桜才学園での生活   作:猫林13世

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男にはあまり関係ない言葉ですね


門限

 生徒会室に入ると、何やら萩村が刺繍をしていた。良く見るとジャージに何かを縫っているようだが、あれは何をしているのだろうか?

 

「スズ、何してるの?」

 

「ジャージを新調したから、名前を縫ってるのよ」

 

「なるほど」

 

「これなら、どこかに置き忘れてもすぐに分かるでしょ?」

 

 

 縫い終わった名前を見せて胸を張る萩村だが、正直なところ、萩村のジャージなら名前が書いてなくても分かると思うのだが……

 

「スズちゃんのジャージなら、サイズで分かると思うけどな~」

 

「先輩だけど張り倒す!」

 

「アリア!」

 

 

 私は、失礼な事を言ったアリアに一言言ってやるために大声を出し萩村を大人しくさせた。

 

「なーに、シノちゃん?」

 

「今のは失礼だと思わないのか?」

 

「会長……」

 

 

 萩村が感動してるようで、尊敬のまなざしを渡しに向けている。

 

「だいたいだな、私が思い止まった事をあっさりと口に出すんじゃない!」

 

「アンタも思ってたのかー!」

 

「しまった! つい口を滑らしてしまった」

 

「……早いところ会議を始めましょうよ」

 

 

 タカトシのツッコミのお陰で、萩村は何とか冷静さを取り戻したようで、所定の位置に腰を下ろした。私とアリアもとりあえず腰を下ろし、生徒会会議を始める事となった。

 

「まず初めに、保健委員からの報告ですね。包帯の在庫が無いので、至急補充したいとの事です」

 

「随分と消費が激しいな。先月も買ったような気がするんだが……」

 

「怪我人が多いのかな~?」

 

 

 包帯の使い道など、確かに患部の固定などしかないからな……いや、待てよ?

 

「もしや!?」

 

「シノ先輩?」

 

「貧乳だと思われる者は皆、サラシを巻いてるだけなのでは!?」

 

「……ちょっと、落ちつこうか」

 

 

 私が落ち込んだのをツッコミで冷静さを取り戻させる辺り、さすが私の右腕だな。

 

「えっと次ですが……あれ? あの資料は何処だ?」

 

「何だ、見つからないのか?」

 

「いえ……ああ、ありました」

 

 

 バインダーをめくりようやく見つけたタカトシに、私は一つアドバイスをすることにした。

 

「付箋を使ったらどうだ? あれがあれば開きたい場所が一目で分かるだろ」

 

「何時もはちゃんとファイリングしてるんですが……なんか順番が変わってる気がしまして」

 

「ごめんなさい。この前そのバインダー落としちゃって、中身がバラバラになっちゃったの。ある程度は元に戻せたんだけど、やっぱり少しずれてたのね」

 

「ああ、そう言う事ですか……いえ、気にしないでください」

 

 

 どうやらアリアが中身をぶちまけたらしく、それでタカトシが見つけられなかったようだ。

 

「でも、確かに付箋は便利そうですね。帰りに買いに行くか……」

 

「付箋は便利だぞ~。見たいページが一目で分かるし、片手しか使えない自家発電の時も見たいページがすぐに分かる」

 

「それは完全に蛇足ですね。後、その手帳付箋だらけで、何処に何が書いてあるのか本当に分かってるんですか?」

 

「分かってるさ! えっと……あれ? ここは何が書いてあるんだっけか……」

 

 

 付箋だらけになっていたため、今度整理しようと思っていたのをすっかり忘れていたな……付箋に内容を書いておかないと、これじゃあ意味がなさそうだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 途中からふざけてしまった為、タカトシ以外の役員は残業をしなければならなくなってしまい、私は門限を過ぎてしまったのだった。

 

「大丈夫か? もしかして怒られるか?」

 

「もしそうなら、私たちからも事情を説明するよ~?」

 

 

 会長と七条先輩が心配そうに聞いてくれるが、正直言ってそっちの心配は皆無だった。

 

「怒られはしないですが、何故かうちの親は赤飯を炊くんですよね……」

 

「大人になったと思われるのか……」

 

「迂闊に門限破れないね~」

 

「そうなんですよね……」

 

 

 赤飯でも良いのだが、そう何回も誤解されるのは避けたいし、そもそも相手などいないのだから、紹介しろと言われてもどうする事も出来ないのだ。

 

「門限を破る=膜を破られたと取られるのか……なかなか厳しい家だな」

 

「そうだろうか……」

 

 

 むしろ、そんな思考回路なんて焼き切れてしまえと思うのだが、会長からすれば厳しい事らしい。

 

「まぁ、スズちゃんの膜を狙った変質者は、たくさんいるでしょうからね」

 

「最近ロリコン化が進んでるらしいからな」

 

「ロリって言うな!」

 

 

 会長たちと別れ、家に着いたのは門限の一時間後。案の定赤飯を炊いて待ってた母親に出迎えられ、これからは門限を破らないように気を付けようと決意したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ兄が大量に貰ったチョコで、我が家の冷蔵庫のスペースは埋まっている。それでも問題なく食材を取り出し、美味しい料理を作ってしまうあたり、我が兄ながら優良物件だなーと思う。

 

「お前もたまには手伝えよな」

 

「だってー、私が手伝ってもタカ兄の仕事が増えるだけだよ~?」

 

「……年頃の女子として、このままでいいのかとか悩まないのか?」

 

「大丈夫だよ。私はやれば出来る子なんだから!」

 

 

 自信満々に胸を張り、タカ兄に向けてピースサインを出した。それを見たタカ兄は、盛大にため息を吐いたのだった。

 

「頼むから、もう少し頑張ってくれ」

 

「これ以上頑張るには、お小遣いをアップしてもらうしか……」

 

「むしろカットされないように頑張れよな? そろそろ期末試験も近いんだから」

 

「タカ兄……その単語は言わないお約束じゃないか……」

 

 

 聞きたくもない単語を耳にしたため、私は一気に萎れてテーブルに突っ伏したのだった。

 

「万が一留年などしようものなら……」

 

「ヒィ!? が、頑張るからその顔止めてってばー!」

 

 

 タカ兄に脅され、私はやりたくはないけども勉強を頑張ろうと心に決めたのだった。




スズ母の思考はよくわからない……

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