桜才学園での生活   作:猫林13世

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引率の自覚無し……


夏祭り

 民宿の近くで夏祭りがあると聞きつけ、私たちはその祭りに出かける事にした。

 

「アリア、横島先生は?」

 

「部屋で一杯やってるって。だから私たちだけで行ってこいって」

 

「あの人は引率の自覚がないのか?」

 

 

 タカトシの言葉に、私たち一同は頷いてしまった。確かに引率なら、我々の行動に同行するのが筋で、部屋でイッパイ――否、一杯やってるなど愚の骨頂だと思ったのだった。

 

「お祭りを楽しむにあたり、我々は生徒会役員として、如何に文化祭に反映出来るかを目標に、生徒会目線でお祭りを観察するように」

 

「あくまでも学校行事の下見ですからね。コトミも、羽目を外し過ぎないようにな」

 

「分かってるって、タカ兄」

 

 

 タカトシがコトミに釘を刺しているのをみて、相変わらずこいつは信用されてないんだなと再認識したのだった。

 

「萩村、我々はあっちを見に行くぞ」

 

「えっ? 分かりました」

 

 

 さっきお風呂でアリアとじゃんけんをし、負けてしまったのでここはアリアにタカトシを譲り、私は萩村とお祭りを楽しむことにしよう。

 

「あっ、待ってくださいよシノ会長」

 

 

 私たちにコトミもついて来て、お祭りを観察し文化祭をさらに発展出来るようにと出店によって行く。

 

「(アリア、今回は譲るが、次は譲らないからな)」

 

 

 親友が後輩と発展するかもしれないと思うと少し胸の当たりがムズムズするが、今日は大人しくしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シノちゃんがスズちゃんとコトミちゃんを引き受けてくれたお陰で、私はタカトシ君と二人きりになった。

 

「では、俺たちも見て回りましょうか」

 

「そ、そうね。タカトシ君、はぐれると大変だから手を繋いでおこうよ」

 

「はぁ……まぁ、確かにアリア先輩は絡まれる率が高いですしね」

 

 

 確かに、タカトシ君と二人きりになり、はぐれた途端に男の人に絡まれることが多い気がするんだよね……でも、私からすればタカトシ君も結構女の子に見られてるのに、何で声を掛けられないのか不思議だったりするんだよね……

 

「しかしまぁ、村祭りをどう文化祭につなげればいいんでしょうね?」

 

「シノちゃんは生徒会目線と言いつつも、お祭りを楽しみたいだけだと思うけどね」

 

「ありえそうですけどね。まぁ、引率教師があんな感じですから、多少羽目を外すくらいは大目に見なければいけないのでしょうけども」

 

 

 相変わらずタカトシ君は、横島先生より教師っぽいわよね。

 

「こういうふうに、アリア先輩と祭りを回るのは初めてですかね」

 

「そうだね~。何時もはシノちゃんやスズちゃんと一緒だもんね」

 

「スズは兎も角、シノ会長は少し目を離すとどこかに行ってしまいますからね」

 

「ふふ」

 

 

 タカトシ君にとって、シノちゃんもコトミちゃんも大して変わらないみたいね。

 

「おーい、タカ兄ー!」

 

「ん? コトミ、それに……会長? スズも……存分に祭りを楽しんできたようですね」

 

「生徒会目線じゃなかったの~?」

 

 

 合流したシノちゃんとスズちゃんの格好は、実にお祭りを楽しんできた様子がよく見て取れた。お面を被ったり、綿菓子を食べたり、ヨーヨーで遊んでみせたりと、タカトシ君が呆れたのも仕方ないくらいお祭りを楽しんできたようね。

 

「タカ兄、射的で勝負しようよ」

 

「勝負? お前、勝った事あったか?」

 

「ふっふっふ、今日は秘策があるから大丈夫だよ」

 

「秘策?」

 

 

 タカトシ君が首を傾げながらも、あまり驚いた様子が無いのは、コトミちゃんに負けるつもりは無いって現れなんだろうな。

 

「すみませーん! 六人分ください」

 

「六人? 五人だろ」

 

「まさか、見えない誰かが!?」

 

 

 スズちゃんが恐怖からタカトシ君の腰にしがみついたけど、もう一人分の意味はすぐに分かった。

 

「えい、えい」

 

「左外しまくってるな……」

 

 

 コトミちゃんは両手で弾を打ったけど、取れた景品は二つ。私とシノちゃん、スズちゃんは一個も取れなかった。

 

「さぁタカ兄、私の結果を超える事は――」

 

「止めてくれ! アンちゃん、一撃で景品を持ってかれたら商売あがったりなんだよ」

 

「すみませんね。ですが、こういうゲームですから」

 

 

 一回五発で景品を五個手に入れたタカトシ君に、コトミちゃんはあんぐりと口を開けて固まってしまった。

 

「皆さんでどうぞ」

 

「そうか、悪いな」

 

「アンタ、本当に隙が無いわね」

 

「さすがタカトシ君だよ~」

 

「くっ、敵の施しなど受けん!」

 

「なら、小遣いもいらないんだな?」

 

「なっ!? 卑怯だよ、タカ兄!」

 

 

 どうやら最近のコトミちゃんのお小遣いは、タカトシ君のバイト代から出てるみたいね。さらに逆らえなくなってる感じがするわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋に戻り、我々も疲れたので寝る事にした。ちなみに、今回も横島先生は布団に簀巻きにされ部屋の隅に追いやられている。

 

「では、じゃんけんの結果、タカトシの隣には私が寝る事になった」

 

「シノちゃん、抜け駆けは駄目だよ?」

 

「間違ってタカ兄の布団に潜り込んだら、翌朝私たちで公開スパンキングショーですから」

 

「馬鹿な事言ってないで、早く寝ましょうよ……」

 

 

 どうやら萩村の活動限界が近づいてきたようで、既に舟をこぎ始めていた。

 

「では、お休み!」

 

 

 私の号令と共に電気を消し、全員布団に入る事になった。それにしても、タカトシの隣で寝るなんて緊張してきたな……

 

「起きてるか?」

 

「ええ」

 

「学校行事だったが、意外と楽しめた」

 

「全力で楽しんでたように見えましたがね」

 

「お前が締めてくれるから、私たちは遊んでいられるんだ。だから、ありがとうな」

 

「いえ、一人くらいしっかりしてないといけないのは分かってますし、それが副会長としての仕事だと思ってますから」

 

「そうか。これからもよろしく頼むな」

 

「もう少し真面目になってくれると助かりますがね」

 

「最近は下ネタを控えてるだろ?」

 

「それは当然です」

 

 

 タカトシにため息を吐かれてしまったが、最近は少し女性として見られるようになったのだろうか……アピールは出来てない気がするが、下ネタを控えるだけで多少はマシになったのだろうな。




何処が生徒会目線なんだ……

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