桜才学園での生活   作:猫林13世

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この人たちは相変わらず……


新学期早々

 夏休みも終わり、新学期になり気分も新たに頑張ろう! と決心して生徒会室を訪れると、タカトシと萩村が机に突っ伏していた。

 

「どうした? 二人がそんな恰好になるなんて、珍しいな」

 

「昨日遅くまでコトミの宿題を見てまして……」

 

「ちょっと夏バテ気味でして……」

 

「なんだなんだ、だらしない。アリアを見ろ! すごく元気じゃないか」

 

「私は本当に身を絞めてるからね~」

 

 

 そう言ってアリアは、肩口袖をめくり、荒縄を私に見せてくれた。

 

「タカトシ、ツッコミなさいよ」

 

「もうあの流れは良いよ……」

 

「とにかく、これから始業式なんだから、二人ともしっかりしろ」

 

 

 珍しくだらけている後輩に活を入れ、私は体育館へ向かうことにした。こういった時くらいは、しっかりと生徒会長としての威厳を見せておかないと……最近、どっちが会長か分からないと自分でも思ってるし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一昨日、昨日とトッキーと一緒にタカ兄に手伝ってもらったお陰で、夏休みの宿題は無事に提出することが出来た。

 

「まさか夏休みの最初の方に一緒にやって、そのまま家に忘れてたなんてね」

 

「うっせ!」

 

「てか、コトミも気づきなさいよ……」

 

 

 トッキーの課題全般は、私のものと一緒に机の端っこに放置されていたのだ。それを見つけたのは、私の部屋を掃除しに来たタカ兄だった。

 

「いやー、てっきり終わらせたと思ってたんだけどね~」

 

「数学と英語、白紙だったもんな……」

 

「アンタら二人、津田先輩に頭が上がらなくなってきてるわね……コトミは昔からだけど」

 

「タカ兄はなんだかんだで優しいから、可愛い妹を見捨てる事なんてないからね~」

 

 

 お礼に夜這いでもしようかと思ったけど、さすがにタカ兄も私もヘトヘトで、今日は珍しくタカ兄も遅刻ギリギリだったのだ。

 

「そう言えば、壇上の津田先輩、少し眠そうだったね」

 

「トッキーが帰ってから、あの後理科の課題も残ってた事が判明してね……終わったの午前二時だったし……」

 

「天体観測したんじゃなかったのかよ……」

 

「それは自由研究だよ。トッキーは、理科の課題やったの?」

 

「あっ? ……そんなのあったか?」

 

 

 あっ、完全に忘れてるパターンだ……まぁ、あれは忘れるよね。

 

「コトミ、悪いが今日帰りが遅くなりそうだから、晩飯は勝手に済ませてくれ」

 

「あっ、タカ兄。遅いって、どのくらい?」

 

「分からん。課題を全て忘れた柳本の補習の手伝いを横島先生に頼まれたんだが、いったい何をやるのかも、どれくらいやるのかも教えてもらってない」

 

「勝手にって言われても、私料理出来ないよ?」

 

「安心しろ、コトミ! 我々生徒会が責任もって晩御飯の用意をしようじゃないか!」

 

「シノ会長たちが来てくれるなら、大歓迎です!」

 

 

 タカ兄ほどじゃないけど、シノ会長もアリア先輩も、スズ先輩も料理上手だもんね。ベッタベタな爆発オチなんて、絶対に起こらないよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コトミの晩御飯を用意するために津田家を訪れた私たちは、玄関前で英稜の二人と出くわした。

 

「何故カナとサクラがいるんだ?」

 

「私たちは、タカ君と遊ぼうと思ってたのですが」

 

「アポなしで来たの~? タカトシ君に怒られそうだけどな~」

 

「いえ、約束はちゃんとしてましたが、急用で遊べなくなったと言われちゃいました。でも、その急用が何なのかが気になったので、こうして参上仕った次第」

 

「カナ会長……何故にそんな言葉遣いを……」

 

 

 サクラさんのツッコミは、タカトシと比べれば劣るが、やはりハイレベルなものだと、私から見ても分かる。私も頑張ればあのくらい出来るのかしら……

 

「それだったらちょうどいい! カナもサクラも手伝ってくれ」

 

「何をするんですか?」

 

「新妻ごっこだ!」

 

 

 そのボケはどうなんだろう……それだけで伝わると、会長は思ってるのかしら……

 

「なるほど。帰りが遅いタカ君の為に、ご飯を作って待ってるんですね。そして『ご飯にします? お風呂にします? それとも……』ってやつをやるんですね!」

 

「さすがカナだ! よくわかってるな!」

 

「「えぇー! さっきのでそこまでわかるの!?」」

 

「珍しくスズ先輩とサクラ先輩がユニゾンしましたね」

 

 

 そう言われれば、タカトシとツッコミが被る事はあったけど、サクラさんとは初めてかもしれないわね……タカトシとサクラさんの二人がいると、どうしてもツッコミサボり気味になっちゃうから仕方ないのかもしれないけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 柳本の課題の手伝いをさせられて、ようやく家に帰って来たと思ったら――

 

「タカ君、私にします? シノっちにします? それともアリアっち?」

 

「全員同時でも構わないぞ!」

 

「初体験が4Pだなんて……」

 

「何なら私も食べていいんだよ、タカ兄?」

 

 

――そこにはカオスが広がっていた。

 

「えっと……スズ、サクラさん、状況の説明を求めます」

 

「えっと……見ての通りとしか言えないわね」

 

「会長たちが盛り上がっちゃいまして……」

 

 

 酒でも呑んだんじゃねぇだろうな……そうじゃなきゃ説明できないぞ、この状況……

 

「とりあえず、何故カナさんとサクラさんが? 日を改めましょうってメールをしたと思うのですが」

 

「カナ会長がタカトシさんの急用が気になるって……」

 

「それで、スズ? 俺は晩飯を三人に頼んだはずなんだが?」

 

「えっと……私じゃ四人の暴走を止められませんでした」

 

 

 隣ではサクラさんも申し訳なさそうに手を合わせている。つまり、二人のキャパシティー以上のボケを四人がしたというのか……

 

「コトミ、三人と一緒に片づけとけよ。スズ、サクラさん、外に食べに行きましょう」

 

 

 本当はもう一歩も外に出たくないほど疲れてるのだが、このカオスから逃げ出すには、そうした方が良いだろうしな。晩飯も用意されてなかったし……




色欲より先に呆れが来てしまう以上、このメンバーの恋路は前途多難でしょうね……

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