桜才学園での生活   作:猫林13世

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風紀委員長の衣装……あれはダメだぁ……


ハロウィン祭 当日

 ハロウィン祭当日、我々もコスプレをして会場にやって来た。

 

「シノちゃん、魔女のコスプレが決まってるね」

 

「アリアこそ、可愛いぞ」

 

「でもちょっとキツくて……亀甲縛りが」

 

「なんだ、びっくりさせるなよな~」

 

 

 てっきり採寸したときより胸が大きくなったのかと思ったじゃないか。

 

「十分驚くべきことだと思いますが」

 

「ツッコむだけ無駄だから良いんじゃない?」

 

「スズ、なんか投げやり?」

 

「このコスプレしてても、すぐに私だって分かるのは何でなのかって思ってさ」

 

「……何でだろうな?」

 

 

 萩村のコスプレはジャック・オー・ランタンを頭から被ったかぼちゃのお化けなのだが、身長的に萩村だとすぐに分かるのだ。だがその事は地雷なので、タカトシはやんわりと分からないフリをして誤魔化したのだった。

 

「それにしても、随分と盛り上がってるな」

 

「企画した甲斐がありましたね」

 

「そうだね~。カエデちゃんが『風紀が~』って言うかと思ったけど、意外とノリノリでびっくりしたよね~」

 

 

 五十嵐も世間の流行に乗ったのか、このハロウィン祭には積極的に参加している。一部男子が鼻血を出しているとの報告も受けたが、いったいどんなコスプレをしていると言うんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コーラス部でもコスプレをしなければいけなくなってしまったので、私は部員たちと考えて妖精のコスチュームを作りそれを着ている。さっきから男子が遠目で見てる気がするんだけど、どこかおかしいのかしら?

 

「おやおや~、風紀委員長がそんな恰好をしてるとは思いませんでしたね~」

 

「畑さん? どこかおかしいかしら?」

 

 

 突如現れた畑さんに、私の格好は何処かおかしいのか聞いてみることにした。何処かおかしいのなら、コーラス部の子全員がおかしい事になるので、急いで修繕したいのだけど。

 

「風紀委員長が、そんな男の欲情を煽るような恰好をしてるのがおかしいんですよ~」

 

「えっ?」

 

 

 欲情を煽るって、別にそんな風に考えてなかったし、この衣装ってそんなに興奮するようなものかしら?

 

「その横乳、さてはお主ノーブラだな!」

 

「津田さん……って、何よそのキャラ」

 

 

 またまた突如現れた津田さんに、ついついツッコミを入れてしまった。って、それどころじゃなく、胸をツンツンと触るのを止めてもらいたい。

 

「いや~ベストおかずニストが中庭にいるって聞きまして、アリア先輩かな~って思ってきてみたら、まさかの風紀委員長だったんですよ~」

 

「そのフレーズ、いただき!」

 

「どうぞどうぞ、使っちゃってください!」

 

 

 何だか盛り上がってる二人をおいて、私はさっきの津田さんの言葉が引っ掛かっていた。あの子確か、ベストおかずニストとか言ったわよね……おかずって言葉は、きっと食事とかの方ではなく……!?

 

「えっ……それって……嘘よね……」

 

「おんや~? どうかしたのですか、風紀委員長?」

 

「視○されていたことに気づいたんじゃないですか~?」

 

「さっきから男子トイレが大渋滞だっていう噂も、あながち間違いではないのかもね~」

 

 

 急に恥ずかしくなった私は、今すぐこの場から逃げ出したい衝動に駆られたが、背後から掛けられた声で身体が硬直してしまった。

 

「コトミ、お前クラスの出し物をすっぽかして何してるんだ? 八月一日さんと時さんが探してたぞ」

 

「あっタカ兄。ちょっとベストおかずニストを見に来ただけだよ」

 

「何だそれ?」

 

 

 私の背後に今、津田君がいる……津田君も、私をおかずにしたりするのかしら……

 

「カエデちゃん、その衣装エロいね~」

 

「風紀委員長が率先して風紀を乱すとは」

 

「そういう目で見る方が乱れてるんでしょうが……」

 

「そっ、そうよね! 私、風紀を乱してないわよね!!」

 

「は、はい……大丈夫だと思いますよ」

 

 

 津田君のツッコミに救われた気分になり、私は軽くなった心でこの場から移動する事にしたのだった。自分が津田君の手を掴んでいた事に気づいたのは、かなり後になってからだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いろいろあったが、ハロウィン祭は無事に終わった。途中であったコスプレ大会は、柔道部が優勝したのだった。

 

「我々も結構自信あったんだがな」

 

「まぁ、楽しむのが目的だったんですから、別に良いんじゃないですか?」

 

「そうだな! 途中雨が降ってきて、女子生徒の衣装が透けるんじゃないかと、男子はドキドキしてたもんな!」

 

「そんな事実は無い!」

 

 

 タカトシに全てツッコミを任せ、これだけ楽をさせてもらった日はいつ以来だろう……ホント有能なツッコミよね~。

 

「しかし、祭りの終わりと言うのは、少し寂しさを覚えるな」

 

「そうですね」

 

「確かに……楽しかっただけに、ちょっと物悲しいです」

 

「私も~。この衣装一生懸命作ったから、脱ぐのが惜しいよ~」

 

「えっ? 別にそこまでは……」

 

 

 七条先輩のコメントに、会長がちょっと引いた。まぁ、何時までもコスプレしてるわけにはいきませんしね……

 

「だって、せっかく採寸までして作ったのに、破り捨てるのは忍びないじゃない?」

 

「破り捨てる理由がどこに?」

 

「えっ? だって、使い捨て衣装でしょ?」

 

「何処の言葉ですか、それ」

 

 

 普通に脱げばいいのに、七条先輩は相変わらずどこかズレているんだなぁ……

 

「次はどんな行事を開拓していこうか」

 

「まだ何かするんですか?」

 

「学園生活は楽しまなくてはな!」

 

 

 会長の言葉に、タカトシは諦めたように肩を竦めて、疲れたように笑ったのだった。今日一日、ツッコミを一人で担当してたから疲れてるわけではないわよね? また体調を崩す事は無いわよね? ちょっと不安になってきたけど、まぁタカトシなら大丈夫よね?




風紀を乱してると言われても仕方ないだろ……

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