桜才学園での生活   作:猫林13世

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ちょっと詰め込みました


夏休み前

 桜才学園運動部として初となるインターハイ出場を、三葉たち柔道部が決めたらしい。そのことで話があるという旨のメールを役員たちに出し、集合した次第だ。

 

「我々生徒会でも、何かするべきではないだろうか?」

 

「壮行会は行われるんですよね? なら、そこで何かをすればいい訳ですから……スズ、何か意見ある?」

 

「サプライズがあれば盛り上がると思うわよ」

 

 

 優秀な後輩たちが企画を練ってくれている間、私はアリアと別の企画を考えることにしよう。

 

「アリア、何かいい案は無いか?」

 

「サプライズって事は、定番はやっぱりポロリだよね!」

 

「なるほど。タカトシの息子をポロリか」

 

「でも、タカトシ君の息子を全校生徒に見せるのはもったいないよね~」

 

「確かに……」

 

 

 私たちですら見たことないのに、全校生徒に見せるなどもったいない! しかも壮行会ということは教師も当然いるわけで、あの人がタカトシを襲いかねないな……

 

「残念だがアリア、この案は却下だ。タカトシの初めてを横島先生に奪われてしまうかもしれない」

 

「それは思いつかなかったよ~。危ない所だったね」

 

「危ないのは貴女たちの頭の中ではありませんかね?」

 

 

 背後から底冷えのする声が聞こえてきて、私は恐る恐る振り返る。そこには、ある意味想像通りのタカトシが拳を握りしめながら、ひきつった笑みを浮かべていた。

 

「少しはまともに考えてくれませんかね? いい加減、殴るのも疲れるんですが」

 

「これからは立派な生徒会長になる所存であります」

 

「私も、冗談は自重する方向で邁進していきたいと思っています」

 

 

 とりあえず平謝りして、何とか拳骨だけは許してもらった。この前ストーキングしてた時の罰として喰らった拳骨は、頭が割れるんじゃないかって思うくらい痛かったからな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 壮行会も無事に終わり――途中横島先生が手柄を横取りしたり、畑さんがチアのスカートの中を盗撮したり、コーラス部の口元のアップを撮ったりと、細かな問題はあったが、とりあえずは生徒会室へ戻ってきた。

 

「応援部なんてあったんだね~」

 

「このために男子たちが結成したとか。一応部活申請は通ってるんですけど」

 

「そうなんだ~。シノちゃんは知ってた?」

 

「当たり前だ! 認印を押したのは私だからな!」

 

 

 会長が胸を張ると、隣でタカトシがため息を吐きたそうにしていた。

 

「何かあったの?」

 

「いや、認印を押したのは俺なんだけど……会長は俺が許可した後にそのことを知ったはずだから」

 

「そうだったか? まぁ、とりあえず知ってはいた」

 

 

 記憶があやふやなのか、会長は誤魔化して話題を変えたのだった。

 

「そう言えばそろそろ夏休みだが、みんなは何か予定でもあるのか?」

 

「私はお稽古事とかが忙しいけど、他の日だったら大丈夫だよ~」

 

「俺もバイトが無ければ大丈夫ですね。コトミも補習を免れましたから」

 

「私もとくには無いですね」

 

 

 これだけ聞くと、生徒会の面々が暇っぽい感じがするわね……まぁ、実際暇な日が多いのは否定しないけど。

 

「ではまた何か企画でもするか!」

 

「シノちゃん、楽しそうだね~」

 

「タカトシ、なんだか疲れた顔してない?」

 

 

 会長たちが張り切ってる側で、タカトシが疲れ果てた顔を見せたのが気になったので、私は小声でそう話しかけた。

 

「だって、会長の企画って事は、カナさんや他の人も呼ぶだろうし、そうなるとツッコミの比率が……」

 

「何時もご苦労様です。私も出来る限り手伝うから」

 

 

 ツッコミにおいて、タカトシとサクラさんには敵わない私だが、他の人よりはまともなツッコミは出来るだろうし、普段タカトシに押し付けすぎてる感は確かにあるものね……少しくらい頑張らなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一学期の終業式、私はトッキーと二人で補習から逃れた喜びを分かち合っていた。

 

「ホントタカ兄には感謝だよね~」

 

「あの人がお前の兄貴だって、まだ信じられねぇけど、確かに兄貴のおかげで補習を免れることが出来たからな」

 

「二人ともおめでとう。このクラスには補習者がいないんだってね」

 

「私とトッキーが危ない感じだったから、私たちが補習じゃなきゃ誰もいないって」

 

 

 中間で赤点だったのも私とトッキーだけだしね。あの時は本気でタカ兄に殺されるかと思ったけど、何とかなだめることが出来たから良かったよ。

 

「補習もないし、夏休みはいっぱい遊ぼう!」

 

「遊ぶのはいいけど、ちゃんと宿題やらないとまた津田先輩に怒られるよ?」

 

「じゃあ、三人で集まって宿題もしようか。ウチでやればタカ兄に聞けるし」

 

「……最初から兄貴頼みなのはどうなんだ」

 

 

 珍しくトッキーがツッコミを入れてきたけど、イマイチキレは良くないね。まぁ、普段はツッコまれる側だし。

 

「トッキーだって、マキだって、タカ兄がいた方がうれしいでしょ?」

 

「べ、別に津田先輩がいなくたってちゃんと宿題はやるわよ!」

 

「まぁ、私は兄貴に聞かないと分からない箇所が多いだろうし、いてくれた方が助かるな」

 

「私だってタカ兄がいないと宿題出来ないだろうし」

 

 

 私とトッキーは勉強面で、マキは精神面でタカ兄の助けが必要だろうし、やっぱり宿題をやるなら私の部屋だね。

 

「早速タカ兄に予定を聞かなければ! バイトのない日なら大抵家にいるだろうし」

 

 

 生徒会の方で仕事が無ければ、タカ兄だって基本的には家で作業するだろうしね。

 

「これで宿題の問題も片付いたから、思う存分遊べるね!」

 

「いや、まだやってすらないだろ……」

 

 

 またトッキーにツッコまれたけど、まぁ明日からの夏休みを楽しみにしてるってことにしておこう。




二人はまともな生徒会役員になるのだろうか……

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