桜才学園での生活   作:猫林13世

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このネタの時は、誰をピックアップするかに悩む


それぞれの思惑

 生徒会室で作業をしていたら、シノ先輩が一人でやって来た。

 

「おや、タカトシだけか。萩村はどうした?」

 

「風紀委員の人に呼ばれてました」

 

 

 本来なら二人で書類整理をする予定だったのだが、何か急用だったようなので、書類整理は一人でやっていたのだ。

 

「アリア先輩は? 一緒じゃなかったんですか?」

 

「ああ、アリアは掃除当番だ」

 

 

 なるほど、それなら仕方ないかな。

 

「珍しく二人きりだな」

 

「珍しいですか? 結構あったような気も……そうでもないのか?」

 

 

 スズやアリア先輩と二人きりというのは、何度かあった気がするが、シノ先輩と二人きりというのは、なんだか久しぶりな感じがする。

 

「何だか照れるな」

 

「照れてる暇があるなら、この書類にサインお願いします」

 

「……お前、ちょっと酷くないか?」

 

「照れ隠しです」

 

 

 ボケなければ、この人は美人で面倒見がよく家事ができる素敵な女性だ。ボケなければ。

 

「そうか……タカトシでも照れることがあるんだな」

 

「先輩たちは俺を何だと思ってるんですか? シノ先輩もですが、畑さんも」

 

「畑がどうかしたのか?」

 

「いえ、俺が特殊性癖なのではないかと、さっきまで張り付いていたんですよ」

 

 

 邪魔になるので、生徒会室まで帰ってもらったのだが。

 

「そりゃお前、あれだけ女子に囲まれているというのに、まったくソロプレイの形跡がないんだ。特殊性癖を疑ってしまうのも仕方ないだろう」

 

「なんなんですか、まったく……」

 

 

 結局、書類整理は一人で進め、スズたちが生徒会室に来るまでに終わらなかった。本当に、黙っていれば素敵なんだけどな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベッドに寝転んで、私は今日生徒会室でタカトシに言われたことを思いだしていた。

 

「『素敵な人』か……タカトシが私の事をそんな風に思っていたなんて……」

 

 

 強調するように「黙っていれば」と言っていたが、まぁそこらへんも照れ隠しなのだろう。

 

「だが、我が校は校内恋愛禁止だしな……」

 

 

 清く正しい付き合いなら問題ないのか? いやしかし、生徒会長と副会長が率先して校則を破るわけにもいかないし……

 

「おっと電話だ……はい?」

 

『もしもしシノちゃん? 私』

 

「おう、アリア。どうかしたのか?」

 

『シノちゃん、来月の事だけど、何か予定はある?』

 

「来月? ……あぁ、バレンタインか」

 

 

 毎年あげる側ではなくもらう側になってしまっているが、去年はタカトシに渡したんだよな……まぁ、萩村やアリアも一緒にだが……

 

「何か予定でもあるのか?」

 

『もし手作りするなら、出島さんがいろいろ教えてくれるって』

 

「出島さんが?」

 

 

 確かに、あの人は料理上手だし、お菓子においてもそれは変わらないだろう。

 

「だが、迷惑じゃないか?」

 

『大丈夫だよ~。スズちゃんやカナちゃん、サクラちゃんも呼ぶ予定だから』

 

「結構大所帯だな……しかも、誰にあげるか分かり切っているメンバーだな」

 

『仕方ないよ~。それだけ、タカトシ君は倍率が高いんだよ』

 

 

 客観的に見ても、タカトシと一番お似合いなのはサクラだと私でも思う。理由は簡単で、あの二人がツッコミであり、息があっているからだ。

 

『チョコ一つでタカトシ君が優劣をつけるとも思えないけど、少しは前進できるように頑張らないとね。このままじゃ、シノちゃんは何時まで経ってもタカトシ君の従者にしか思われないよ~?』

 

「あいつが主で私がメイドで、か……それはそれで悪くないシチュなんだが」

 

『奴隷メイドってやつ?』

 

「そうそう、それだ」

 

 

 結局、話は脱線して、最終的には調教されどこかの金持ちに売りさばかれる運命とか、そんな話になってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ兄のお陰で、私はクラスでもそこそこの成績を残すことが出来ている。もちろん、半分より上になることはないが、それでも自力で勉強しているよりもはるかにマシな結果だと言える。

 

「そこで、今年は頑張って、タカ兄にチョコをあげようと思うんだけど、マキはどうするの?」

 

『どうするって言われても……私もお世話になってるから義理チョコくらいは……』

 

「何時になったら告白するの? 中学の時から、来年は頑張るって言ってもう何年経ったのよ」

 

『そんなこと言われても……津田先輩にとって、私はアンタの友達でしかないんだからさ』

 

「だからこそ、妹の友達から親しい異性にステップアップしなきゃいけないんじゃないの? いつまでも妹の友達って地位で満足なの?」

 

『そりゃ、私だって……』

 

 

 このやり取りも何回目になる事やら……バレンタインだけでなく、タカ兄の誕生日やクリスマス前になると、こういった会話をしているので、もう両手の指じゃ足りなくなったんじゃないかな。

 

「特に最近では、タカ兄の周りに魅力的な女性が増えてきたんだから、少しはアピール強めにしておかないと埋もれちゃうよ」

 

『うぅ……それは分かってるんだけどさぁ……』

 

「何?」

 

『津田先輩の中で、私は異性として見られてるのかなぁって……』

 

「どういうこと?」

 

『なんだか、妹のように思われてるような気がするんだよね……』

 

「妹なら、異性だからいいじゃん」

 

『……妹ってのは、身内だから異性の内に入らないでしょ?』

 

「えっ? 私はタカ兄の事、異性として見てるけどな~」

 

『それはアンタが変態だからでしょうが!』

 

 

 マキにツッコまれ、私はそんな事ないと言い返す。このやり取りも何回目になったか分からないなぁ……

 

「とりあえず、マキはもう少しアピールした方が良いよ」

 

『コトミは自重した方が良いと思うわよ……』

 

「そんな事ないって。これでも十分自重してるから」

 

『それで……相変わらず酷いわね』

 

「フッ、褒め言葉として受け取っておこう」

 

 

 マキに呆れられたようだけど、これで少しはマキも前進しようって考えるよね。友達として、一応応援してるんだからね。




全員やってたら数回このネタになっちゃいますし……

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