桜才学園での生活   作:猫林13世

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情報収集能力だけは褒められるな……


桜才新聞特別号

 バレンタインが終わり、次の週には新聞部が特集を組んでいた。内容は、学園の中で誰がどのくらいチョコを貰ったかという企画だった。

 

「こんなの、何処で調べたんでしょうね?」

 

「さぁな。だが、畑の事だから結構正確な数だと思うぞ」

 

 

 調べ方は兎も角として、アイツは結構正確な数字を叩きだすからな……本当に、調べ方は兎も角として、その執念は尊敬に値する。

 

「えっと……凄いですね、シノ会長。女子なのに二位ですよ」

 

「これは喜べばいいのか? それとも悲しめばいいのか?」

 

「どうでしょうね……」

 

 

 無理にでも盛り上げようとしてくれたタカトシだったが、私の雰囲気を感じ取り首を傾げて視線を逸らした。そもそも、女子なのにランクインしてる事自体おかしいと思うのだが。

 

「てか、一位はお前か。さすがモテ男だな」

 

「本当に、何処で数えてたんでしょうね……」

 

 

 私の数倍は貰っているタカトシだが、どうやらその数はほぼ正確なようだ。てか、これだけのチョコを食べるのは大変ではないのだろうか……私ですら厳しいというのに……

 

「なになに? 渡した主な有名人……だと?」

 

 

 タカトシの欄には、渡した相手の名前も書かれており、そこには私やアリア、萩村といった生徒会メンバーや、五十嵐や三葉といった桜才学園在籍の女子、挙句の果てにはカナやサクラといった英稜学園の生徒の名前まで書かれていた。

 

「何処で調べたんだ、こんなの……ん? 情報提供津田コトミ?」

 

「アイツ、何でそんな協力をしてるんだ?」

 

 

 ポケットから携帯を取り出したタカトシ。恐らくコトミに電話するのだろう。

 

「もしもし、コトミか? お前、新聞部の畑さんに協力して、何を貰ったんだ? ……そうか。家に帰ったら説教だな」

 

 

 電話越しでもタカトシの威圧感が通じたのか、コトミは素直に白状したらしい。だが、説教で済むあたり、大した報酬はもらってないのだろう。

 

「さてと、それでは会長。俺はこっちなんで」

 

「ああ、午後も授業頑張ろう」

 

 

 昼休みも終わりに近づいたので、タカトシは教室へ戻っていった。さてと、私も教室に戻るとするかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室に戻ってきた途端、クラスメイトの男子から鋭い視線を向けられた。

 

「何なんだ、いったい……」

 

「アンタ、桜才新聞読んでないの?」

 

「ああ、あのランキングか? さっき廊下に貼ってあるのを見たけど……それが?」

 

「つまりね、貰えなかった男子の僻みだよ」

 

 

 轟さんが身もふたもない言い方をしたが、なるほどそう言う事か……てか、貰えれば良いというわけではないと思うのだが……

 

「それにしても、凄い数貰ってたのね、アンタ」

 

「お返しが大変だけどな」

 

 

 それ目的ではないのだろうが、返さないとこっちの気が済まないからな。手作りの人には、ちゃんと手作りで返した方が良いのか、それとも市販のもので良いのか……こういうことを相談出来る相手がいないからな……

 

「参考までに、萩村はお返し、何が良い?」

 

「別に何でもいいわよ。そもそも、それが目当てじゃないんだから」

 

「そうか……でも、貰ったからには何か返さないと。気持ちを渡せない以上、何か必要だろ?」

 

 

 誰かを好きになっていれば、その人以外のモノはお断り出来たのだろうが、生憎と特定の誰かを好きになっていないので、断る口実が無かったのだ。

 

「アンタの気持ちを受け取れるのなら、それに越したことはないんだけどね」

 

「悪いな」

 

「良いわよ別に」

 

 

 萩村の答えでは参考にならなかったが、やはり何でもいいのだろうか? 後でもう二、三人くらいに聞いてみるかな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後の風紀委員本部。私は今、一人でさっきのタカトシ君からの質問の意図を考えていた。

 

「『お返しは何が良いか』か……タカトシ君って、ちゃんとそう言う事を考えてるんだ……」

 

 

 義理堅い人だから、貰ったからにはお返しをしなければいけないとでも考えてるんだろうな……別にそれが目当てじゃないと分かってるだろうけども、きっと割り切れないのだろう。

 

「でも、物凄い数貰ってるわけだし、全員にお返ししてたら大変よね」

 

 

 たとえ駄菓子のアメだとしても、あの数を揃えるのは中々大変な事だと思う。ましてやこの学園内だけではなく、英稜高校の女子生徒からも貰っていたり、バイト先の常連さんからも貰っているとかいないとか……畑さんの取材内容からの情報なので、何処までが事実か分からないけど、それなりには貰っているのでしょうね。

 

「分かっていたとはいえ、競争率は凄い事になってるわね……」

 

 

 この学園だけでも勝てそうに無いのに、他校の女子やバイト先の常連など、私が顔も知らない相手までライバルとなるのだ。仮に、あの数が正確で、全て本命チョコだとしたら、それこそ国家試験レベルの倍率になる。むしろそれ以上ともいえるだろう。

 

「何やらアンニュイな風紀委員長を発見」

 

「畑さん!? 何処から入ってきたのよ!」

 

 

 ドアが開いた音がしなかったので、多分普通には入ってこなかったと思うのだけど……

 

「そんなことはどうでも良いのよ。そんなに好きなら、渡す時に告白すればよかったのに」

 

「な、なによいきなり……」

 

「貴女がムッツリなのは周知の事実。毎晩津田副会長で発散してるのも――」

 

「変な事言わないで!」

 

 

 畑さんが現れた事で、少しは別の事が考えられるようにはなったけども、それでも私の頭の中はタカトシ君の事でいっぱいだった……これだけ想ってるのだから、畑さんが言ったように渡す時に告白すればよかったかな……でも、振られたら怖いし……




直接聞くのはダメだろ……

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