桜才学園での生活   作:猫林13世

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シノの誕生日回です


誕生日パーティー

今日は6月の12日、天草会長の17回目の誕生日だ。

今日の放課後は生徒会室で誕生日パーティーを開催する予定だ……一応プレゼントは持ってきたが、異性にプレゼントなんて初めてだからな、これで良かったのだろうか?

 

「おはよ、津田」

 

「おはよう、萩村」

 

「アンタってでっかいから遠くからでもすぐ分かるわね」

 

「そう?」

 

「何食べたらそんなにデカくなるのよ?」

 

「う~ん、なんだろうね?」

 

 

特別何かをしてた訳でも無いのだが、順調に背は伸びている……別に萩村に対するあてつけじゃないからな!

 

「そう言えば萩村はプレゼント、何にした?」

 

「ちゃんとしたものよ」

 

「うん、それは分かってる」

 

「ならアンタは?」

 

「俺もちゃんとしてるよ」

 

「それは分かってるわよ」

 

「「……ハァ」」

 

 

もう1人の生徒会役員の顔を思い出し、萩村と同時にため息を吐いた……あの人もさすがにふざけないよな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は何だかあっという間に授業が終わった気がする……時刻は既に放課後、つまり生徒会室で天草会長の誕生日パーティーが始まったのだ。ホワイトボートには色々と書かれているが、これと言って不審なモノは無い……さすがに七条先輩も自重したか。

 

「それじゃあシノちゃんの誕生日を祝して、乾杯!」

 

「乾杯!」

 

 

チン

 

「会長、おめでとうございます」

 

「ありがとう、津田」

 

 

チン

 

「ぐ、ぐぬぬ……」

 

「大丈夫か、萩村?」

 

「私に合わせてもらわなくって結構です」

 

 

……チン

萩村が精一杯背伸びして漸く全員と乾杯を済ませた会長……何故かグラスを見てうっとりしてる気が……

 

「シノちゃん?」

 

「なあアリア、連続で乾杯してみないか?」

 

「?」

 

 

そう言いながらグラスを軽くぶつける2人……

 

チン、チン

 

「おお!」

 

「これは!」

 

「「?」」

 

 

何かに感動してる2人だが、俺と萩村にはさっぱり分からない……そんなに感動する事なのだろうか?

 

「もう1回だ!」

 

「間髪入れずにいきましょう!」

 

 

チンチン

 

「「この音かー!!」」

 

 

何に感動してるのか分かってしまう自分が嫌だ……だがスルーと言う選択肢はこの場に存在しなかったのだ。

 

「さぁお待ちかねのプレゼントよ」

 

「会長、まずは私のから!」

 

「いえ、俺のからどうぞ!」

 

「お、おぅ……」

 

「あらあら、シノちゃんモテモテね」

 

「「(この人(金持ち)の後には出せねぇ……)」」

 

 

結局順番は萩村、俺、七条先輩の順になった……萩村の後もなんだか緊張するな。

 

「これは!」

 

「貯金箱?」

 

「これからは貯蓄ですからね」

 

「ありがとう。大事に使わせてもらうよ」

 

「次は津田君ね」

 

「えぇ、どうぞ」

 

「随分と小さいのね?」

 

「でも高さはあるわね」

 

「どれどれ……」

 

 

会長が包み紙を剥いでいく……何だか緊張するな。

 

「これは、アロマキャンドル?」

 

「津田君が買ったの?」

 

「ええ、まぁ……」

 

「随分とまともなものを買ったわね」

 

「だから言ったろ、ちゃんとしたものだって」

 

 

最初は妹に相談したのだが、ろくなアイディアが無かったので自力で決めた……やっぱりあの妹は1度徹底的に説教したほうが良いのかもしれない……

 

「ありがとう、早速家で焚くとしよう」

 

「それじゃあ最後は私……あっ、そうそう横島先生から預かってたんだった」

 

「え、あの人から……」

 

 

会長が嫌そうな顔をしている……おそらく俺と萩村も同じ顔をしてるのだろう。

 

「こ、これは!?」

 

「2穴タイプね!」

 

「「やっぱりか!」」

 

 

横島先生のプレゼントは案の定ろくなものでは無かった……だが会長が嬉しそうにしてるのは見間違えだろうか?……そうだと思いたい。

 

「それじゃあ私からのプレゼントね」

 

「デカイな」

 

 

大きな箱を開けて中身を取り出す会長……あれは、耳?

