た、タカトシが使ってたフォークでタカトシのパスタを食べてしまった……これって完全に間接キスよね……べ、別にこの年で間接キスが恥ずかしいってわけでもないし、タカトシが気にしていないんだから、私も気にしなくていいのよね?
「わ、私のも食べる?」
「そうだね。少しもらおうかな」
そういってタカトシは、自分のフォークで私のパスタを食べようとしてくる。それが普通なのだろうが、私はあえてそのフォークを遮り、自分が使っているフォークに適量巻き付けてタカトシに差し出す。
「さ、さっきのお返しなんだから、これが正しいでしょ?」
「まぁ、スズが気にしないならいいけど」
そういってタカトシは、私が差し出したフォークでパスタを食べる。これも完全に間接キスね……しかも、次に私がまた使うんだし、なんだか恥ずかしくなってきたわね……
「食べ終えたらどこに行く?」
「へっ? そうね……小物でも見に行きたいけど、男のあんたが来ても面白くないかもしれないわね」
「別にいいよ。今日はスズに付き合うって決めたんだから」
「テストは同点だったのに、あんたは何も要求してこないのね」
「別にスズにお願いした事は今のところないし、何か出来たら頼むよ」
た、タカトシに頼まれる事って、結構面倒な事っぽいわね……自分の事しか考えてなかったけど、タカトシから頼み事されるって大変じゃない……
「それじゃあ、そこに隠れてる会長たちを撒いて、スズの小物を買いに行こうか」
「えっ、会長?」
タカトシが小声になったので、私もつられて小声に返したけど、どこに会長たちが隠れているのか、ついに私には分からなかった……
タカトシにバレてしまったので、私とアリアは大人しく買い物に行くことにした。
「完璧に隠れてたつもりだったのだがな……」
「畑さんを囮に使ったのにね~」
「コトミに忠告されていたが、やはり気になってしまったからな……怒られないよな?」
アリアに問いかけるが、笑って誤魔化された……つまりはそういう事なのだろう……
「好奇心はほどほどにしないければ、と常々思っていたのにな……」
「仕方ないよ、シノちゃん。人間は好奇心には逆らえないんだから」
「まったくですね~」
「おぉ、畑」
「せっかくわざと見つかったのに、会長たちまで見つかってしまうとは……」
あれってわざとだったのか……てっきり素で見つかったものだとばかり思っていたが……
「私はあくまで会長たちに付き合っただけで、私個人としては止めるべきだったと思っていましたからね。怒られてもそこだけは忘れないでくださいよ?」
「あっ、ズルいぞ! そもそもお前がこのボイスレコーダーと超小型カメラを渡してきたんだろ?」
「どっちにしろ怒られるんだし、諦めて遊びましょうよ?」
既に開き直っているのか、アリアは怒られる事を恐れていないらしい。まぁ、決定事項ではあるのだから、今からあれこれ言っても仕方ないしな……
「それで、どこに行く?」
「女三人で映画を見に行ってもねぇ……ここは津田副会長たちみたいに、何か買いに行きますか?」
「それでしたら、私がご案内しましょう」
「出島さん、いつからいたの?」
「お嬢様が津田さんを尾行していた時から、私もお嬢様を尾行していました」
つまり、出島さんはアリア専門のストーカーという事か……てか、今までいたことに気づかなかったぞ……
「是非その追跡の極意を教えてください」
「私の授業料は高いですよ?」
「これじゃあダメですか?」
そういって畑が取り出したのは、アリアの着替え中の写真だった。どこで盗撮したんだ、こいつは……
「今回はこれで引き受けましょう。その代り、今後もお願いできますでしょうか?」
「では、交渉成立ですね」
「畑さ~ん、後で盗撮の件、聞かせてね~」
出島さんとの間で交渉成立した畑だったが、アリアに後で怒られることが決定した。タカトシにも怒られる事になるのに、なんで自分から怒られる回数を増やしてるんだ、アイツは……
タカ兄がスズ先輩とお出かけしてしまったが、私は追跡することなく家で大人しくソロプレイをしていた。だって、あんな表情のタカ兄を見てしまったら、体が火照って仕方ないのだから。
「やっぱりタカ兄だけで十回は絶頂出来るよ……なんでタカ兄がお兄ちゃんなんだろう……」
それは、昔から思っていたこと。子供のころは無邪気に結婚の約束をしたりしたけど――実際は昼ドラの影響だったりしたけど――今そんな事言えばタカ兄に呆れられるだろう。だって、私とタカ兄は血のつながった兄妹なんだから……
「サクラ先輩やカエデ先輩のように、キスしてもらえないし……」
タカ兄の近くで生活できる、という特典はあるけども、どう頑張っても最後の一線を越えることは私には出来ないのだ。
「私が、っていうよりはタカ兄がそんな事望まないだろうしね……」
真面目が取り柄と言っても過言ではないタカ兄が、そんな背徳的なことを望むわけがないし……
「でも、そんな背徳的な妄想が堪らなく興奮するんだよね~」
結局、タカ兄が帰ってくるまでの間、三十回は絶頂してしまい、部屋中汚しまくってしまった……
「で? どうやったらここまで汚れるんだ? 昨日掃除したと思うんだが」
「ちょっとソロ活動に気合を入れてしまいまして……誰もいないしリビングでって思ってました……」
「その活動の内容は聞かないが、夕飯が出来るまでに綺麗にしておけよ」
「はい、わかりました……」
タカ兄は多分分かってて聞かなかったんだろうけども、それを今聞いたら余計に怒られるから黙っておこう。さてと、開放的な気分を味わえたのは良かったけど、なんでこんなに汚れてるんだろう……あっ、三十回も絶頂してたらこれくらい汚れるか……てか、何時間ソロ活動してたんだろう……
コトミなら、これくらい楽勝……ではないだろうな