桜才学園での生活   作:猫林13世

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少しずつではあるが、進歩する二人


臨海学校の下見

 来年から実施される臨海学校の下見として、生徒会が派遣された。本当は横島先生が担当だったのだが、イマイチ信用出来ないという理由から、我々生徒会役員+一名が付き添う事になったのだ。

 

「何で出張費の管理が津田なんだ? 元々私が下見を担当するはずだったのだから、私が管理するべきだと思うんだが」

 

「それだけタカトシが信頼されているのと同時に、横島先生が信用ならないからでは?」

 

「何をっ! っと思ったが、確かに津田の信頼度の高さは私以上だしな」

 

 

 その理由で納得しちゃうのはどうかと思うが、確かに横島先生に出張費を持たせたら、一日で酒代に消えていくだろうしな……

 

「そんな細かい事はいいじゃないですか。せっかくの旅行なんですから」

 

「当然のようにいるのね」

 

「タカ兄がいない家で私が一人だったら、あっという間に散らかっちゃいますから」

 

「分かってるなら改善しろよな……」

 

 

 開き直ったコトミにため息を吐きながら、横島先生に視線を向けた。

 

「とりあえず、先生が号令をかけてくださいよ」

 

「そうか? なら、楽しむのは構わないけど、羽目を外し過ぎないように」

 

「じゃあさっそく、タカ兄、写真撮ってよ」

 

 

 コトミに頼まれ、俺はカメラを四人に向ける。横島先生はのんびりすると写真を断ったのだ。

 

「シノちゃん、その位置のピースはおかしいんじゃない?」

 

「おっと……つい癖で……」

 

「どんな癖だよ……」

 

 

 最近は多少マシになってきたが、やはり会長は会長だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ兄が横島先生を監視してくれてるお陰で、私たちは海で遊ぶことが出来る。

 

「下見とはいえ、海に来たなら楽しまなければな」

 

「今回は私たちだけだから、周りを気にする必要は無さそうね」

 

「だからと言って、羽目を外し過ぎるのは良くないですからね」

 

 

 生徒会の先輩たちが楽しんでるのに、タカ兄は一緒に遊ばなくていいのかな……あれ?

 

「シノ先輩、はみ出てますよ」

 

「おっと。スカートを穿いてて正解だったな」

 

「そういう問題ではないと思うのですが……」

 

 

 スズ先輩にツッコまれ、シノ先輩は慌てて下を直した。

 

「ところで三人方、タカ兄と何か進展ありましたか?」

 

「「「っ!」」

 

「何もなさそうですね」

 

 

 身体をビクッと跳ねさせただけで、私はタカ兄と何もなかったと理解した。最近はシノ先輩もアリア先輩も、下ネタを控えてるようで、タカ兄に突っ込まれる――おっと、ツッコまれる回数が減っている。

 

「スズ先輩も、タカ兄にツッコまれる回数が減ってますよね」

 

「私は元々ツッコまれる側じゃないわよ!」

 

「でも、身体的特徴を突かれるとキレますよね?」

 

「うぐっ」

 

「シノ先輩もですが、少し気にし過ぎだと思いますよ? 私だってまだ生えてないのが気になりますが、そこまで気にしてもしょうがないと思ってますし」

 

 

 天然物は好き嫌いがあるだろうし、その辺りは気になるけども、何時か生えると信じて待つしかないのだ。

 

「その点、アリア先輩は気にする箇所が無いですから羨ましいですけど」

 

「そんなことないよ~。私は逆に生えすぎの気がして心配なんだよね~。出島さんに相談しても、イマイチいいアドバイスがもらえなくて」

 

「アリアくらいが普通じゃないのか?」

 

「シノ先輩の方が生い茂ってますからね~」

 

「コトミ!」

 

 

 シノ先輩にツッコまれて、私は浜辺に逃げ出した。その後を会長とアリア先輩が追いかけてきたのだけど、何でアリア先輩まで追いかけてきたんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 浜辺で横島先生の監視をしているタカトシ君に、私は思い切ってお願いする事にした。

 

「ねぇ、タカトシ君。日焼け止めを塗ってくれないかな?」

 

「良いですよ」

 

 

 特に気にした様子もなくオイルを受け取ったタカトシ君だが、微妙に恥ずかしそうにしてるのは、私の体に興奮してくれてるって事かな?

 

「塗るのは構いませんが、ちょっと今更な気がしませんか? 既に海で遊んでたようですが」

 

「一応塗っておいたんだけど、背中にちゃんと塗れてない気がしてね。だからタカトシ君にお願いしようって」

 

「まぁ、そう言うことにしておきましょう」

 

 

 私の言い分に納得してないようだけど、タカトシ君はそれ以上追及してくることは無く、私はタカトシ君に背中を向けて寝転がった。

 

「うっかり触っても構わないよ?」

 

「しませんって」

 

 

 いきなりオイルを垂らすことはせず、タカトシ君はゆっくりと私の背中に日焼け止めを塗っていく。

 

「(タカトシ君に触られてるって思うと、思わず濡れてきちゃうな……でも、それを口に出すとまたタカトシ君に怒られちゃうし……)」

 

「別に怒ってませんが」

 

「っ!?」

 

 

 そう言えばタカトシ君は読心術が使えるんだっけ……じゃあ、心の裡にとどめただけじゃ意味がないのかしら。

 

「言葉にしないだけ進歩だと思いますが、一応男の前でそう言う事を思うのは止めた方が良いですよ」

 

「大丈夫、こんな事タカトシ君の前でしか思わないから」

 

「それもどうかと思いますが……一応俺も男なんですが」

 

「でも、他の男の子とは違うでしょ? 普通の子なら、こんな状況で勃たないわけないもの」

 

「……そういうところですって」

 

 

 結局呆れられちゃったけど、タカトシ君は最後まで日焼け止めを綺麗に塗ってくれた。

 

「お返しに私も塗ってあげようか?」

 

「いえ、自分で塗りましたから……コトミもついでに」

 

「さすがお兄ちゃんね」

 

 

 妹の事をしっかり面倒見てあげるなんて、やっぱりいいお兄ちゃんだよね、タカトシ君て。




横島先生は変わらないでしょうね……

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