちゃんが蹴る仕草を見せると、カエデちゃんは一応納得したようにキッチンからリビングへと戻っていった。

 

「さて、それじゃあ何を作るかな」

 

「まだ決まって無かったんですね……」

 

 

 張り切ってるのは良いけど、食材とかちゃんとあるのかしら? タカトシ君は毎回買い出しに行ってたように思えるんだけどな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 問題が無かったとは言い切れないが、昼食も夕食も特に口にして何か起こる、ということもなく無事に終わった。問題はコトミとトッキーの成績だな……

 

「前日だってのに、何で試験範囲が分かってないんだよ……」

 

「スイマセン……」

 

「タカ兄が把握してるものだとばかり」

 

「……俺が受ける範囲じゃないんだが?」

 

 

 開き直ったコトミを睨みつけて、俺は八月一日さんから聞いた範囲から、去年出題された問題を記憶の中から呼び起こし、効率的に勉強出来るように問題集を作り終えたのがついさっき。今日が終わるまで後四時間弱、テスト前日に徹夜は避けたいので、せめて日付が変わるまでは勉強させたいんだよな……この二人が補習になって泣きつかれるのは俺も勘弁願いたいし……

 

「私たちも手伝おう。コトミとトッキーはリビングで決定として、他のメンバーはとりあえず部屋だけ決めておこうじゃないか」

 

 

 会長が取り出したくじを全員が引いた。今日は俺も参加するらしい。

 

「私がリビングか……責任持って二人を立派な女に育て上げてみせよう! ……あっ、立派な女と言っても――」

 

「そのボケは良いんで……」

 

 

 スズがさらっと流し、俺とサクラさんは萩村に目礼をする。ツッコミのが面倒だったのと、位置的にスズが会長に一番近かったのも俺とサクラさんがツッコミを入れなかった要因だ。

 

「私とサクラっちがタカ君の部屋ですね」

 

「何か不審な動きを見せたら、全力で止めますのでご安心を」

 

 

 英稜の二人が俺の部屋を使う事になったので、サクラさんが俺に力強く宣言した。確かに不審な動きしそうだしな……

 

「私とマキちゃんとカエデちゃんがコトミちゃんの部屋だね」

 

「じゃあ俺とスズが両親の部屋か」

 

 

 スズと一緒ならツッコミで疲れる事もないし、勉強出来なくて泣きつかれる事もないだろう。今日はゆっくり休めそうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トッキーと一緒にシノ会長にしごかれ続け数時間、漸くタカ兄が用意してくれた問題集を全て解き終えた。

 

「終わった―! さぁ寝ましょう!」

 

「なに言ってるんだ、コトミ。タカトシから理解度を確認する為のテストを預かってるので、これが終わって漸く終われるかどうか判断するんだぞ」

 

「えぇー!? テスト前日にテストなんてやりたくないですよ~!!」

 

「なら補習になって夏休みと同時に自由時間と小遣いを無くしたいんだな?」

 

 

 シノ会長にそう脅され、私はその場で飛び上がり正座をしてテストを受ける体勢を取った。

 

「ほら、トッキーも急いで! 早く解き終えないと今日が終わっちゃう!」

 

「……めんどくせぇ」

 

「トッキーだって補習は嫌でしょ! 折角タカ兄が作ってくれたんだから、とりあえずこれだけはやっちゃわないと! タカ兄の問題予想は当たるんだから」

 

 

 中学の時から、タカ兄が予想問題を作ってくれた時の成績は良かったのだ。それは私だけではなくタカ兄のクラスメイトも同じだったらしく、タカ兄が作ってくれなかった時の成績は軒並み酷かったという噂が全学年で流れたくらいだ。

 

「制限時間は本番同様五十分だ。準備は良いか?」

 

 

 シノ会長に確認された私たちは、無言で頷く。

 

「では、始め!」

 

 

 さっきまで問題集を解いていて、それが終わったと思ったらテスト……もしお小遣いと自由時間が懸かって無かったらここまで必死になって勉強しなかっただろうな……

 

「(方法はともかく、タカ兄は何時も私の事を心配してくれてるんだよね……)」

 

 

 脅したり殴ったりして勉強させられてると思ってたけど、実際は私の為に怒ってくれたり注意してくれてるだけなのだ。それは理解してたけど、どうしてもやる気にならなかったんだよね~……

 

「(出来の悪い妹だけど、タカ兄は最後まで見捨てずに面倒を見てくれてるんだ。今回はそれにちゃんと報いないとダメだよね)」

 

 

 今までだって、タカ兄がせき止めてくれてたから塾に行けともお小遣いカットとも言われなかったのだ。そのタカ兄が今回ダメなら、と言うからには本気なんだろうな……多分カットされたお小遣いは塾の月謝に使われ、成績が良くなるまでお小遣いはずっとカットされるんだろう。まぁ、成績が良くなっても塾には通い続けなければならないわけで、自由時間は減っちゃうけど、お小遣いだけは元に戻してもらえる……よね?

 

「そこまで! 採点するからちょっと待ってろ」

 

 

 最後の方は別の事を考えながら解いてたから、ちょっと自信ないけど、他は大丈夫なはず。

 

「……とりあえず、明日の朝は早起きして見直せ」

 

 

 シノ会長から返却された私とトッキーの答案は、約半分がバツだった……これじゃあ二人とも補習だね……




スズが初めてタカトシと同じ部屋に……

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