桜才学園での生活   作:猫林13世

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皆必死になって試合してるのに、相変わらずの人たち


高総体 二日目

 高総体二日目、今日も応援の為に集まろうって話だったんだけど、珍しくタカトシ君がまだ来てないんだよね。

 

「すみません、遅れました」

 

「珍しいな、何かあったのか?」

 

 

 シノちゃんも珍しいと思ってたようで、タカトシ君に遅刻の理由を尋ねた。

 

「コトミの奴が朝からコーヒーをぶちまけてフローリングの掃除や、汚した服の洗濯などをしてました」

 

「さすが、主夫だな……そういう事情なら仕方ないな」

 

「おまけに、人の携帯にもぶっかけてくれたようで、連絡も出来ず……申し訳ありません」

 

「それは、お前でも防ぎようがないだろう……」

 

 

 携帯も壊れちゃったのなら、連絡が無かったのも頷ける。いくらタカトシ君でも、私たちの番号を覚えてるわけじゃないものね。

 

「それで、そのコトミは?」

 

「置いてきました」

 

「待ってよ、タカ兄~!」

 

「……今来ました」

 

 

 駅から全力疾走だったのか、コトミちゃんは汗を大量に掻いているんだけど、それ以上のスピードで走ってきたはずのタカトシ君は、まったく汗を掻いてないように見えるんだよね~。

 

「タカ兄、やっぱり部活やった方が良いって。その脚、絶対活かすべきだって」

 

「お前が家事をやってくれるなら、部活に時間を割くことも出来たかもな」

 

「家事が出来ない妹で申し訳ありません……」

 

 

 タカトシ君の嫌味に、コトミちゃんは素直に頭を下げるしか出来ないのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 畑さんに頼まれて、私たちはテニス部の試合を写真に収めるべく奮闘した。

 

「まさかスズ先輩じゃ一人で試合風景を写真に撮れないとは」

 

「あんたに言われたくないわよ……朝からタカトシに多大なる迷惑をかけ、挙句に携帯まで破壊したんでしょ?」

 

「タカ兄のも私のも、両方壊れてしまいました」

 

 

 どんだけの勢いでコーヒーを溢したのかしら……

 

「そのせいでタカトシが今いないんだからね?」

 

「はい、まったくもってその通りです」

 

 

 壊れた携帯を修理に出すべく、タカトシは会長たちに許可を取って携帯ショップへと走って行った。元々高総体の応援は強制ではないので、無理に来なくても大丈夫なのだが、タカトシに応援されれば実力以上を発揮出来る子がいるかもしれない、という理由で我々生徒会メンバーが応援する形になったのだ。そのタカトシが不在になったのが原因なのか、桜才学園テニス部は初戦で大苦戦を強いられたのだった。

 

「ところで、修理代ってどっちが出すの?」

 

「本当なら私が出さなければいけないのは分かってるんですが……あいにくの懐事情でして……」

 

「ますますタカトシに頭が上がらなくなるんじゃない?」

 

「もう、下げた頭が一回転して元の高さに戻ってそうですけどね……」

 

 

 どうやら自分でも迷惑を掛けているということは分かっているようね……分かっていてなお改善されていないのは問題だけど、理解していないという状況ではないので、多少は改善の余地があるのだろうな……

 

「そう言えばさっき、スズ先輩の携帯が鳴ってましたけど」

 

「そうなの? 喧噪の中で良く聞こえたわね」

 

「そりゃ、スズ先輩に踏まれてたので、すぐ耳元で鳴ってましたから」

 

「人聞きの悪い言い方をするな!」

 

 

 私はただ、コトミに肩車してもらってただけなのだ。だって、周りの人たちが邪魔で、私一人の力では写真を撮る事が出来なかったから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 携帯を修理に出し、代わりとなる携帯を受け取った俺は、急いで会場に戻ってきた。奇跡的にデータは生きていたので、それを移行してもらったお陰で連絡を取る事が出来、待ち合わせ場所を決める事が出来た。

 

「ほら、お前の」

 

「ありがとう、タカ兄。そして、ごめんなさい」

 

「修理代は後日小遣いから引いておくから」

 

「分割でお願いします……」

 

 

 情けないお願いだが、確かに一括で巻き上げるのも可哀想だな……この辺りが甘いと言われる理由なのだろうが、下手に小遣いを減らしておかしなバイトを始められるよりはマシだと考えているだけなんだけどな……

 

「それよりタカトシ、横島先生を見なかったか?」

 

「さっき見かけましたよ」

 

「それで、何処にいたんだ?」

 

「桜才の制服を着て他校の男子生徒を狙っていたので、着替えさせたうえで反省させるために帰しました」

 

「なるほど……道理で見かけなかったわけだ」

 

 

 あの人は何で教師を続けられているのかが不思議だよな……いい加減誰かが教育委員会に訴えた方が良いんじゃないだろうか。

 

「あれ? あの人、何か落としましたよ」

 

「エクステだね」

 

「エクステって、頭につける物だったんだ。道理で長い毛だと……お母さんに騙された」

 

「何してんだよ、ウチの家族は……」

 

 

 お母さんも、たまに帰って来てコトミにいらん事吹き込んでくなよな……

 

「コトミちゃんは生えていない事を気にしてるみたいだけど、天然物はマニアには堪らないんじゃない?」

 

「それはそうかもしれないんですけど、自分としては早く生えてほしいんですよね」

 

「生えてるとお手入れとか大変だから、私からすればコトミちゃんが羨ましいんだけどね~」

 

「アリア先輩の容姿で生えてなかったら、それこそマニア歓喜じゃないんですかね?」

 

「あまり阿呆な事言ってると、今すぐ修理代を徴収するからな。アリア先輩も、周りに人がいるんですから、いらん事話さんでください……」

 

 

 不純な気持ちで応援されても、選手だって嬉しくないだろうしな……




最後の一文に尽きる……

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