桜才学園での生活   作:猫林13世

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どちらかというと、コスプレパーティー?


ハロウィン祭 準備

 桜才学園では、新しいイベントとしてハロウィンパーティーが行われることになった。その準備として、タカトシ君が半日ぶっ通しでかぼちゃを加工している。

 

「それにしても、相変わらず器用だよね、タカトシ君って」

 

「なんですか、急に」

 

「普通半日もかぼちゃを彫ってたら手首が痛くなったりしてナイフがズレたりするはずなのに、ほとんど同じ形に彫り上げるんだから」

 

「あと数個で終わるって考えながらやってるからでは? やっと何個目、と考えるより気持ち的に楽が出来ますからね」

 

 

 それだけで楽になるとは思えないけど、タカトシ君が言うと本当にそう思えるから不思議なのよね~。

 

「ところで、何故いきなりハロウィンをしようなんて言い出したんでしょうね」

 

「シノちゃん、お祭り大好きだからね」

 

「お祭り好きだからといって、何も収穫祭にまで手を伸ばさなくても」

 

「日本では仮装パーティーの扱いだから問題ないんじゃない? そもそもシノちゃんだって、本当のハロウィンをしようとは思ってないわよ」

 

 

 ハロウィンで騒ぐのは日本くらいだしね。シノちゃんがやりたいのは本物のハロウィンではなく、日本式のハロウィンだろうし。だから私もコスプレ衣装を考えているんだけどね。

 

「さてと、これで最後ですね」

 

「そろそろシノちゃんとスズちゃんが戻ってくる頃ね」

 

 

 二人今、新聞部と仮装パーティーの際のコスプレ大賞を決めるコンテストの打ち合わせに行っている。もちろん、学園側にはちゃんと許可を取っているので、タカトシ君が止める事も出来ないのだ。

 

「本当にやるんですか? 風紀委員が問題視するかもしれないのに」

 

「大丈夫よ。カエデちゃんもノリノリだったし」

 

「あの人、最近畑さんに毒されてますもんね……」

 

 

 カエデちゃんという障害もクリアした今、シノちゃんを止められる人はタカトシ君くらいだもんね。でも、今回は止める必要を感じてないのか、タカトシ君も準備を手伝ってくれている。これはシノちゃん、チャンスかもね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 畑と話し合っていたら白熱してしまい、準備をすっかりすっぽかしてしまった。

 

「いや~、盛り上がったな」

 

「あの優勝賞品は怒られると思いますけどね」

 

「だからあれは止めて、学食デザート一ヶ月半額券にしただろ!」

 

 

 萩村がいてくれなかったら『タカトシが作ったお弁当を、タカトシから食べさせてもらえる権利』になっていたからな……あのままだったら賞品どころか企画自体が無くなるところだった……

 

「ところで会長、私たちもコスプレするんですよね?」

 

「当たり前だろ! 何のためにハロウィンパーティーをすると思ってるんだ!」

 

「収穫祭ですよね?」

 

「本当はそうだが、私がやりたいのは日本式だ!」

 

 

 大都会でコスプレイヤーがあふれ返り、交通機関に支障を来すのはどうかと思うが、学校レベルで楽しむくらいなら問題は無いだろう。

 

「それで、会長はどんなコスプレをするつもりなんですか?」

 

「私は魔女かな」

 

「魔女ですか」

 

「ああ! こう箒に跨ってな」

 

 

 子供のころあこがれたあの恰好を、まさか高校生になってする機会を得るとは思ってなかったな。

 

「だが、箒に跨った時、いけない気持ちにならないようにファールカップを用意しなければ」

 

「……自制心を鍛えればいいのでは?」

 

「そんなんで興奮を抑えられるか!」

 

「シノちゃん、室内まで声が聞こえてるよ」

 

 

 生徒会室前で大声を出したから、アリアが驚いて出てきてしまった。

 

「おお、すまない。ついつい興奮してしまった」

 

「何の話をしてたの~?」

 

「箒に跨った時にいけない気持ちにならないよう、ファールカップを用意しようという話だ!」

 

「あ~、あれは気持ちよさそうだもんね~」

 

 

 アリアは私に同意してくれたし、これで用意する方向に話が進むな!

 

「お疲れ様です。こちらは準備し終わったので、クラスの話し合いに顔を出してきます」

 

「あっ、私も行くわ」

 

 

 タカトシに続き、萩村も逃げ去るようにクラスの方へ行ってしまった。そんなにいけないことか? ファールカップは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシの後についてきたは良いが、実はクラスでの話し合いなど存在しない。純粋にあの場から立ち去る方便として、タカトシが作ったのだ。

 

「さてと、これからどうする?」

 

「すぐに戻るのはねぇ……ちょっとゆっくりしてから戻りましょう」

 

「そうだな」

 

 

 そう言ってタカトシはポケットから財布を取り出し、自販機に小銭を入れてコーヒーを購入した。

 

「私も何か買おうかしら……って、飲みたいものが上の段にしかない!?」

 

 

 ここの自販機っていつも使わないから、どんな飲み物があるか把握してなかったわ……まさか届く範囲に飲みたいものが無いとは……

 

「俺が押そうか?」

 

「ごめん、コーヒーの微糖を」

 

「了解」

 

 

 タカトシにボタンを押してもらい、漸くほしいものが購入できた。それにしても、この身体は不便でしかないわね……

 

「そういえば、当日は俺たちもコスプレするんだよな? 何になるんだろう」

 

「ああ、私はジャック・オー・ランタンを被って、アンタはドラキュラの格好をするみたいよ」

 

「そうなの? 何で決まってるんだ?」

 

「さっき会長がノリで……ちなみに会長が魔女、七条先輩がコウモリのコスプレをするみたいよ」

 

「コウモリ? どうやってするんだ……」

 

 

 私も分からないので、二人で首を傾げた。まぁ、当日になれば見れるのだし、分からなくてもモラルに反してない限り止めないけどね。




何でも騒げば良いものではないんだが……

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