桜才学園での生活   作:猫林13世

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時期的にピッタリですね


落ち葉掃き

 秋も深まり、落ち葉が目立つ季節になってきた。今朝も校門から昇降口の間に落ち葉が目立ち、数人が足を取られコケそうになっていたのを目撃した。

 

「というわけで、我々生徒会で敷地内の掃除をしようではないか」

 

「相変わらず唐突に物事を決めますね、シノ会長は」

 

「ですが、確かに危ないですからね」

 

「落ち葉って意外と滑るものね」

 

 

 作業の手を止めて私の意見に同意してくれた三人に、私は満足して大きく頷いた。

 

「用務員さんに頼り過ぎるのも良くないし、我々は生徒会役員だ。人が嫌がる事を進んでするのも仕事だからな」

 

「恥ずかしいなら言わなければいいのでは?」

 

「べ、別に恥ずかしくて赤くなっているわけじゃない! これは、その……若干寒いだけだ!」

 

 

 前なら「欲求不満なだけだ!」と言ったかもしれないが、今は我慢する事を覚えたからな。それに、あまり下ネタばかり言っていると、タカトシに異性として意識されないし……

 

「なら、しっかりと暖かい恰好をしてから掃除をしましょう。シノ会長に風邪をひかれると大変ですからね」

 

「いや、私がいなくても君や萩村がいるだろ」

 

「俺や萩村では認印は押せませんから」

 

「この時期に認印が必要な案件があるとは思えないがな」

 

 

 とりあえずタカトシの進言通り、上に何か羽織る物を持ってきてから外に出る事にしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シノちゃんの提案で学園内の掃き掃除をすることになったんだけど、改めてみると敷地内って広いのね。

 

「落ち葉ってこんなにあったのね~。普段なんとなく見てるけど、じっくり見るとすごいわ」

 

「だが、これだけあれば落ち葉焚きが出来るな。横島先生がサツマイモを差し入れしてくれたから、これが終われば焼き芋大会だ」

 

「「へー」」

 

「なんだその反応は! まるで私が焼き芋を楽しみにしてるみたいじゃないか!」

 

 

 実際そうなのではないかしらと思ったけど、タカトシ君もスズちゃんもスルーしたみたいだし、私もツッコミに慣れてないから黙っておこうかしら。

 

「おや? 生徒会の皆さん、何をしてるんですか?」

 

「見ての通り、落ち葉を掃き集めている」

 

「大変そうですね~。それじゃあ、頑張ってください」

 

「待て。せっかくだからお前も手伝っていけ」

 

「え~、でも私生徒会役員じゃないですし、報酬無しじゃやる気起きません」

 

「終わったら焼き芋があるそうだ」

 

「じゃあ手伝います」

 

 

 タカトシ君が上手く誘導して、コトミちゃんも手伝ってくれることになった。それにしても、コトミちゃんの扱いに長けているわね、タカトシ君は……

 

「というわけで、マキも連れてきました」

 

「こ、こんにちは」

 

「八月一日さんもありがとう。それじゃあ、二人はあっちをお願い」

 

 

 タカトシ君に指示され、コトミちゃんとマキちゃんはその場所へ移動し掃き掃除を始めた。よく見ると向こう側でカエデちゃんも手伝ってくれてるし、やっぱり校内が綺麗になると嬉しいのかしら。

 

「アリア、手が止まってるぞ?」

 

「ごめんなさい。皆手伝ってくれて嬉しいなって思って」

 

「確かに、大した報酬が出るわけじゃないのに、こうして手伝ってくれるのはありがたいよな」

 

 

 シノちゃんと感動を共有して、私たちも掃除を再開する事にした。だって、あまりサボってるとタカトシ君に睨まれちゃうからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 落ち葉焚きに必要な分以外はゴミ袋に回収し、後日業者に持って行ってもらう事にして、私たちは横島先生が差し入れてくれたサツマイモをアルミに包んで、たき火の中へ放り込んだ。

 

「こうしてたき火を囲むなんて初めてかもしれません」

 

「今は規制とかいろいろあるからな」

 

「タカ兄、疲れた~」

 

「お前は途中から箒を振り回して遊んでたからだろ」

 

 

 タカトシに怒られても、コトミはタカトシに寄りかかるのを止めない。妹だから自然なスキンシップが出来るんだろうけども、ちょっとうらやましわね……

 

「焼けたぞ~」

 

 

 たき火を仕切っていた横島先生が完成した焼き芋を取り出し、一人一人に配っていく。

 

「甘くておいしいな」

 

「私、焼き芋って初めて自分で作ったけど、結構おいしいんだね~」

 

「横島先生がちゃんとアルミも買って来てくれてよかったです。直接火に放り込むと黒焦げになっちゃいますからね」

 

「タカ兄、お茶が欲しい」

 

「自分で買いに行け」

 

 

 それぞれがそれぞれの感想を言い合いながら、私たちはホクホクの焼き芋を食べる。

 

「どうして冬に近づくにつれて焼き芋を食べたくなるのかしら」

 

「さぁ? でも、確かにそういう人が多いらしいね」

 

「特に女子は、太るかもと分かっているのに止められないのよね」

 

「何だか実感が籠ってるな、五十嵐。さては。毎年少しずつ太っているのか?」

 

「太ってませんよ! ……あっ、でも最近ブラがきつくなってきたような気が」

 

「ちくしょー! 私だって大きくなってやるんだからな!」

 

「おーい。あと一本残ってるんだが、誰か食べるかー?」

 

「もうお腹いっぱいですよ」

 

「それじゃあ、食べてないから私が食べるか」

 

 

 真面目に火の番をしていたので、横島先生は焼き芋を食べていなかったようだ。最後の一本を横島先生が食べ、しっかりと火の処理をして、本日の清掃活動は終了したのだった。

 後日、校内美化ボランティア活動をしていたと新聞部に取り上げられたのだが、作成過程の物はかなり酷かったので、タカトシがしっかりと構成し直して今の内容で発行されたのは、生徒会役員と新聞部だけが知る秘密になったのだった。




珍しく真面目な横島先生……

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