 

「おお!」

 

「練習がてら作ってみたんだ」

 

「これは芸術だな!」

 

「「?」」

 

 

全容が見えないので俺と萩村にはその感動が伝わってこない……耳からして熊だよな。

 

「熊だよね?」

 

「熊よね?」

 

 

萩村も熊が芸術だと評される理由が分からないようで俺と顔を見合わせる……すると会長がその箱の中身の全容を露わにした……縄?

 

「名づけて、緊縛熊!」

 

「待てアリア、小さいつを入れるのは如何だ?」

 

「緊縛ッ熊」

 

「ああ!読み方はきんばっくまだな!」

 

「あのリラ……」

 

「「言わせねぇからな!」」

 

 

あれ以上は色々危ない気がしたので全力で七条先輩の口を塞いだ。

 

「そう言えば津田の誕生日は何時だ?」

 

「来月ですが」

 

「「おめでとー」」

 

「はぁ……」

 

 

何だこのなげやりな感じは……

 

「萩村は何時だ?」

 

「4月に済みました」

 

「「おめでたー」」

 

「!?」

 

「それで過去形になると思うなよ」

 

 

手抜き感満載の祝辞に思わずツッコんだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パーティーも終わりに差し掛かった時、外から雨音が聞こえてきた。

 

「あら、雨ね」

 

「困ったな、私は傘持ってきてないぞ」

 

「置き傘がありますよ」

 

「あっ、俺もありますね」

 

 

忘れてたが、こんな事もあるかと思って置いておいたんだった。

 

「それじゃあ入れてもらおうかな」

 

「じゃあ私は津田君と……」

 

「待て!私と津田の方が良いだろ」

 

「何で~?」

 

「ほ、方向が一緒だから」

 

「一理あるわね~」

 

「いや、七条先輩もどっちかと言えば方向一緒ですよね?」

 

「私だけ逆方向……」

 

 

結局七条先輩は迎えに来てもらうようで、萩村だけ1人で帰っていった。

 

「誰かに見られたら勘違いされそうですよね、会長人気ですし」

 

「そうだな……」

 

 

所謂相合傘だからな……

 

「畑さん、これは違いますからね?」

 

「ギクッ!」

 

「やはり居たか……」

 

 

雨合羽を着て尾行していた畑さんに釘を刺して会長と一緒に帰る……あの人の事だから絶対に誤解した上に脚色するからな、先に注意しておかないと面倒な事態になりかねないから。

 

「私はこっちだ」

 

「俺はこっちです」

 

「じゃあ此処までで良い。すまなかったな」

 

 

分かれ道で会長が傘を差し出してくる。元々俺のだから遠慮してるのだろう。

 

「その傘は会長が使ってください」

 

「だが……」

 

「せっかくの主役を濡らして帰す訳にはいきませんから」

 

「濡らす!?」

 

「雨で、ですからね」

 

 

盛大な誤解をしてそうだったのでとりあえず言っておく。

 

「それに、俺は大丈夫ですから」

 

「そうか、ならこの傘は明日返そう」

 

「では」

 

 

そう言って駆け出した……駆け出したのだが、信号が青から赤に変わってしまった……

 

「……変わるまで入ってるか?」

 

「うん……ハクション!」

 

 

あれ、何だか寒気がするぞ?




ボツネタ

「ほ、方向が一緒だから」

「あっ、俺折りたたみもあるので使ってください」

「「………」」



これだとシノフラグが建たないのでボツに……用意周到も必ずしも善しでは無いと言うことですね。

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