桜才学園での生活   作:猫林13世

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背伸びの意味が違う……


シノの背伸び

 朝から大量の生徒会の仕事を終わらせ、日直として職員室に日誌を取りに行く。

 

「横島先生、日誌をください」

 

「津田、一回だけ私も名前で呼んでくれないか?」

 

「いらぬ誤解を生みそうなので嫌です」

 

 

 この人が何を考えているなんて興味ないが、自分に害が及びそうな事はなるべく避けておきたい。

 

「頼むよ。最近男が捕まらなくて溜まってるんだ。お前に呼び捨てにされれば、それだけで一週間は自足出来ると思うんだ」

 

「……それでは、俺はこれで」

 

 

 横島先生の机の上に置いてあった日誌を回収し、俺は足早に職員室を後にする事にした。

 

「おいこら! 教師の命令を無視するな!」

 

「職権乱用も甚だしいですし、そもそもそんな命令聞くに値しませんので」

 

「このままだと、所かまわず生徒を襲ってしまうぞ! それでもいいのか!」

 

「貴女が職を失うだけですし。俺には関係ありません」

 

 

 襲われる人は可哀想だが、自分の身は自分で守ってもらおう。そもそも、この人は生徒を襲う事で有名なんだし、襲われた相手も同意があったと思われても仕方ないだろうし……まぁ、邪な人をこの学園から消し去るための生贄だと思えばいいのだろうか……

 

「タカトシ君、遅かったね」

 

「あぁ、ちょっと……? 三葉、日直の名前だが……」

 

「あっ!? な、何でもないからね」

 

「そうか……」

 

 

 何故俺は苗字で、三葉は名前だったのかは深くツッコまないでおこう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会の作業でパソコンを使っていたのだが、ずっと同じ体勢なのでだんだんと疲れてきてしまった。

 

「パソコン作業は肩がこって駄目だな……」

 

「慣れればそうでもないですがね。肩がこってるなら、背伸びでもしたらどうです」

 

「そうだな」

 

 

 私と会話しながらも、タカトシは書類から目を離さない。生徒会役員としては頼もしさを感じるが、意識されてないようで女としては複雑な思いだ……

 

「ふぅ……胸が大きいと肩がこるな」

 

「いえ、そういう背伸びではなくて……」

 

 

 自虐ネタまでスルーされたらどうしようとも思ったが、さすがはタカトシだな。

 

「分かってはいるが、噂では胸が大きい人は肩こりが酷いと聞いたからな。そういうシチュエーションで背伸びして見たかったんだ」

 

「はぁ……肩こりが酷いなら、作業変わりましょうか?」

 

「そうしてくれると助かる。では、私はタカトシの仕事をするから、タカトシは私の仕事を頼む」

 

「はい。と言っても、こっちはもう殆ど終わってますが」

 

 

 そう言ってタカトシの仕事を引き継いだ私だが、確かに大抵終わっているので、これでは全然平等ではないと思ってしまった。

 

「タカトシにばかり仕事を押し付けて悪いな。今度どこかに出かけた時、何か奢ろうじゃないか」

 

「別にそこまで気にしなくてもいいですよ。自販機でジュースくらいで十分です」

 

「君は少しは先輩の好意に甘えてもいいと思うんだがな」

 

「一度甘えると癖になりそうですし……うちのコトミみたいに」

 

「あれは……そうだな。締める所はちゃんと締めておかないとな」

 

 

 妙に説得力があったので、私は喰い下がるのを諦めて購買にジュースを買いに行った。戻ってきた時には、タカトシの方も作業が終わっていたので、そのまま生徒会室を閉め帰る事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バイトもなく特に用事もなかったのですが、なんとなく桜才学園の近くの本屋に足を運んだら、ずっと探していた参考書が見つかったので、思わず買い込んでしまった。

 

「お金は足りたけど、さすがに買い過ぎたかな……」

 

 

 本はいわゆる紙の塊なので、何冊も買えば当然重い。駅まで運ぶのも苦労しそうだなと思っていたら、背後から声を掛けられた。

 

「サクラさん?」

 

「タカトシさん……恥ずかしいところを見られてしまいました」

 

「いえ、勉強熱心ですね」

 

「少しはタカトシさんやスズさんに近づきたくて……」

 

「だからってそんなに参考書をまとめ買いしなくてもいいと思いますがね」

 

「仰る通りです……」

 

 

 やっとの思いで見つけたからといって、一気に買う必要は無かったのだ。数冊解き終えるのにだって時間が掛かるんだから、終わってから別の参考書を買えば十分なのだから。

 

「良ければ持ちますよ」

 

「いえ、悪いですし……」

 

「女性に重いものを持たせて、自分は手ぶらなんて、周りの視線が痛すぎますから」

 

「……では、お言葉に甘えて」

 

 

 タカトシさんに参考書を持ってもらい、私は駅まで一緒に歩くことにした。

 

「それにしても、随分難しいものに手を出してますね」

 

「さっきも言いましたけど、タカトシさんやスズさんに少しでも追いつけるようにと思ってますから」

 

「学校が違いますし、そこまで意識しなくてもいいのではないでしょうか?」

 

「同じ生徒会役員ですし、私ももう少し自慢出来る点数を取りたいんですよ」

 

「そんなものですか?」

 

「そんなものなのですよ」

 

 

 タカトシさんだって、スズさんに追いつこうと頑張った結果が、今の成績に繋がっていると聞いてますし、それだったら私も、二人に追いつこうと頑張れば、もっと良い点が取れるのではないかと思っているのです。

 

「それでしたら、またテスト前に勉強会でもしますか? どうせ後輩の面倒も見なければいけないですし、何処で聞きつけたかは知りませんが、シノ会長やアリア先輩、カナさんも来るでしょうし」

 

「そうですね……お邪魔じゃなければ」

 

 

 タカトシさんと勉強会の約束をして、私は改札を通ってタカトシさんにお辞儀をする。タカトシさんも軽く手を振って見送ってくれました。なんだか、周りからは恋人みたいと言われてましたが、残念な事にお付き合いしてないんですよね……




横島先生は駄目だな……

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