桜才学園での生活   作:猫林13世

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またの名をストーカー……


追跡隊

 タカ兄のおかげで補習を免れるどころか平均以上の点数を取ることが出来た。二日間の勉強会だけでは、私とトッキーの補習回避は不可能だと判断したタカ兄が、テスト期間中も私たちの相手をしてくれたからこの結果があるといえるだろう。

 

「まさか私にこんな点数を取るポテンシャルがあったなんて……」

 

「津田先輩が必死になって教えてくれたからでしょ……」

 

「確かに、兄貴がいなきゃ今頃補習確定だって沈んでただろうな」

 

「それじゃあトッキー、お礼としてタカ兄に処女を――」

 

「くだらない事言ってないで、少しは津田先輩の事を考えたら? そんな事本人に言ったら、せっかく補習を免れたのに塾に入れられちゃうよ」

 

 

 た、確かに……タカ兄に下ネタはあまり言わない方が良いと、最近になってようやくそんなことが分かってきたのだ。だって、反応薄いし、酷いと意味を聞いてきたりするもんね……

 

「他にお礼になりそうな物か……この胸でタカ兄を気持ちよくしてあげるしか――」

 

「いい加減にしないと津田先輩に言いつけるよ」

 

「冗談だよ……あれ? あそこにいるのってタカ兄とスズ先輩じゃない?」

 

 

 マキのジト目に耐えられなくなり視線を逸らした先に、仲良さそうに校門を出ていく二人の姿をとらえた。

 

「あの二人って帰る方向逆のはずじゃ……面白くなりそう。マキ、トッキー、追跡を開始する」

 

「勝手にやってろ……なぁ、ま――」

 

「何してるの! さっさと追跡するわよ!」

 

「お前もか……」

 

 

 トッキーがマキのやる気を見て天を仰いだ。マキだけは自分と同じ考えだと思ってたんだろうな……

 

「あれ? シノ会長にアリア先輩。それに畑先輩にムッツリ先輩まで」

 

「私はムッツリじゃありません!」

 

「まぁまぁ、カエデちゃん。それで、コトミちゃんもタカトシ君の追跡かしら?」

 

「ええまぁ。たまたま窓からタカ兄とスズ先輩が一緒にいるところを見たので」

 

 

 やっぱりタカ兄は人気者なんだなー、って思う。これだけの美人の先輩たちにストーキングされるんだから。

 

「何してるんですか! 見失っちゃいますよ!」

 

「一番やる気なのはマキか……」

 

 

 最近大人しくなったと思ってたけど、やっぱりマキはタカ兄が絡むと別人だ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 初めから同点狙いだったとはいえ、こうして二人っきりになると恥ずかしいわね……周りからは恋人同士に見えちゃったりしてるのかしら……

 

「コスプレ?」

 

「仲のいい兄妹なのね、きっと。お兄ちゃんと同じ服を着たいとか、そんな感じじゃない?」

 

「もしかしたらお兄ちゃんの趣味かもよ? ロリコンとか」

 

 

 ………

 

「誰がコスプレだ! 私はれっきとした高校生だ!」

 

「お、おい……いきなり大声を出すなんてどうした?」

 

「だって! あいつらが私の事をロりだのコスプレだのって!」

 

 

 私が指さした方をタカトシが見ると、さっきの女どもがペコペコ頭を下げて逃げ出していった。

 

「てか、いきなり騒ぐとかスズらしくないぞ。普段なら笑って流すとかするじゃんか」

 

「……今だけは耐えられなかったのよ」

 

「えっ? ごめん、もう少し大きな声で言ってくれないと聞こえない」

 

 

 あえて聞こえないようにつぶやいたので、このタカトシの反応は当然だろう。もちろん、聞かせるつもりはないけどね。

 

「さてと、気を取り直してどこかに行きましょう!」

 

「そうだな……背後の連中を撒く必要はありそうだ」

 

「背後?」

 

 

 タカトシに小声で伝えられ、私はさりげない仕草でカーブミラーを見た。

 

「なるほど……畑さん以外は素人だからしょうがないかもしれないけど、あれじゃ丸見えね」

 

「ストーカーの玄人ってなんだよ……」

 

「せめて追跡って言ってあげたら?」

 

「無理だろ……特に会長とか八月一日さんとかは……息が荒いぞ」

 

 

 この距離で私の小声が聞こえなかったのに、さらに離れてる二人の息遣いは聞こえるの? ……もしかして、さっきのも聞こえてたけどあえて聞こえなかったフリをしてくれたのかしら。

 

「とりあえず、カラオケでも行く? さすがに部屋の中までは突撃出来ないだろうし」

 

「そうね。でも、寄り道は校則違反よね。五十嵐先輩に怒られるわよ」

 

「じゃあ一回家に帰るか。それで、一時間後にまた集合で」

 

「了解。それじゃあ、私はこっちだから」

 

 

 タカトシと別れ、私は自宅までダッシュで帰った。すれ違った会長たちには気づかないフリをして、タカトシとの約束だけを考えていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何か面白いことがありそうな予感がして尾行したが、何もないまま津田副会長と萩村さんは解散してしまった。

 

「ちょっとおしゃべりしてただけだったんですね」

 

「てか、スズ先輩私たちの横を通ったのに気づきませんでしたね」

 

「タカトシ君も珍しくスルーして帰っちゃったし……」

 

「私はこのまま張り込みを続けますが、皆さんはどうします?」

 

 

 張り込みの心得もないでしょうし、すでに津田副会長には我々の存在を知られてるっぽいですしね……大人数で動くのは得策ではないでしょう。

 

「仕方ないから私たちは帰ります。トッキー、マキ、打ち上げでカラオケ行かない?」

 

「寄り道は校則違反ですよ。……あれ? もしかしてタカトシ君たちもそれを考えていったん解散したんじゃ」

 

 

 五十嵐さんの考えは多分あたりでしょうね……となると、集合は一時間後かそこらね……

 

「私たちも急いで帰って着替えるぞ! 何としてもあの二人の不純異性交遊を止めなければ!」

 

「シノちゃん、目的は違うんじゃない?」

 

 

 まぁ天草会長の本音と建て前はどうでもいいですけど、万が一くんずほぐれつの展開になったら、それはもう売れるでしょうね。

 

「では、皆さんは一時帰宅ということで」

 

「畑は?」

 

「私はこのように――一瞬で着替えることが可能ですので」

 

 

 張り込み道具の中に忍ばせていた着替えを取り出し、一瞬で制服から着替えて見せた。これで寄り道にはならないはずよね。

 

「……不要なものを学校に持ち込んだとして、畑さんには後日風紀委員会に出頭してもらいます」

 

「えっー! 貴女も興味津々なのでしょ~? 見逃してくれないかしら~」

 

「規則ですので」

 

 

 風紀委員長も副会長の事が気になって仕方ないはずなのに……融通の利かない人ね、まったく……




たまに出てきては壊れていくような……

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