桜才学園での生活   作:猫林13世

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あのセリフは台本だったのか、それともアドリブだったのか……


桜才学園七不思議 後編

 旧校舎のトイレでは何も起こらなかったので、私たちは次の現場に向かうことにした。

 

「今日は私のおてせーい!」

 

「畑さん、料理出来たんですね」

 

「津田副会長には負けるけどね~」

 

 

 調理室に何かの噂があるのか分からないけど、私たちは畑さんお手製のカレーを食べることにした。

 

「はぁ……」

 

「萩村、どうかしたのか?」

 

 

 私がため息を吐くと、会長が心配そうに私の顔を覗き込んできた。

 

「私の気分は、今の天気と同じですよ」

 

 

 外はどんよりとした雲で覆われ、雨も降っている。つまり、最悪のコンディションだ。

 

「濡れ濡れのぐちょぐちょ?」

 

「アウトっ!」

 

 

 とんでもない誤解をしてくれたな、この会長は……

 

「ところで畑さん、調理室の七不思議って何なんですか?」

 

「裸エプロンの幽霊が出るって噂です」

 

「……それ、男子の願望じゃね?」

 

 

 タカトシは、見たいとも思わないのか、冷静にツッコミを入れている。ホント、普通の男子高校生とは思えないわよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 調理室の調査を終えて、我々は次なる噂の検証の為に移動した。

 

「第五の噂は、悠久の廊下。午前零時に通ると延々に道が続き、出られなくなるそうです」

 

「また眉唾物ですね」

 

 

 津田副会長はあんまりビビッてくれないけど、ほかの生徒会役員たちには結構怖がってもらってるのよね。極秘に撮影した恐怖の表情写真は、後で売りさばいてその利益を……

 

「あっ、今日撮った写真は、一枚残らず検閲しますのでそのつもりで」

 

「あら~? 七条さんの着替えシーンの写真を見たいのかしら~?」

 

「ろくでもないもの撮ってるんじゃねぇよ! 新聞部をつぶされたいんですか?」

 

「こ、これは出島さんから頼まれたものでして……」

 

「あらあら~」

 

 

 少し脱線したけど、我々は遂に『悠久の廊下』に到着した。

 

「タカトシ君、怖いから手を握ってもいいかな?」

 

「はぁ、どうぞ」

 

「タカトシ、危ないから手を握ってあげる」

 

「え、あぁ」

 

 

 あっという間にハーレム野郎が誕生したけど、まだ天草会長が残ってる。でも、両手は埋まってるし……あっ、あの場所が空いてる。

 

「会長、まだチ○コが空いてます」

 

「そんな耳打ち、あるかバカチンが!」

 

「おぬし、ツッコミのレベルが上がっておるな」

 

 

 まさかの被せツッコミとは……しかも、微妙にあの先生に声が似てた……

 

「ところで、午前零時にこの廊下を通ると、って言ってましたよね? 今午後八時なんですけど」

 

「じゃあこの場所の検証は後でにしましょう。第六の噂は、音楽室の怪。肖像画の目が光るそうです」

 

「今度はやけに定番だな……」

 

 

 津田副会長が冷静な分、萩村さんや七条さんが津田副会長にべったりですねぇ……やはり、天草会長の出遅れ感は否めませんね……

 

「うわぁ!? 音楽室から、誰かが覗いてる!?!」

 

「落ち着け、カエデさんだ」

 

「へ? ……五十嵐先輩、何してるんですか?」

 

 

 せっかく面白そうな展開になりそうだったのに、ホント津田副会長の冷静さはつまらないわねぇ~。

 

「わ、私はコーラス部の合宿でして。今は忘れ物を取りに来ただけです。それよりも、貴方たちこそ何してるんですか、こんな時間に、こんな場所で」

 

「私たちは桜才七不思議を体験しようとしています。ちなみに、この音楽室の肖像画は視○してくるそうです」

 

「怖いっ!」

 

「表現が変わってるし、実際に視てくるわけじゃないでしょうしね。それと、カエデさん……」

 

「な、何ですか?」

 

「驚いたのは分かりますけど、そろそろ離れてください」

 

「シャッターチャンス!」

 

 

 私の表現は怖かったのか、風紀委員長は副会長に抱き着いた。これは、これは売れる! 題名は、ハーレム副会長に風紀委員長もぞっこん! これで決まりね。

 

「はい、消去」

 

「あーん! せっかく撮ったのに~」

 

 

 いつの間にか私のカメラを奪い取った天草会長に、写真を消されてしまった……てか、青筋立てて怖いですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後の検証場所は、柔道場だった。

 

「この場所で寝ると、夜遅くに何者かが布団の上に乗ってくるそうです。通称『黒いモノ』」

 

 

 また胡散臭い事を……

 

「スズちゃん、暑くない?」

 

 

 よほど怖いのか、スズは真夏だというのに布団にくるまって震えている。

 

「ところでその幽霊は男か、それとも女か?」

 

「女と聞いています」

 

「じゃあ、狙われるのはタカトシだな」

 

「わーい!」

 

「………」

 

 

 自分が襲われる心配がなくなったからってスズ……そのリアクションは違うんじゃないか? まぁいいけど。

 

「それでは寝ましょうか。津田副会長の隣は私が使いますので」

 

「何故だ!?」

 

「だって、他の皆さんだと、寝相の悪さだと言い張って津田副会長の布団に侵入しそうですし。そうなると『黒いモノ』よりもスクープになっちゃいますから」

 

 

 その理屈はおかしいけど、確かに畑さんなら襲い掛かってくる心配もなさそうだ。

 

「では、お休みなさい」

 

 

 畑さんが電気を消して十数分、ほかの人の寝息が聞こえてくる。

 

「ん~……ボインボインになりたい……」

 

「ん~……シノちゃん、それは、無理……」

 

 

 変な寝言が聞こえるけど、気のせいってことにしておこう。てか、なんか寝苦しいというか……なんか重いような気が……

 

「……何、してるんですか?」

 

「ちょっと夜這いを」

 

「………」

 

 

 正直に言っても、許されないことはある。それが今の発言だろう。俺はのしかかっていた横島先生を布団にくるんで、縛って、そのまま放置して寝ることにした。そして翌朝……

 

「しまった!? 悠久の廊下の検証を忘れてしまった!」

 

「あっ、別に何もなかったですよ?」

 

 

 起きてたので一人検証したが、こうして無事に戻ってこれた。てか、しょせん噂は噂か。

 

「ところで、何故に横島先生は布団で簀巻きにされてるの?」

 

「これが『黒いモノ』の正体だから」

 

 

 てか、何年前からある噂か知らないけど、元女子高で男子が襲われるって話自体おかしいって思わなかったのだろうか……

 

「楽しかったな! 今回の合宿は!」

 

「何も起こらなかったけど、楽しかったわね~」

 

「……横島先生の事は、全力で無視なんですね」

 

 

 まぁ、構うだけ無駄だからな……




しかもモノマネ似てたし……

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