桜才学園での生活   作:猫林13世

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非常に今更な行事になってしまった……


桜才・英稜学園交流会

 新しい行事は無いかと考えた結果、英稜のカナと共同で、生徒会役員による学園交流会を開こうと言う事になり、すぐさま学園に許可を取った。

 

「と言うわけで、今日はその一回目となる!」

 

「何が『と言うわけ』なのかは置いておくとして、事前に通達くらいしておいてくださいよ」

 

「なに、来るのはカナとサクラの二人だから、顔見知りの集まりだと思えば良いだろ」

 

「それはそうですが、一応学園の代表として話し合うんですよね?」

 

「そうだな。だから恥ずかしい事をするなよ」

 

 

 タカトシやスズなら問題ないだろうが、一応念を押しておかないと締まらないからな。

 

「シノちゃん、この花瓶は何処に置けばいいかな?」

 

「机の上で良いだろ。それにしても、見事な形だな」

 

 

 アリアが持ってきた花瓶に、私は目を奪われた。何と言うユーモアセンス。これならカナにも負けないだろうな!

 

「それ、花瓶ですか?」

 

「用途はちょっと違うけど、モノを挿す道具だから問題ないよ」

 

「……スズ、ちゃんとした花瓶ってなかったっけ?」

 

「倉庫にあったと思うけど、先輩たちが頑なに変更を受け入れないというジェスチャーをしてるわよ」

 

 

 スズの指摘を受けて、タカトシが私とアリアの動きを見た。私たちは必死に両手で×印を作っている。

 

「学園の品位を落としますよ?」

 

「カナなら受け入れてくれるだろう!」

 

「そうだよ~。カナちゃんなら大丈夫だって!」

 

「……サクラさんも来るんだろ」

 

 

 ため息交じりにタカトシが呟いた言葉は、私とアリアの決心を鈍らせる威力は無かった。結局このオ○ホ型花瓶を机に置き、カナとサクラを受け入れることになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学園交流会というのを、桜才学園生徒会と行うことになったのですが、正直顔見知りの集まりとしか思えないんだろうなーっと思っていました。ですが、いざ改めて桜才学園を訪れると、なんだか緊張してきました。

 

「サクラっち、なんだか緊張して濡れてきてしまいました」

 

「そういうの良いので……英稜の代表として、しっかりしてください」

 

 

 サクラっちにツッコまれたけど、イマイチ締まりませんね……ここはやはりタカ君にツッコミを入れてもらうしかなさそうですね……

 

「お待たせしました。桜才学園生徒会長の天草シノです」

 

「同じく副会長の津田タカトシです。今日はご足労いただき、ありがとうございます」

 

「英稜高校生徒会長魚見カナです。こちらこそお招きいただき、ありがとうございます」

 

「同じく英稜高校生徒会副会長の森サクラです。今日はよろしくお願いします」

 

 

 形式だけとはいえ、挨拶だけはしっかりしなければということで、私たちはちゃんとした挨拶を交わした。一応生徒会の会長と副会長ということだけあって、体裁を保つのも大切なのだ。

 

「では、生徒会室にご案内いたします」

 

「お願いします」

 

 

 他の生徒の目がある内は、タカ君もしっかりと礼儀を通すようなので、こちらもそれに合わせた。もちろん、肩がこるからさっさと普段通りの話し方をしたいんですけどね。

 

「お待ちしておりました。桜才学園生徒会書記、七条アリアです」

 

「同じく桜才学園生徒会会計、萩村スズです。今日はよろしくお願いいたします」

 

 

 生徒会室に到着し、アリアっちとスズぽんの挨拶を受け、着席したと同時に、私の目の前に花が挿されたオ○ホがあるのが気になった。

 

「これは、何でしょうか?」

 

「花瓶です」

 

「良く出来ていますね」

 

 

 実に精巧に作られたものに、私は感嘆の息を漏らした。

 

「花瓶?」

 

「ごめんなさい、押し切られまして……」

 

 

 私の横ではサクラっちが首を傾げ、その正面でタカ君が両手を合わせて謝っていた。それにしてもこのユーモアセンス……負けていられませんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 交流会と言っても、それほど大した議題も無く、普段通りのお喋りの様相を呈してきたのでお開きにすることになった。

 

「それにしても、桜才学園は未だに恋愛禁止なのですか」

 

「校内恋愛は禁止している。目に余るようなら注意する感じだな」

 

「殆ど機能してない校則ですけどね。畑さん調べで、結構な数のカップルがいるみたいですし」

 

「節度を持ったお付き合いなら、風紀委員も目を瞑るという感じですが、カエデさんは取り締まりたいようですけどね」

 

「あの人はほら、男性恐怖症だし。目に余るって範囲が他より厳しいんでしょうね」

 

 

 英稜は清い付き合いなら問題ないようだが、桜才もそのあたりは見習った方が良いのだろうか? 頭ごなしに否定するのは、ちょっと古い考えかもしれないな。

 

「ところで、この前の桜才新聞の企画ですが、タカ君にお似合いな女子はというアンケート、何故サクラっちが一位だったのでしょうか? 桜才学園でアンケートを取ったのですから、アリアっちの方が有利だと思うんですけど」

 

「サクラちゃんはほら、何度か桜才学園に来てるじゃない? そこでタカトシ君と息の合ったツッコミが話題になってたのよ」

 

「なるほど……じゃあ、コトミちゃんよりシノっちの方が順位が下だった理由は?」

 

「どうしても『会長・副会長』ってイメージが付いちゃってるんだってさ」

 

「確かに、タカ君のシノっちは、恋人関係より主従関係ですよね。あっ、タカ君が主ですよ」

 

 

 誰に向けての捕捉だったんだ、今のは……てか、誰が主だ。

 

「それじゃあ、今回の交流会はここまでと言う事で。次回は英稜学園で行う予定だ!」

 

「次回はこちらがホストですから、桜才学園に負けないおもてなしをお見せしますよ」

 

「例えば?」

 

「こちらの花瓶に対抗して、サクラっちの……」

 

「黙りなさい」

 

 

 サクラさんに口を塞がれ、カナさんのボケは途中で遮られた。まぁ、どうせろくでもない事なんだし、遮られても問題は無いんだがな。

 

「次回はどんな議題になるのか楽しみだな!」

 

「近況報告で終わりそうですけどね……」

 

 

 スズの零した言葉に、全員が微妙な顔をしたのだった。交流会もなにも、結構頻繁に顔を合わせてるから、報告する事もあまりないんだけどな……まぁ、交流を持つことが目的だし、予算とか関係ない行事だからいいんだけどな。




世間話くらいしか出来なかった……

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