新聞部の企画として、桜才学園内の有名人にインタビューをすることにした。
「というわけでして、まずは会長にインタビューをしようと思いまして」
「なるほどな」
「では、今年の抱負をお願いします」
「抱負か……有言実行かな」
会長の抱負にしてはつまらないわね……
「会長、サインお願いします」
「うむ! これが私の欲求不満のサインだ!」
「髪の毛を触手に見立ててるのですね。さすがです」
「状況が理解出来ん……」
体に髪の毛を巻き付け、触手に捕らわれたように見える。なるほどこれはこれで面白いですね。
「それでは次に、津田副会長に今年の抱負を聞きたいのですが」
「抱負ですか? それじゃあ健康第一で」
これは……会長以上につまらない答えが返ってきたわね……
「もっとこう……あら?」
私としたことが、咄嗟に言葉が出てこなくなってしまった……
「ほら、こう……もっとお口サービスして」
「リップサービスといいたかったのだろうか……」
「そうそれ! 読者にサービスをお願いします」
会長より副会長がサービスしてくれた方が、部数が見込めますからね。
「それじゃあ、ツッコミの機会を減らしたいですね」
「それがサービス?」
「ツッコミの機会が減れば、他の人との会話の時間に当てられますからね」
「なるほど……」
ボケ組に対する威圧と、他の人への時間を作ろうとする意欲を見せるとは……やはり彼はやりおるな……
「何の話をしてるんですか?」
「次は萩村さん、今年の抱負をお願いします」
「抱負ですか? そうですね……肩を鍛えたいですね」
「またピンポイントな目標ですね」
萩村さんが肩を鍛えて、何をするのでしょうか……
「この前、ボールを投げ返す場面があったのですが、全然飛ばなくて恥を掻いたので……」
「そうですか。乳歯投げる時にも必要ですからね」
「とっくに投げ終わってるわ!」
萩村さんにツッコまれたけど、やっぱりツッコミのキレは津田副会長の方が数枚上ね。
「ところでこれ、何のインタビューだったの?」
「新聞部の企画らしいよ」
私がメモを取っている隣で、萩村さんと津田副会長が今回の企画について話している。まぁ、今回の企画は生徒会に潰される事は無いでしょうから、気にしないで次に行きましょうか。
「あら~。畑さん、何か用事だったの?」
「生徒会メンバー最後、七条さんに今年の抱負を聞きたいと思います」
「抱負? 平常心を保つことかにゃー……あちゃー噛んじゃった」
「さっそく乱れてますよ?」
そのタイミングで、エッチな風が七条さんのスカートをまくり上げた。
「あとねー」
「(今のはダメージないのね)」
「あっ、タカトシ君に見られちゃったかな?」
「……ん? 何かあったんですか?」
少し慌てたように津田副会長の事を見た七条さんだったが、副会長は書類に目を通していたようで、今の出来事は見てなかったようだ。
「相変わらずアンラッキースケベだな、タカトシは」
「だから、その単語は何なんです?」
津田副会長はアンラッキースケベ体質と……
生徒会室を出て行った畑さんは、その後横島先生、三葉とインタビューしに行ったらしい。
「インタビュー企画とか言ってましたが、抱負なんて聞いてどうするんでしょうね?」
「アイツの考える事など私には分からんな」
滞っていた仕事を片付ける為、俺たちは止まっていた手を動かしながら畑さんの目的を考えてみた。
「また裏で販売してるとか?」
「それはお前のエッセイが載る回だけだろ」
「この前のアンケート企画の時は、英稜高校にも流れてたとか」
「ああ、あのいけ好かないアンケート企画の時か」
シノ先輩が怒っているのは、コトミよりも順位が下だった事だろうな……あのアンケートは誰に取ったのかいまだに不明なんだよな……
「シノちゃん、さっき欲求不満のサインを出してたって聞いたけど、どんなの~?」
「これだ!」
「あの……仕事してください」
さっきと同じく髪の毛を体に巻き付けたシノ先輩に、スズがツッコミを入れた。
「しているぞ? 現に溜まってた書類の六割は片付いているではないか」
「そう言う事じゃねぇよ……遊んでないで仕事しろってことですよ」
「タカトシ君もツッコミに容赦が無くなってきたよね~」
「容赦してて抑えられる相手じゃないですからね」
もう二年も付き合ってるんだから、いい加減手加減などして収まる相手ではないということくらい理解している。そもそも今までもこれくらいのツッコミはしてきたのに、何故今更……
「いや~、いいインタビューが出来ました」
「畑!」
「お帰りなさ~い」
いや、畑さんはここに帰ってくる人じゃないから、その言葉はどうなんだろう……
「そう言えば畑、お前の今年の抱負は何なんだ?」
「私たちも言ったんだし、聞く権利はあると思うな~」
「私の抱負ですか? もちろん、特ダネを掴むことです!」
「おお、燃えてるな」
あの人が燃えて、良い事なんてあったかな……
「でも、読者層が高校生ですし、欲しいのは校内の有名人の恋愛の噂なんですが、誰一人そんな雰囲気もないんですよね~……」
「他人の何とかは蜜の味、というやつか」
「きっとしょっぱいんだろうね~」
「男と女だしな」
「蜜ですしね~」
何だか三人が納得したようだが、これでいいのだろうか? 納得できなかった俺はスズに視線を向けたが、スズも微妙な表情をしていたので、とりあえず流すことにしたのだった。
タカトシの体質は、ラッキースケベな時とアンラッキースケベの時があるからな……