桜才学園での生活   作:猫林13世

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なんだかんだで優しいタカトシ


コトミ・トッキーの為の勉強会 その2

 午後も勉強を続け、コトミとトッキーは死にそうになりながらも問題を解き続けた。

 

「ふぇ~……もう死にそうだよ……」

 

「今回だけはコトミに同意だぜ……」

 

「情けないぞ、二人とも!」

 

「そうですよ。勉強は明日も行うんですから」

 

 

 二人の追試は明後日の月曜日。つまり、明日の日曜日もみっちりと勉強する事が出来るのだ。

 

「今日これだけ勉強したんですから、明日はしなくてもいいんじゃないですか~?」

 

「なら、このテストで七十点以上取れたら明日は休んでいいぞ」

 

 

 いつの間に作ったのかというツッコミを入れたくなるほど用意が良いタカトシだったが、こいつの事だから最初から用意していたのではないかと思ってしまうのが不思議だ。

 

「えぇ~! これだけ疲れ果てている妹相手に、よくテストなんて用意できたね」

 

「別に解かなくてもいいぞ? その代わり、再試で赤点なんてなったら容赦しないからな」

 

「何してるの、トッキー! 急いで問題を解かないと!」

 

「……お前、ホント兄貴に勝てないよな」

 

 

 トッキーのツッコミにコトミは反応しなかった。それもそのはずで、コトミは既に集中してテストを受け始めていたのだった。

 トッキーもコトミの姿を確認してテストを解き始め、タカトシが時計を見ながら二人の答案に視線を向ける。

 

「そのペースなら、三十分もあれば終わるな。夕飯の支度をしますので、監督はお願いします」

 

「任せろ!」

 

「あっ、私も手伝いますよ」

 

「いえいえ、サクラさんは休んでてください。他の皆さんも、今日はゆっくりしてくださいね」

 

 

 そう言い残して、タカトシはキッチンへと消えていく。私たちに手伝う事を禁じたのは、情けない妹の所為で我々の時間を奪ってしまったとでも思っていたのだろうか……なら、勘違いだと教えてあげたい。

 

「シノちゃん、今はタカトシ君に近づかない方が良いわよ」

 

「そうですよ、シノっち。任された以上、しっかりと監督しなければいけませんから」

 

「そうだな。それに、私の勘違いかもしれないからな」

 

 

 タカトシが私たちに気を遣ったのかは分からなかったが、まぁタカトシの手伝いをしようとしても、自信を失くすだけだからな……

 

「残り十五分」

 

「タカトシさんの計算通りに進んでますね」

 

 

 萩村と森がコトミとトッキーの答案を覗き込み、このままのペースで行けば三十分も必要無く終わるだろうと確認し、タカトシの凄さを再確認していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 料理を作り終えでリビングに戻ると、何故か泣きそうなコトミと時さんがこちらに駆け寄ってきた。

 

「何だ? 六十五点だったのか?」

 

「何で分かったの!?」

 

「もっと低い点だったら絶望してただろうし、合格点以上だったらそんな表情はしないだろ?」

 

「……さすが、長年コイツの兄貴をしてきただけありますね」

 

「不本意だけどね」

 

 

 時さんの様子から察するに、彼女はしっかりと七十点以上取れたようだな。落ち着いて解答すれば、時さんは学年上位を狙えるポテンシャルは持ってるからな。

 

「タカ兄、明日は手加減してもらえないかな?」

 

「……元々あのテストは、六十点以上取れれば再試に合格出来るレベルで作ったんだ」

 

「えっ!? じゃあ何で七十点以上が合格なの!?」

 

「その方が確実だろ? お前だって塾通いは嫌だって言ってたんだし、もう少し頑張るんだな」

 

 

 コトミの横をすり抜けて、俺は料理を運んだ。

 

「さて、タカトシの部屋に泊まるヤツを決めるぞ!」

 

「あっ、やっぱり泊まるんですか……」

 

 

 勉強を教えるだけにしては荷物が多いと思ったが、やはりそんな腹積もりだったのか……まぁ、今回は世話になってる分文句も言えないが……

 

「コトミちゃんは自分の部屋、トッキーさんはリビングで決定ですし、コトミちゃんの部屋に二人、リビングに二人、タカ君の部屋に一人ですね」

 

「今回は公平を期すために、じゃんけんで決めようではないか! 勝った人間からこの選択肢の中から泊まりたい場所を選んでいくシステムだ!」

 

「つまり、最初に勝たないとタカトシ君の部屋には泊まれないって事ね!」

 

「圧倒的! 圧倒的にサクラっちが不利ですね」

 

「じゃんけん弱いですからね、私は……」

 

 

 サクラさんが自分の掌をじっと見つめる……いや、手を見てもじゃんけんは強くならないと思うんだけどな……

 

「ではいくぞ! 最初はグー!」

 

「「「「「じゃんけんぽん!」」」」」

 

 

 この時、まさか一回で俺の部屋に泊まる人が決まるとは思っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 じゃんけんの結果、タカ兄の部屋に泊まる権利を手に入れたのはサクラ先輩だった。普段は最後まで負け残るサクラ先輩だが、今日だけは一人勝ちをしたのだ。

 

「やっぱり欲が出ると負けるんですかね、シノ会長?」

 

「そんなの知らん。とにかく、コトミは教科書のここからここまでを終わらせなければ寝られないと思え」

 

「シノっち、最初から最後まではさすがに無理だと思いますよ」

 

 

 じゃんけんで負けたのがよほどショックだったのか、シノ会長はテスト範囲外まで私に勉強させようとする。てか、後半はまだ習ってないので解けないですよ。

 

「やはりサクラが数歩リードしてる感が否めないな……ましてアイツはタカトシとキスまでしてる事だし……」

 

「私の見立てでは、タカ君はサクラっちがお風呂に突撃してきてもやんわり注意するだけで済ませる感じですね」

 

「ちなみに、シノ会長やカナ会長が突撃したら?」

 

「即気絶でしょうね……私たちが」

 

「つまり、全裸の二人をタカ兄が視○するんですね!」

 

「……汚物を見るような目を向けられそうな予感しかしないのだが」

 

「……奇遇ですね、シノっち……私もです」

 

 

 二人の中のタカ兄って、そんなイメージなんだ……とりあえず、未来のお義姉ちゃん候補筆頭はサクラ先輩なんだな~。




じゃんけんもですが、くじも狙ってもいい結果には繋がらないですよね……

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