桜才学園での生活   作:猫林13世

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コトミは純粋に学力不足でしょうね……


コトミ・トッキーの為の勉強会 その1

 私とトッキーの為に、桜才学園生徒会メンバー及び英稜高校生徒会の二人が我が家にやって来た。

 

「本日は私とトッキーの為にお集まりいただき、感謝いたします」

 

「何だコトミ。随分と丁寧じゃないか」

 

「さすがに不甲斐なさを感じているのです」

 

 

 タカ兄に面倒を見てもらえなくなった途端に補習なのだから、どれだけ私の実力が不足しているかはっきりとしたのだ。シノ会長やアリア先輩には手伝ってもらったけど、どうしても脱線してしまうので元々成績の良い二人とは違い、私には勉強の時間が足りなかったのだ。

 

「それではさっそく勉強を教えようと思うのだが、効率を考えて、それぞれの得意分野を教える事にしよう。ちなみに私は数学だ」

 

「私も数学かな~」

 

「私も数学なのですが」

 

「あら? 私も数学が一番得意なのですが」

 

「私も数学……」

 

 

 なんと五人とも得意科目が数学と言う事で、いきなり問題が発生してしまった。

 

「ちょっと待っていろ。誰が一番かテストして決めるから」

 

「いきなり躓いてるな……」

 

「あっ、タカ兄」

 

 

 買い出しに出かけていたタカ兄が帰ってきた途端、五人が一斉に振り返った。

 

「お邪魔しているぞ」

 

「すみませんね、コトミの為に」

 

「気にしないで~。可愛い後輩の為だもん」

 

「報酬として、タカ君の美味しい料理が食べたいです」

 

「まぁ、それくらいならいくらでも。それで、結局誰がどの教科を担当するか決めるんですか? それとも二手に分かれてコトミと時さんに教えるんですか?」

 

 

 タカ兄が来た途端にまとまりを見せる先輩たちに、トッキーが呆れたような視線を向けていた。声に出さなかったのは、お世話になるからだろうか。

 

「それじゃあコトミの担当はシノ先輩、アリア先輩、スズの三人。時さんは俺とカナさんとサクラさんが担当します。と言っても、俺は家事だったりをしてるので片手間ですがね」

 

「何でタカ兄は私じゃないの!?」

 

「お前、俺に甘えるなと言われたばっかだろ?」

 

「そうでした……」

 

 

 家事とかはまだまだ甘えるしかないけど、せめて勉強くらいはとお母さんに言われたんだった……だから補習になったんだけどね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシさんが部屋の掃除をしたり、洗濯をしたりしている間に、私たちは時さんの勉強を見ていた。

 

「トッキーさん、そこ違いますよ」

 

 

 いつの間にかカナ会長は時さんの事を愛称で呼んでいたりしますが、基本的には問題なく勉強は進んでいます。一方のコトミさんは、先ほどから泣きそうになりながら勉強を進めている様子……いったい何があったというのでしょうか?

 

「何で一緒にふざけてたシノ会長たちはトップクラスで、私は補習なんですか!」

 

「それは普段から会長たちが勉強してるからよ」

 

「……はい、大人しく勉強します」

 

 

 萩村さんに正論を言われ、コトミさんは大人しく勉強を再開しました。

 

「それにしても、トッキーさんは普通に勉強出来ているのに、どうして補習なのでしょうか?」

 

「トッキーはドジっ子だからな! 解答欄をズラしたりして点数を落としているんだろう!」

 

「それに、今回はタカトシ君の援護を受けられなかったから、付け焼刃も効かなかったんじゃない?」

 

 

 同級生の子に勉強を見てもらってた気もしますが、やはりタカトシさんと勉強したときとでは効率が違うのでしょうね。

 

「ほら、また間違ってるわよ」

 

「うわーん! シノ会長、助けてください」

 

「そんなこと言われてもな。我々もお前に勉強させるために来てる訳だし」

 

「逃げればその分お小遣いと自由時間が減っちゃうんじゃない?」

 

「頑張ります……」

 

 

 七条さんの脅しに屈したのか、コトミさんも黙々と勉強を続ける事にした。それにしても、本当にタカトシさんと血がつながっているのかと疑いたくなるくらい、中身が正反対な兄妹ですね……方や真面目で片や不真面目……まぁ見た目が似てるので、間違いなく血縁なんでしょうけどもね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正午になり、いったん休憩と言う事で、私たちは兄貴が用意してくれた昼食を摂ることにした。

 

「昼はオムライスか」

 

「卵が安かったんで」

 

「タカ兄のオムライスは絶品ですよ~」

 

 

 昼飯と言う事で、コトミのテンションが回復しているが、さっきまで死にそうだった奴と同一人物とは思えない変わりっぷりだな……

 

「サラダもちゃんと食べろよ」

 

「分かってるって」

 

「それにしても、この人数分を用意するのは大変じゃなかったですか?」

 

「もう慣れてきましたので大丈夫です」

 

「申し訳ないです……」

 

 

 兄貴がこの人数の食事を用意するのに慣れてきた原因の一端は、間違いなく私だ。私が夏休みや冬休みの宿題を忘れてたり、テスト前にこの家に泊まって勉強会を開いたりで、結構な人数がこの家に泊まったりする。その時食事を用意してくれているのが兄貴なのだ。

 

「別に時さんが謝る事じゃないよ。それより、午後も勉強しなきゃいけないんだから、しっかりと栄養補給しておいてね」

 

「はい」

 

「おや~、トッキーもタカ兄には素直なんだね」

 

「ウルセェ! てか、お前は何でそんなに元気なんだよ」

 

「タカ兄の愛の詰まった料理のお陰で、私は体力を回復出来るのだ!」

 

「RPGのやり過ぎだ。馬鹿な事言ってないで、午後は真面目にやれよな」

 

「午後はって何さ! 午前もしっかり勉強したもん!」

 

「なら、即席でテスト作ってやるからやってみるか?」

 

「……午後は文句言わずに勉強する所存であります」

 

「よろしい」

 

 

 兄貴に反論しても敵うはずもないのに、こいつは本当に懲りないな……




トッキーならありえるだろうな……

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