桜才学園での生活   作:猫林13世

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抱き枕カバーの裏表で決めるのは無いな……


高総体のポスター

 タカ君とサクラっちの作ってくれた朝ごはんを食べて、私たちは少しのんびりする事にした。食べてすぐ勉強しても頭に入りませんからね。

 

「シノっちは二人が調理してるところを見たんですよね? どう思いました?」

 

「悔しいが、今の私では太刀打ち出来ないと感じた。隣にいるのが自然過ぎて、二人が付き合っているという錯覚に陥ったくらいに、自然体で作業していた」

 

「シノちゃんもタカトシ君の隣にいる事自体は自然だと思うけどね」

 

「それが『異性として』ではなく、『会長・副会長として』なのが残念ですが」

 

 

 昨日コトミちゃんが言っていたように、シノっちとタカ君の関係は会長と副会長なのだ。異性として意識していないわけではないのだろうが、どうしてもタカ君はシノっちに対して会長に接する感じになってしまっているのだ。

 

「アリアっちは先輩後輩の域を抜けてませんしね」

 

「スズちゃんもクラスメイトって感じだもんね」

 

「……やはりサクラが数歩先を進んでる感じか」

 

「おやおや、三人ともお悩みですか?」

 

 

 私たちが揃ってため息を吐くと、コトミちゃんが話しかけてきました。

 

「コトミ、勉強はいいのか?」

 

「まだ食べたばっかですからね。それで、タカ兄とサクラ先輩の関係ですよね? この前より二人の距離は縮まってるように思えますね」

 

 

 そう言ってコトミちゃんが二人の方へ視線を向ける。確かにこの前よりも二人の距離が縮まっているようにも見えますね……

 

「このままだと、タカ君とサクラっちがお付き合いする事になってしまうかもしれませんね」

 

「肉体的距離も縮まってるし、もしかしたら昨日……」

 

「それは無いと思いますよ。タカ兄の部屋、イカ臭くなかったですし」

 

 

 いつの間に確認したのかは分かりませんが、妹のコトミちゃんが言うのだから間違いないでしょう。

 

「さて、そろそろ勉強を開始するか。昨日の段階で合格はギリギリだったんだから、今日は昨日の復習をしておけば問題ないだろう」

 

「さ、トッキーさんも始めますよ」

 

 

 いつまでも気にしてるわけにはいかないので、気持ちを切り替えて勉強を開始する事にしました。私たちが教えているすぐ傍で、タカ君は私たちの着ていた服や下着を洗濯し、顔色一つ変えずに干していたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ兄の力は借りずに、何とか補習に合格した私は、トッキーがいる柔道部に遊びに来ていた。

 

「トッキーも合格出来て良かったね」

 

「ほんとだよ。これ以上トッキーが部活に来なかったら、大会に間に合わないかと思ってたからさ」

 

「相変わらず部活中心の生活だよね、ムツミって」

 

 

 しばらく練習を見学していたら、生徒会のメンバーと畑先輩がやって来た。

 

「タカ兄、どうしたの?」

 

「高総体の広報ポスターのモデルをお願いしたいって、畑さんが」

 

「あれ? でもさっき恥ずかしいからって断ってた気が」

 

 

 三葉先輩が畑さんに頼まれてるのを偶然聞いて、そんなことを話してたように記憶してるんだけどな……

 

「だから生徒会に力添えをしてくれってさ」

 

「なるほど」

 

 

 確かにタカ兄に頼まれたら、三葉先輩なら断らないだろう。相変わらず策士ですね、畑先輩。

 

「では、さっそく試合をしてもらいましょう」

 

 

 いつの間にか話が進んでいたようで、三葉先輩とトッキーが本気で試合をすることになった。

 

「やっぱり柔道してるトッキーはかっこいいね、タカ兄」

 

「俺はあまり見た事ないが、確かに真剣な雰囲気は良いな」

 

「ところでタカ兄、補習も無事に終わったし、今度遊びに行っても良い?」

 

「追加の小遣いは無いからな」

 

「分かってます……」

 

 

 おねだりする前に断られてしまい、私はしょんぼりとしたままトッキーたちの試合を見学していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 たくさん写真を撮り、生徒会の皆さんの手伝いもあって最後の二枚まで絞り込めたのですが、どちらも甲乙つけがたいのですよね……さて、どうやって決めましょうか。

 

「皆さんはどちらが良いと思います?」

 

「これだけある中から最後の二枚に選ばれただけあって、どちらも良いんだよな」

 

「コイントスで決めちゃう? 表が出たらこっちで、裏だったらこっち」

 

「ですが、コインなんて持ってませんよ? 財布は生徒会室ですし」

 

 

 困りましたね……コイントスはいい案だと思うのですが、肝心のコインが……あっ!

 

「抱き枕カバーの裏表で決まりませんかね?」

 

「何故コインは無く、そんなものがあるんだよ」

 

「試しに作ってみたんですよ。表は会長の制服バージョンで、裏は……」

 

「おい! 何故私がモデルなんだ! って、この絵はなんだ、けしからん!」

 

 

 会長に没収されてしまい、これでいよいよどうやって決めるかが難しくなってしまいました……

 

「てか、コインなら私持ってるけど」

 

「おお、さすがトッキーさん。ではさっそくトスをお願いします」

 

 

 柔道部にも参加してもらってたのですが、本人と言う事あってあまり積極的に写真選びに参加してくれませんでしたが、ここで役に立つとは。

 

「あっ……」

 

「まさかのドジっ子発動とは……」

 

 

 コインを取り損ねて、何処かに弾いてしまったトッキーさん……さて、何処に行きましたかね……

 

「ありました。もう一度トスしますね」

 

「お願いします」

 

 

 津田副会長がコインを見つけ、そのままトスを行いました。トッキーさんとは違い、津田副会長はしっかりとキャッチし、そしてどちらの写真を使うかが決定したのでした。




新聞部の活動が過激になって来てる……

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