桜才学園での生活   作:猫林13世

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これでスズも先頭争いに加われる……か?


限りなくデート

 タカ兄とスズ先輩は真面目だから、制服のまま寄り道はしないと思っていたけど、まさか本当に一回家に帰るとは思ってなかったよ。

 

「タカ兄、お帰り~」

 

「ああ、ただいま」

 

 

 先回りしてタカ兄を出迎えた私は、何食わぬ顔でタカ兄のテスト結果を聞くことにした。

 

「タカ兄、テストどうだった?」

 

「いつも通りだよ。お前は今回はまともな点数だったらしいな」

 

「その言い方、いつもまともな点数じゃないみたいじゃない!」

 

「……まともだったのか?」

 

 

 本気で首を傾げられると、私も反応に困ってしまう……赤点すれすれの点数が、果たしてまともな点数なのか、私にも分からないもんね。

 

「ところでタカ兄、テストも終わったしどっか行こうよ!」

 

「今からか? 悪いが約束があるから明日以降にしてくれ」

 

 

 あれ、誤魔化すかと思ったけどはっきりと言っちゃうんだ……

 

「約束って、誰と?」

 

「お前、さっき会長たちと後をつけてただろ。スズと出かけるから明日以降にしろって事だよ。万が一ついて来たら……さて、どうしようか」

 

 

 タカ兄が見せた笑みに、私は震え上がった。たまに見るけど、タカ兄がこういった悪い笑みを浮かべてる時は、本気でやばい時なのだ。下手に逆らったら意識を刈られる可能性が高い……これはシノ会長たちにも報告しておかなければ。

 

「お前が会長たちを止めてくれるなら、お前に任せる。俺も何度も気絶させるの面倒だし」

 

「私、何も言ってないよね?」

 

「お前は顔に出やすいからな。八月一日さんにも言っておけよ。あの子もなんか変なスイッチ入ってたぽいから」

 

 

 さすがタカ兄……あの距離で誰がどんな状況だったのかもバッチリ把握してるとは。

 

「それじゃあ、俺は出かけてくる」

 

「私はシノ会長たちにメールして、大人しく留守番してるね」

 

「ん、頼んだぞ」

 

 

 タカ兄は優しく微笑み、私の頭を撫でてくれた。こんなことされちゃ、タカ兄を裏切って追跡するわけにもいかないよね……何より、今の顔だけで三回は絶頂出来るもん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシとの待ち合わせ場所に到着したのは、約束の三十分前。さすがに早すぎる……

 

「別にデートとかじゃないのに、なんで緊張してるのよ私……」

 

 

 よく考えれば、タカトシと出かけるのだって初めてじゃないのに……まぁ、二人っきりってシチュエーションがあったかどうかと問われれば、無かったと思うけど……

 

「それにしてもさすがに三十分前は早すぎるわよ……どこかで時間を潰して……」

 

 

 適当な店を探したが、この辺りにはコンビニくらいしかなかった。立ち読みするのもあれだし、かといって少し離れた場所に移動したら、ここが見えなくなる可能性も……

 

「あ、あれ? タカトシ……」

 

「早いね。待たせちゃ悪いからと思って早く来たのに」

 

「わ、私もそう思って早く来たのよ!」

 

 

 まさか緊張して早く来たなんて、恥ずかしくて言えない。タカトシの気配りに便乗して、私は緊張してるのを誤魔化すことにした。

 

「追跡者はいないな」

 

「さすがにこの時間には来ないでしょ。畑さんならありえそうだけど」

 

「コトミに思いとどまらせるようにメールさせたからな。よほどの命知らずでもない限り来ないだろ」

 

「……なにしたのよ?」

 

「別に。ちょっと『お願い』しただけで、コトミも素直に聞いてくれたからな」

 

 

 何となく、聞いちゃいけないと思った。多分聞いたら恐怖するだろうし……

 

「とりあえず、どっかに行きましょう」

 

「どこに行くんだ?」

 

「そうねぇ……映画でも見に行きましょうか」

 

「良いよ」

 

 

 特に見たい映画があるわけでも、他に何も思いつかなかったわけでもないが、せっかくの二人っきりなんだから、ちょっとくらいデートっぽい事をしてもいいよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スズが選んだ映画は、今話題の恋愛映画だった。普段見ないし、普通に誘われても見たかどうか分からないような映画だが、今日はまぁいいか。

 

「面白かったわね」

 

「何となくセリフが棒読みぽかったけど、ストーリーは悪くなかったかな」

 

「あんた、そんな事気にしながら見てたの? もう少し純粋に楽しみなさいよ」

 

「そういわれてもな……気になったものは仕方ないだろ」

 

 

 特にヒロイン役の女優が棒読みだった気がする。あれでも立派に演技してるんだろうけども、もう少し感情をこめられないものか、と思ったシーンも一つや二つじゃない。

 

「この後はどうする? どっかでお昼でも食べて別のところにでも行くか?」

 

「そうしましょう。ちょうどあそこにパスタハウスがあるし」

 

「スズがそこで良いなら構わないけど」

 

 

 俺はスズと二人でその店に入り、注文を済ませてふと外を見ると――

 

「あれ、畑さんだよな?」

 

「畑さんね……マスクに帽子、サングラスまでしてるけど、明らかに畑さんね」

 

 

――挙動不審、見るからに不審者、職務質問されても仕方ないような先輩がそこにいた。

 

「気づかなかったふりをして、メールだけ送っておこう」

 

 

 俺は素早くメールを打ち、畑さんに送信した。そしてそのメールを読んだ畑さんは、その場でペコペコと頭を下げて、逃げるようにその場からいなくなってしまった。

 

「あんた、なんて打ったのよ」

 

「ん? 今後エッセイは書かないし、新聞部の予算もご自身で稼いだ分から出してくださいって」

 

「笑顔でえげつない事を言うわね……」

 

「そうかな?」

 

 

 ちょうどそのタイミングでパスタが運ばれてきて、その話題はそこで終わった。それにしても、あの人にはコトミからのメールが行ってなかったのだろうか……

 

「タカトシの、少しくれない?」

 

「別にいいよ、はい」

 

 

 スズにパスタを差し出すと、少し照れた様子だったけどふつうに食べた。よく考えれば間接キスか……まぁ、スズが気にしないなら問題ないかな。




コトミがヤバい……あっ、いつも通りか……

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