桜才学園での生活   作:猫林13世

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原作13巻発売日です


真夏の暑さ我慢大会

 この真夏に実行するのはどうかと思ったが、会長の鶴の一声で真夏の暑さ我慢大会が決行されることになったのは良いんだが、何故ウチで行うんだろう……

 

「あっ、暑さ我慢ってこっちだったんだ~。私てっきりこっちかと思ったよ~」

 

 

 そういってアリア先輩が取り出したのは、注射器のようなものに入れられた熱湯と、太い蝋燭だった。

 

「てっきりでそっちなんですか?」

 

「てかアリア、それを誰に使うつもりだったんだ?」

 

「ん~? タカトシ君に使ってもらおうかな~って思ってた」

 

「俺が?」

 

 

 てか、あの蝋燭は何の目的であそこまで太いのだろう……本来の用途では使えないよな、あれだけ太いと……

 

「とりあえず、アリアの厚着が終わったら開始だ! タカトシは暖房と炬燵の用意だ!」

 

「何でこの真夏に炬燵なんて用意しなければいけないんですか……」

 

 

 何の目的があるのかは知らないが、室内熱中症になられたら面倒だな……適当に切り上げてもらえると嬉しいんだが……

 

「タカトシ君、コトミちゃんの服だとちょっと小さいんだけど」

 

「じゃあ俺の上着を貸しますよ。ちょっと部屋に取りに行ってきます」

 

 

 アリア先輩とコトミじゃ、服のサイズが違ったようで、俺は部屋に自分の上着を取りに戻った。リビングに戻ってきたら、何故かシノ先輩とスズの頬が膨れていたんだが、何かあったのだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシの家での暑さ我慢は、昼食でも容赦なかった。会長がタカトシに頼んで作ってもらったのは、激辛キムチ鍋だった。

 

「夏に鍋をする人がいるとは聞いたことがありますが、まさか自分が作ることになるとは思いませんでした」

 

「〆はうどんか? それともご飯を入れてキムチ雑炊も捨てがたいな」

 

「食べる前から〆の話ですか……」

 

 

 素早い動きで私たちの取り皿に具材を取り分けるタカトシ……相変わらずの主夫っぷりね……

 

「熱いし辛いが、美味いな!」

 

「さすがタカトシ君だね。すごくおいしいよ」

 

「普通に煮ただけで、大したことしてませんけど……」

 

「冷たい飲み物が欲しくなるわね」

 

「だが、今回は暑さ我慢だ! 飲み物も当然、温かいものだ!」

 

 

 何故か会長が威張っているが、飲み物を用意したのもタカトシ……キムチ鍋だが、温かい緑茶が手元に置かれた。

 

「さすがにコーヒーや紅茶じゃないだろうと思ったんだが、何が一番いいのか分からなくって……まぁ、後はほうじ茶か白湯しかないんだけどね」

 

「さすがに白湯は……」

 

 

 お腹には優しいけど、このタイミングでは飲みたくないわね……

 

「さぁここで! 暑さを我慢しているみなさんに涼し気な恰好をした私を見てもらおう!」

 

「コトミ、家の中だからって、そんな恰好してると風邪ひくぞ」

 

「あっ、ごめんタカ兄……」

 

 

 精神的に追い込むつもりだったんだろうけども、普通にタカトシに心配されたコトミっていったい……

 

「ていうか、さっきからアリア先輩が一言も喋ってませんけど?」

 

「アリア? なんだ寝てるのか……」

 

「それ、かなりやばい状況だろうが!」

 

 

 タカトシが即座に七条先輩に駆け寄り、涼しい場所に移動させるべく腰に手をまわし、肩を貸して運んでいく。脱水症状ではないでしょうけども、かなり危なかったかもしれないわね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリアがダウンしてしまったため、この企画は没にすることにした。

 

「やっぱり夏はアイスだな!」

 

「さっきまで部屋を暑くしていましたからね。アイスの冷たさが倍増してる気分ですよ」

 

 

 ちなみにアリアは、少し横になって回復して、今は一緒にアイスを食べている。

 

「シノ会長、なんで真夏に暑さ我慢なんでしようと思ったんですか?」

 

「外以上に暑いところで生活すれば、外の暑さが気にならないと思ってな! まぁ、あんまり体重減らなかったけど……」

 

「それが真の目的か!? てか、夏場は意外と食べてしまうから体重が増えるんですよ。適度な運動をして、普段以上に食べなければ気にすることは無いと思いますが……てか、毎年体重減ってる気がするんだよな……」

 

「えっ、夏バテ?」

 

「いや、夏場の家事って結構疲れるんだよ。同じ洗濯でも、夏と冬は体力を倍くらい使ってる気がするんだよな」

 

 

 これだから主夫は……普通の学生の発想をしてもらいたいものだ。

 

「タカ兄、出島さんが外にいるんだけど」

 

「何の用で?」

 

「汗だくになった服は私が洗濯しますって」

 

「今すぐ帰ってもらえ。服は各自洗濯しますからって」

 

「あっ、私が着てた服、タカトシ君のだよね。このまま返したら夜のおかずにされちゃう?」

 

「安心してください。速攻で洗濯機に叩き込みますから」

 

 

 普通の男子高校生なら、美人で巨乳の先輩が着ていた、汗だくの服を手に入れたらそれだけでイってしまうんじゃないだろうか……それをタカトシは、まったく興味を見せずに、それどころか普通に洗濯しようなどと……

 

「まさか、EDなのか?」

 

「酷い言われようだ……汗だくの服なんて、すぐに洗わなければ黄ばむじゃないですか」

 

「発想が主夫過ぎる……」

 

 

 さすがの萩村も、タカトシの発想が異常だと思ってるようだ。一般の高校生男子ならば、三日はそれだけで自家発電が出来ると思うんだけどな……

 

「ところで、何故コトミまでアイスを食べてるんだ?」

 

「何故って、これはウチで買ったアイスですし」

 

「普通に暑いですからね~」

 

 

 こんな時だけ息ピッタリな兄妹だな……普段はズレまくってるのに……

 

「とりあえず、外が涼しくなるまでは、のんびりするか!」

 

「それじゃあシノ会長、格ゲーで勝負です!」

 

 

 この後数時間、白熱の勝負を繰り広げ過ぎて、コトミと二人でタカトシに怒られたのだった……




コトミが普通に心配されてしまった……

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