桜才学園での生活   作:猫林13世

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稽古事は多いですが、彼女の趣味って何だ?


アリアの趣味

 五月も終わり、衣替えを済ませたので、そろそろ新しい水着でも買いに行こうかな。

 

「シノちゃん、今度のお休み、お買い物に行かない?」

 

「ナイスタイミングだ、アリア! ちょうど新しい水着が欲しいなと思っていたところなのだ」

 

 

 新しいものを買う事は決めているのだが、色はどうしたものか……前と同じで赤でいくか、それとも別の色でいくか……

 

「白は膨張色で、他のより大きく見えるのよ。だから碁石も白の方が黒より小さく作られているの」

 

「そういえば、そんなこと聞いたことあるな」

 

「よし、色は白に決まりだな!」

 

「「えっ? 何の話ですか」」

 

 

 私たちの会話を聞いていなかったタカトシと萩村は、そろって首を傾げた。

 

「こちらの話だ。しかし、助かったぞ」

 

「はぁ……」

 

「ところで、アリア先輩は手相の本なんて見て何をするつもりですか?」

 

「私ってあまり趣味が無いから、手相でも勉強しようかなって。タカトシ君、手相見せてくれる?」

 

 

 そう言ってアリアがタカトシの手を取り、じっくりとタカトシの手相を見始める。

 

「先輩、私のも見てもらえますか?」

 

「いいよ~」

 

 

 嫉妬したのかどうかは分からないが、萩村がアリアとタカトシの間に入って手を差し出した。

 

「スズちゃん、生命線長いね~」

 

「それは知能線です」

 

「あれ~?」

 

「ちなみに、生命線が短くても知能線が長ければ長寿でいられます」

 

「そうなんだ~」

 

「どっちが見てるんですか……」

 

 

 タカトシがツッコミを入れたように、これでは萩村がアリアの手相を見てるようじゃないか。

 

「七条先輩、そんな本何処から持ってきたんですか?」

 

「物置から出てきたんだ~。読んでみたら面白くって、それでかじってみたんだ~」

 

「そうなんですか」

 

 

 かじってみたか……

 

「タカトシ」

 

「何ですか?」

 

「『尺八をかじる』って言うと、妄想が膨らむな」

 

「何の話ですか?」

 

 

 そうだった、こいつは淫語に疎いんだったな……普通の男子高校生なら興奮したに違いないのに……

 

「それで、スズは何時まで手相の説明をしてるんだ?」

 

「思ってたより七条先輩が本気だったから」

 

「スズちゃんに教わったから、もっとちゃんと勉強しようと思ったんだ~」

 

「そうですか。頑張ってくださいね」

 

「うん! もう少し上達したら、また見せてね」

 

「お願いします」

 

 

 アリアが上達したら、私も見てもらおうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もうすぐ高総体と言う事で、私は応援も兼ねて柔道部を訪れていた。

 

「スズちゃん、いらっしゃい」

 

「かなり気合が入ってるわね」

 

「英稜の柔道部がかなり強いみたいだから、こっちも負けてられないんだ~」

 

「そうなんだ。頑張ってね」

 

「うん! 当日も応援、お願いね」

 

 

 ムツミたちを激励して、私は生徒会室へと向かう事にした。

 

「あれ、会長とタカトシだ」

 

 

 生徒会室に向かう途中で、私は会長とタカトシの姿を見つけ、咄嗟に隠れてしまった。

 

「(何で隠れてるんだろう、私……別に会長とタカトシは付き合ってるわけじゃないんだから、気を遣う必要は無いじゃない)」

 

 

 そう決心して私は二人に声を掛けようとした。

 

「あっ、生徒会の皆さん。何時もご苦労様でーす!」

 

「コトミ、目上の人に対しては『お疲れ様』よ。『ご苦労様』は失礼に当たるわよ」

 

 

 もっと言うのであれば、目上の人を労う事自体失礼なんだけどね。

 

「へー……下界ではそうなんですね」

 

「あんたも生粋の下界人だろ」

 

 

 コトミに注意しながら、私はしれっと二人に合流して生徒会室へやって来た。

 

「いよいよ来週から高総体が始まるな」

 

「今回も柔道部に期待だね~」

 

 

 会長と七条先輩が話してる柔道部から聞いた情報を、私は二人に教えてあげる事にした。

 

「それがですね、英稜の柔道部もかなり力を入れているようでして、ムツミたちもかなり苦戦するかもしれないとの情報が」

 

「そうなのか? まぁ、三葉たちもかなり研究されているんだろうな」

 

「そのようですね。まぁ、ムツミなら研究されても勝てそうですけどね」

 

「応援する側が油断してちゃ駄目なんじゃないか?」

 

「そうね。さっきも激励してきたんだから、私たちもムツミならって考えは捨てましょう」

 

 

 タカトシにツッコまれて、私はムツミに対する期待を高める事にした。

 

「ところで、さっきなんで隠れてたの?」

 

「特に意味は無かったけど、なんとなく話しかけにくかったのよ」

 

「そんなことあるの?」

 

「あんたと他の女子がいる所に遭遇すると、そう感じる事があるってだけよ」

 

「ふーん……」

 

 

 なんとなく疑われてる気もするけど、タカトシはそれ以上ツッコミを入れて来る事は無く、そのまま書類に集中していた。

 

「萩村、この領収書の整理を頼む」

 

「分かりました」

 

 

 会長から領収書を受け取り、私は自分の仕事をすることにした。

 

「高総体には我々生徒会も応援に参加するから、溜まっている仕事は今のうちに終わらせるぞ」

 

「おー!」

 

「気合いを入れるのは良いですけど、会長とアリア先輩も仕事してください」

 

「おぉ、すまんな。えっと、これは私が処理する書類だな」

 

「それじゃあ私はお茶を淹れるね~」

 

 

 七条先輩、それは仕事じゃないと思うんですけど……まぁ、七条先輩が淹れてくれたお茶は美味しいから、別に良いかな。




明晰夢でタカトシを開発……は趣味じゃないだろうし

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