桜才学園での生活   作:猫林13世

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下無しだとやりにくい作品ってあるんですね……


シノからの電話

 漸く涼しさを感じるようになった夜、隣の部屋で悲鳴が聞こえたのでコトミの部屋にやってきたら……相変わらずの汚さにこっちが悲鳴をあげそうになった。

 

「それで、この散らかりようはなんだ?」

 

「残ってた宿題を片付けようと思いまして……気分転換に模様替えでもしようかと思い家具を動かしたら……世にも恐ろしい黒いヤツが……」

 

「だからお菓子のゴミとかはきちんと片付けろと言っただろうが」

 

 

 殺虫剤を持ってきて現れたGに噴射、動きが弱ったところを丸めた新聞紙で叩き幾重にも紙で死体を丸め、最後にビニール袋に入れてゴミ箱に捨てる。

 

「さっすがタカ兄、一連の動作がもうプロだね!」

 

「G退治のプロって何だよ……それから、片づけは手伝わないからな」

 

 

 部屋に戻ると、着信していたことに気付き、俺は慌ててかけ直した。

 

『やっとつかまったな』

 

「すみません……ちょっとした面倒がありまして。それで、何かあったのですか?」

 

 

 シノ会長の事だから、何もない可能性も捨てきれないが、一応こう聞かないと後がうるさいからな……

 

『いや、急に君の声が聴きたくなってな』

 

「はぁ……」

 

 

 ほらやっぱり……だがまあ、退屈な時に誰かと話したいというのは普通の感情だろうし、真っ先に選んでもらえたのは光栄に思わなければいけないんだろうな。

 

『それで、面倒な事とは?』

 

「まぁ割と何時も通りなんですけど……」

 

 

 一連の流れを説明する途中で、シノ先輩も虫が苦手だったと言う事を思い出し、ヤツの事はコトミの時と同じくGと呼ぶことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネネやムツミと宿題の追い込みをしていたら、会長から電話がかかってきた。

 

「はい、何かありましたか?」

 

『いや、何もなくて退屈なんだ。萩村は何をしてるかと思ってな』

 

「ネネとムツミと一緒に、夏休みの宿題を片付けてます。って、寝るなムツミ!」

 

 

 先輩と会話しているので油断したのか、ムツミが舟をこぎ始めていた。

 

「だって、眠いし勉強分からないし……」

 

「だったら、これをムツミちゃんが挿れて、寝そうになったらスズちゃんがスイッチを入れればいいんだよ」

 

「ゴメン、無理……」

 

『轟は相変わらずだな』

 

 

 会長がしみじみと言った感想に、思わず「貴女も大概でしたけどね」と言いそうになってしまった。

 

「勉強が終わったら、三人でボアの散歩に行こうと思っています」

 

『おや? 散歩は早朝だと言っていなかったか?』

 

「この時期は早朝に散歩は行きません。ラジオ体操に来た子供と間違われるので」

 

『なんというか……悪かったな』

 

「いえ、気にしないでください」

 

 

 その後気まずくなるのを避けたのか、会長は電話を切ったのだった。

 

「ムツミの集中力も限界みたいだし、先に散歩に行きましょうか」

 

「そうだね。この時間ならもう涼しいだろうし」

 

 

 ムツミが真っ先に喰い付いてきたが、散歩という単語にボアも反応を示し、窓越しに催促をしている。

 

「それじゃあ行きましょうか」

 

 

 ボアを連れて三人で夜道を散歩する。一人だと若干怖い気もしてたけど、やっぱり人がいると安心できるわね。

 

「やっぱり涼しくなってきてるわね」

 

「そう? 私はまだ暑いな」

 

 

 ネネって意外と暑がりなのね。これぐらいならもう、部屋もクーラーより窓を開けた方が涼しいかもしれないのに……

 

「あっ! スイッチ切ってなかった」

 

「なんのスイッチ?」

 

「モラルだよ」

 

 

 他に人がいなくて、本当に良かったわ……てか、会長と七条先輩が大人しくなった分、ネネのネタが重く感じるわね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寝ようと思ってたけど、暑くて汗を掻いて不快な思いをしたので、もう一度お風呂に入ろうかと思っていたら、シノちゃんから電話がかかってきた。

 

「はーい、シノちゃん何か用?」

 

『寝られなくてな。タカトシ、スズと電話をしたんだが何かと忙しそうだったから……アリアは何をしてるんだ?』

 

「寝ようと思ったんだけど、暑くて汗掻いちゃって……もう一回お風呂に入ろうかと思ってたとこなんだ~」

 

『そうか、タイミングが悪かったな』

 

「気にしないで~? それに、私も誰かとお喋りしたいって思ってたから、グッドタイミングだよ」

 

 

 ちょっと前なら、官能的な汗じゃない、くらいのボケをしたかもしれないけど、相手がタカトシ君じゃないにしても自重しないと、油断したらタカトシ君の前でも言ってしまうかもしれないからね。

 

『この時間に汗を掻くって事は、アリアはもうクーラーに頼ってないのか?』

 

「何時までも頼ってると、体調管理に支障をきたすからね~。本音ではまだ使いたいけど、身体の為や環境の為には頼りっきりはね」

 

『その精神、見習わせなければいけないヤツが多そうだな』

 

「でも、タカトシ君はあまり頼って無さそうだけどね」

 

『アイツは主夫だからな。一ヵ所に留まることが少なそうだし、クーラーの温度も我々より高そうだな』

 

 

 シノちゃんと共通の話題は多いはずなのに、ここ最近はタカトシ君の事ばかり話してる気がする。やっぱり、私もシノちゃんもタカトシ君の事を意識してるんだろうな。

 

『ん? いつの間にか外が明るくなってきているな』

 

「本当だ~、あっという間だったね」

 

『そろそろ電池も切れそうだし、これで失礼しよう』

 

「はーい。また今度ね~」

 

 

 電話を切ったタイミングで、私は携帯を持ったまま寝てしまった。後日シノちゃんも同じようなタイミングで寝た事を聞いて、私たちは同時に笑い出したのでした。




アピールの為とはいえ、ネタが使えないのはキツイ……

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