桜才学園での生活   作:猫林13世

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まだアリアのターン


肝試しの下見

 海で遊ぶだけ遊んだ私たちは、民宿に移動し、肝試しの下見までの時間を潰すことにした。

 

「スズ先輩、押し入れにお札がありますよ」

 

「触るなよ! 絶対に触るなよ!!」

 

「そう言われると触りたくなりますね~」

 

「止めとけ」

 

 

 タカ兄にツッコまれ、スズ先輩も本気で泣きそうになったので私は押入れのお札には触らないことにした。

 

「それにしても、当たり前のように俺も同じ部屋なんですね」

 

「わざわざ別の部屋にする必要も無いし、タカトシ君なら問題ないってみんな知ってるから」

 

「むしろ横島先生の方が危険だと思ってるくらいだからな」

 

「そうそう……ん? 何で私が危険なんだ!」

 

 

 シノ会長の言葉に頷きかけた横島先生だったが、自分の事を言われていると気づいてギャーギャーと騒ぎ出した。てか、自分が危険人物だって自覚無いんだ、あの人……

 

「タカ兄と横島先生は離れて寝てくださいね」

 

「てか、俺が離れればいいだけじゃないのか?」

 

「それじゃあ私たちの楽しみがなくなるでしょ!」

 

「あ、あぁ……すまん?」

 

 

 私の剣幕に圧されたタカ兄は、思わず謝ったのだったが、納得いかないようで首を傾げていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 辺りも暗くなってきたので、いよいよ肝試しの下見に向かう事になった。

 

「会長、よいこは部屋で大人しくしている時間だと思います!」

 

「何を言う、萩村。少しくらい悪い子の方が女の魅力は上がるんだぞ」

 

「大多数が初耳ですね、そんなの」

 

 

 最近下ネタは控えているようだが、相変わらずわけのわからんことを言う人だな……

 

「とりあえず、この民宿から遊歩道を通って、近くの神社まで向かうぞ」

 

「案外普通ですね~。前みたいに誰かが脅かしたりしないんですか?」

 

「今回は学校行事の下見で来ているからな。そういうお遊びは個人的に来ている時だけだ」

 

 

 あっ、一応学校行事だって事は覚えてたんだ……さっきまではしゃいでたからてっきり忘れてたのかと思った。

 

「タカトシ君、少し暗いから手を握っていい?」

 

「はぁ……どうぞ」

 

 

 暗いとはいえ足下が見えない程ではないんだがな……まぁ、普段車移動が多いアリア先輩にとっては、これくらいの夜道でも慣れないものがあるのかもしれないな。

 

「風が涼しいですね」

 

「家の周りより緑が多いから、よりそう感じるな」

 

 

 シノ先輩やコトミ、横島先生は楽しそうに歩みを進める中、スズだけはビクビクしながら歩いている。

 

「シノ先輩、この鳴き声も風情があっていいですね」

 

「コトミもそう言う事が分かるようになってきたのか」

 

「はい。普段から皆さんに鍛えられてますから」

 

「そうなのか?」

 

 

 コトミが成長してるのは認めるが、そこまで胸を張る事でもないと思うんだよな……

 

「な、泣き声!? あーあ、私は聞こえなーい!」

 

「スズ、虫の鳴き声だから……」

 

 

 慌てふためくスズを見て、思わずツッコミを入れてしまった……ほんとこういうの苦手なんだな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 肝試しの下見中、ずっとタカトシ君と手を繋いでいた所為か、手が汗ばんでしまった。

 

「アリア先輩」

 

「ん~? どうしたの、コトミちゃん」

 

 

 握っていた手を眺めていたら、コトミちゃんに声を掛けられた。

 

「何だかいい雰囲気でしたよ」

 

「そうかな?」

 

「はい。アリア先輩は生徒会や英稜の人たちの中でも、特別美人ですし、タカ兄と一緒にいても大多数が諦めるくらいのオーラの持ち主ですから」

 

「オーラとかは分からないけど、コトミちゃんにそう言ってもらえると嬉しいな~」

 

 

 何せタカトシ君の実の妹なのだから、お兄ちゃんの隣に相応しい人への評価は相当厳しいものがあるのだろうしね。

 

「サクラ先輩とは違った雰囲気ですが、美男美女でお似合いですよ」

 

「ありがとー。でも、美人っていうならシノちゃんやカナちゃんもそうじゃない?」

 

「確かにお二人も美人だとは思いますが、シノ会長はまだ『会長・副会長』のイメージが強いですし、カナ会長はなんだか恋人というよりは兄妹みたいな感じがするんですよね」

 

「カナちゃんの方が年上なのに?」

 

「タカ兄のお姉ちゃんって、どんなイメージか分からないんですよ」

 

「あっ、なんとなくわかるかも」

 

 

 私も一つ上だけど、タカトシ君の方が年上っぽい雰囲気を持っていると思うんだよね。タカトシ君は落ち着いてるし、熟練の主夫だから高校生離れした雰囲気が板についている感じがするんだよね。

 

「とにかく、今までカエデ先輩やスズ先輩に後れを取っていた感じでしたが、今日見た限りではアリア先輩も負けてない感じですよ」

 

「カエデちゃんもタカトシ君だけは平気みたいだしね。でも、もしずっとそのままだとしたら、タカトシ君を譲ってあげた方が良いのかな? じゃないと、ずっと処女のままだし」

 

「恋愛は譲り合いの精神じゃ駄目なんですよ? アリア先輩だって、タカ兄と子作りしたいんですよね?」

 

「そりゃ、タカトシ君の赤ちゃんは欲しいけど……」

 

 

 最近我慢していた所為か、コトミちゃんの下ネタに少し恥ずかしさを覚えてしまった……このままだと、いずれノーパンも恥ずかしくなったりするのかな?

 

「まぁ、最終的に決めるのはタカ兄ですがね」

 

「コトミちゃんは? タカトシ君とそういう関係になりたいって言ってた気がするけど?」

 

「私がどう思おうが、タカ兄は私の事を妹としてしか見てくれませんからね」

 

 

 叶わぬ恋をしているのかと、一瞬涙が出そうになったけども、実際血の繋がった妹なんだから、それは仕方ないのかもね。




これが元に戻ったらタカトシの胃に最大級の負担が……

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