桜才学園での生活   作:猫林13世

190 / 871
暑さの次は寒さです……


真夏の極寒我慢大会

 暑さ我慢大会の次は、真夏の極寒我慢大会が行われることになり、我々生徒会メンバーからは何故か私が参加することになった。

 

「タカトシが出ればいいじゃない」

 

「いや、俺は裏方仕事の横島先生の見張りと、暴走した際の対処が担当だから」

 

「ほんと、ご苦労様です」

 

 

 参加しないタカトシに文句でも言ってやろうかと思ったけど、タカトシの仕事を私が代わりに出来るかと聞かれれば、まず出来ないと答えるだろう。それくらい難易度の高い仕事であり、タカトシにしか出来ない仕事だった。

 

「俺の代わりにコトミが参加してくれるから」

 

「スズ先輩、負けませんからね」

 

「やけに自信満々ね……」

 

 

 暑さ我慢の時は、涼しげな姿で私たちの戦意を削ぐ役割だったのだが、タカトシに素で心配されたために退場、つまり役立たずだったのだ。今回の大会に意気込む気持ちは分からなくはない。

 

「タカトシ、準備出来たぞ」

 

「分かりました。参加する人は、プールサイドに集合してください。合図とともに入水し、最後の一人になるまで続きます。リタイアは自由ですので、限界が訪れる前にプールから出てください」

 

 

 タカトシの説明に、参加者全員が頷いた。目の前には氷が沢山浮いているプール、周りにはムツミやネネと言った友人たちの姿もあった。特に優勝賞品が豪華とかではないのだが、勝負と名の付くもので私は負けたくない。この大会は絶対に勝つと心に決め、タカトシの合図とともに入水した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 極寒我慢大会がスタートして五分、まず最初に柳本が脱落した。

 

「何で参加したんだよ?」

 

「女子の水着が見たくて……」

 

「はい、あっちでタオル配ってるから、それで身体を拭いて応援に徹してください」

 

 

 横島先生の方を指さし、俺は引き続きプールと横島先生の両方を監視する位置に戻った。

 

「「もうだめ! 出ます!」」

 

 

 十分を過ぎた頃、柔道部の中里さんと海辺さんが脱落し、そろってプールから上がっていった。

 

「コトミのやつ、意外と頑張ってるな」

 

 

 そろそろ限界の感じる人が多くなってきている中、コトミは未だにプールの中に残っている。普段だらしないわりに、意外と我慢強いのだろうか。

 

「「もう限界!」」

 

 

 そんなことを思っていたら、轟さんと同時にコトミが音を上げた。まぁ、二十分近く我慢したんだ、後で誉めてやろう。

 

「「漏らす……」」

 

「ダッシュで上がれ!」

 

 

 褒めようと思ったらこれだ……

 

『残るは生徒会代表の萩村さんと、柔道部部長三葉さんの一騎打ちですね~』

 

『二人とも頑張って~』

 

 

 なぜかノリノリで実況と解説をしている畑さんとアリア先輩の声を背中に受け、俺は轟さんとコトミをプールから上げ、とりあえずトイレに行かせた。今回は未遂だし、説教は良いか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 精神攻撃と言う事で、今の私は水着の上にコートを羽織り、マフラーを巻いてホットココアを飲んでいる。萩村と三葉にこの程度の精神攻撃が利くかは分からないが、これも生徒会の務めだからな。

 

「シノ先輩、暑くないんですか?」

 

「まぁ、汚れ役も我々生徒会の役目だからな。辛かろうが職務は全うする」

 

「さすがですね」

 

 

 感心したように頷くタカトシ。そういえばこいつもさっきからいろいろ動いてるから暑いんじゃないだろうか。だが、今の私はそっちよりも気になることがあった。

 

「(『そんな○Vみたいなこと言わないで!』的なツッコミはまだか?)」

 

「俺のツッコミはそんなくだらなくないだろ」

 

「っ!?」

 

 

 今、何も声に出してないよな? まさか私の心を読んだというのか? 厚着して見えにくい私の心を読んだというのか!?

 

「厚着云々は関係ないですよね? そもそも会長は顔に出やすいって、前にも言いましたし」

 

「うむぅ……」

 

 

 これでもポーカーフェイスを心掛けているんだが、どうしてもタカトシ相手だと勝手が違う……

 

「スズ、震えてるけど大丈夫?」

 

「問題ないわ」

 

「無理はするなよ」

 

「まぁまぁ、萩村も背伸びしたい年頃なんだろうさ」

 

「背伸び? ……あぁ、なるほど」

 

 

 何か合点がいったのか、タカトシは数回頷いて萩村を心配することをやめた。何を理解したのか分からないが、タカトシが心配しないってことは問題ないんだろう。

 

「てか先輩、もう氷も溶けちゃいましたし、決着つかないんじゃないですか?」

 

 

 一時間半経過して、用意してた氷は全て溶けてしまった。確かにこれじゃあ普通にプールに入ってるだけだな。

 

「てなわけで、優勝は萩村さんと三葉さんでーす」

 

「二人ともおめでとう」

 

 

 畑とアリアが二人をたたえるコメントをし、他の参加者も惜しみない拍手を二人に送る。

 

「(しまった! 賞品を持っているから手が叩けない)」

 

 

 些細なものだが、用意した賞品を持ってきた所為で、二人に拍手が送れない。さて、どうしたものか……

 

「タカトシ、君の尻を叩いていいか?」

 

「良い訳あるか。荷物は持ちますから、普通に叩けばいいでしょうが」

 

「尻を?」

 

「手を!」

 

 

 タカトシに怒られ、私は普通に手を叩くことにした。

 

「優勝者お二人には、天草会長から優勝賞品が贈られます」

 

「まさか二人も優勝者が出るとは思ってなかったから、これは二人で山分けしてくれ」

 

 

 賞品の入った箱を二人に手渡し、もう一度拍手を送った。

 

「ちなみに、中身は何なんです?」

 

「アリアおすすめ、私が厳選した書籍だ!」

 

「えー、私本読まないんですけど……あっ、スズちゃんに全部あげるね」

 

「焼却炉ってあったかしら」

 

 

 萩村はなんとなく中身が分かってるようで、処分の方法を考えている。まったく、ウオミーやコトミも愛読しているものだと言うのに、何故萩村は良さを理解してくれないんだろう……




ネネとコトミの宣言はアニメのみだったんですね……読み直して知りました

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。