桜才学園での生活   作:猫林13世

224 / 871
投降忘れてた……


四月バカ

 四月一日ということで、私は生徒会メンバーを驚かす為に昨日用意したパットを仕込み生徒会室へと入る。

 

「やあ、おはよ――」

 

「シノちゃん、私たちお付き合いする事になりました」

 

「なにー!? それは本当か!?!」

 

「嘘だよ~。シノちゃん騙された~!」

 

「くっ、くそぅ!」

 

 

 まさかそんな嘘を吐いてくるとは……アリアにしてやられたな。

 

「あの、その為にわざわざ呼び出されたんですか?」

 

「もちろん、仕事もあるぞ! だが、せっかく嘘を吐いていい日なんだから、嘘を吐いたほうが楽しいだろ?」

 

「そんなものですかね……」

 

 

 ため息を吐きながら、タカトシは書類に目を通し始める。てか、私のこの格好に対するツッコミは無いのか? 無視なのか?

 

「ところでシノちゃん、その胸、どうしたの? ついに成長期に入ったの?」

 

「……残念ながらパットだ」

 

「分かってたけどね~」

 

「萩村、アリアがいじめる!」

 

「……何で私なんですか」

 

 

 だって、無い者同士……いや、タカトシにこの手の泣き言を言っても意味ないからな。

 

「書類整理も良いが、今から見回りに行くぞ!」

 

「見回りですか? 先ほど、カエデ先輩がしていたようですが」

 

「風紀委員だけに任せておくわけにはいかないだろ? 我々生徒会もしっかりと見回りをしておかなければならない」

 

 

 長期休暇中とはいえ、学園内に不審物を持ち込む輩が皆無というわけではないのだし、五十嵐は男子が多そうな箇所は避けるだろうしな。

 

「では、出発だ!」

 

「その前にシノちゃんはトイレでパットを抜いてきた方が良いよ~」

 

「そうだな……」

 

 

 いつまでもこんなに入れていたら動きにくいし、何より笑いが取れなかったボケを永遠に続けるのもな……せっかく自虐ネタに走ったというのに、アリアにカウンターを喰らうとは思ってなかったな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天草会長が合流し、私たちは中庭を見回ることになった。

 

「中庭ってあんまり来たことないな」

 

「そうなの? 柳本とかはよく来てるみたいだけど」

 

「そうなんだ。あんまり誘われないからな……」

 

 

 セリフだけ聞くと、タカトシがボッチみたいだけど、実際は中庭でいかがわしい本でも読んでるから、生徒会役員であるタカトシは誘ってないだけなのだろうな。

 

「おっ、あの木陰、怪しいな」

 

「どこ~?」

 

「やはり、あったな」

 

「トレジャーハンティングだね!」

 

 

 どうやらいかがわしい本を見つけたようで、会長と七条先輩は意気揚々と検閲に入った。

 

「あんな本読んで、何が楽しいんだか……」

 

「アンタは興味なさそうよね」

 

「一般の高校生男子よりは、興味薄いと思う」

 

 

 そう言ってタカトシは、池に視線を向けた。

 

「あっ、亀いるんだ」

 

「知らなかった……って、そうか。アンタはあまり来ないんだったわね」

 

 

 たまに私は訪れるので、この池に亀がいる事を知っていた。

 

「ところで、亀って芸覚えるのかな~?」

 

「何時の間に……それで、芸って何を覚えさせるんですか?」

 

「チンチン」

 

「亀だけにな!」

 

「……何であんなに笑ってるんだ?」

 

 

 お腹を抱えて笑っている会長と七条先輩を冷めた目で見つめながら、タカトシが首を傾げた。

 

「私に聞かれても知らないわよ……」

 

 

 理由は分かってるけども、私もタカトシも理解出来ないふりでその場を乗り切ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新入部員が来てくれたお陰で、我がロボット研究部は正式に部として認められた。

 

「これで部費もアップ! 欲しかったパーツも買えるし、大会に参加する事も出来るかもしれない!」

 

 

 嬉しいことだらけで、私は教室で舞い上がっていた。

 

「ネネ、落ちついて。スイッチ切って」

 

「おっといけない」

 

 

 舞い上がり過ぎてスズちゃんにツッコまれてしまった。

 

「オフっと」

 

「そっちのスイッチも入ってたのかよ!」

 

「まぁまぁ。それよりも、部員が増えたことで作りたかったものが作れるようになったので、今度大会に参加しようと思ってるんだ」

 

「そうなの? 後で見に行っていい?」

 

「もちろん!」

 

 

 一旦スズちゃんと別れて、私は部室でロボットの作成に勤しむことにした。

 

「えっと、このパーツがこっちで、このパーツは……」

 

 

 熱中し過ぎたのか、気づいたらスズちゃんたちが部室に来ていた。

 

「凄い集中力だな」

 

「好きな事ですし、熱中しちゃうのも仕方ないと思います」

 

「そうだな! ところで、その新入部員たちはどうしたんだ?」

 

「今日は初日ということで、顔合わせだけして帰りました。私はこの子の作成が途中だったので」

 

 

 本当は顔合わせだけして終わりだったのだが、どうしても途中にしておくのが気持ち悪かったので、私だけ残ったのだ。

 

「そうなんだ。ところで、これはもう完成してるんですか?」

 

 

 津田君が私のロボットを眺めながら問いかけて来る。

 

「ううん、まら出来てないんですよ」

 

「……まら?」

 

「きっとまだを噛んだのよ……」

 

 

 私の返事に、津田君とスズちゃんが小声で何かを話していたが、私の耳にはその会話は入ってこなかった。

 

「それでは、あまり長居をしても邪魔になるだろうし、我々はお暇するとしようか」

 

「そうだ! 轟さん、コレ、私が見つけた玩具。かなり強力よ」

 

「本当ですか! 是非試してみますね」

 

 

 七条先輩に新たな玩具を紹介してもらい、私のテンションは更に上がった。

 

「……大丈夫なのか、この部は」

 

「大丈夫なんじゃない……いや、根拠はないけど……」

 

 

 引き攣った顔で津田君とスズちゃんが話してたけども、私はその事は気にせずに作成に戻ったのだった。




次回はいつも通り金曜日に……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。