桜才学園での生活   作:猫林13世

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勉強会ですね


シノのコンプレックス

 期末試験の勉強会を開く為、我々桜才学園生徒会役員と、英稜高校生徒会会長と副会長、そして五十嵐が教える側として参加し、コトミとトッキーの赤点回避を目指すべく津田家へと集合した。

 

「毎回毎回、妹の為に申し訳ありません」

 

「気にするな。こちらこそ、毎回お泊りしたり料理を用意してもらったりと世話になってるからな」

 

「そうですよ、タカ君。私たちだって勉強しなければいけないのですから、場所を提供してもらって感謝してるんですよ」

 

 

 申し訳なさそうに頭を下げたタカトシに、私とカナがフォローというか気にするなと告げ、アリアたち他のメンバーも頷いてタカトシの心配を減らそうとする。

 

「タカ兄は気にしすぎなんだよ~。勉強会なんだから勉強すれば問題ないって」

 

「そもそもお前が自力で赤点回避出来れば問題ないんだがな」

 

「だって、タカ兄と頭の出来が違うんだから、そんなの無理に決まってるじゃん。受験の時だって、かなりギリギリで合格したんだし」

 

「威張っていう事じゃねぇだろ、それ……そもそも、私やお前は見捨てられたら補習になって冬休みは半減、そしてお前は塾に入れられて自由時間だって無くなるんだぞ? 感謝するなら分かるが、何でお前が偉そうに言ってるんだよ」

 

 

 トッキーにツッコまれ、コトミは自分の境遇を思い出し慌てて正座をして我々に頭を下げる。

 

「出来の悪い生徒ですが、この通りよろしくお願い申し上げます」

 

「私も、毎回申し訳ないです……」

 

 

 コトミとトッキーに頭を下げられ、我々は勉強会を開始する事にしたのだった。ちなみに、タカトシはコトミに教える事が出来ないので、コトミの担当は私とアリア、カナの三人が受け持つことになったのだった。

 

「そう言えばマキも呼んだんだけど、まだ来てないの?」

 

「八月一日さんなら、少し遅れると連絡が来たぞ」

 

「何でタカ兄に? 普通私にじゃないの?」

 

「家主がタカトシだからじゃないか? とにかく、コトミはさっさと勉強道具を用意しろ」

 

 

 何時まで経っても用意する気配が無かったコトミを注意して、我々も自分たちの勉強道具を取り出し勉強をすることにした。それにしても、この人数が問題なく入れるとは、相変わらず大きな家だな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシさんと私は時さんの担当をスズさんと五十嵐先輩にお任せして、とりあえず自分たちの勉強をすることになった。と言っても、タカトシさんはすらすらと問題を解いていくのに対して、私は途中躓いたりタカトシさんに教わったりしてようやく進めているのだが……

 

「同じ副会長として、なんだか情けなく思います……」

 

「役職とかは関係ないですし、俺だって分からないことはありますから」

 

「例えば?」

 

「そうですね……何であの人たちはふざけてるのに成績上位なのか、とか」

 

 

 タカトシさんの視線の先には、コトミさんに勉強を教えてるはずの三人がおかしな話題で盛り上がっている姿があった。最近は控えているらしいですが、カナ会長が一緒にいるという事で箍が外れているのか、天草さんも七条さんも楽しそうに会話している。

 

「まぁ、勉強出来るって事なんでしょうけども、コトミまで盛り上がってて大丈夫なのか?」

 

「お兄さんとしてはやはり心配なのですか?」

 

「塾通いとなると、月謝とかその他いろいろ用意しなければいけませんからね。結局金がかかるんですよ」

 

「た、大変ですね……」

 

 

 そんなことまで考えなければいけないとは、さすがタカトシさんですね……私だったら塾に通わせて成績が良くなるのだろうかとか考えてしまいますが、そこに考えが及ぶとはやはりタカトシさんは主夫なのでしょうね。家計のやりくり、とかそういう概念なんでしょうし……

 

「サクラさん、そこ違いますよ」

 

「えっ?」

 

 

 タカトシさんに指摘され、私は自分がミスしている事に気が付いた。会話しながらでもしっかりと間違いを見つけ出せるとは、その能力が羨ましいです。

 

「すみません、遅れました」

 

「いらっしゃい、八月一日さん」

 

「あっ、マキ! 先輩たちが苛める~」

 

「苛めてなど無い。お前が我慢出来るかどうか試しているだけだ」

 

「ものの見事に集中出来てないようですがね。五問中四問間違えてます」

 

「これはもっと気合いを入れるしかなさそうだね~」

 

 

 どうやらあの会話はコトミさんが我慢出来るか、集中する事が出来るかどうか確かめる為に繰り広げられていたらしいが、問題をテキトーに切り上げて会話に加わった時点で三人は内容を変えればよかったのではないのでしょうか……

 

「とりあえず八月一日はタカトシたちと一緒に自分の勉強をしてればいいさ。我々でコトミを、萩村と五十嵐がトッキーを立派に育て上げるからな」

 

「胸は立派に成長中なんですけどね~」

 

「喧嘩売ってんのかー!」

 

 

 コトミさんの一言に天草さんが盛大に反応を示した。身体的コンプレックスなのか、天草さんは胸の大きさを過剰に気にしているのだ。

 

「あそこまで気にする必要あるのでしょうか」

 

「さぁ? 俺には分からないことですから」

 

「そ、そうですよね……」

 

 

 タカトシさんが分かったらそれはそれで嫌ですし、コンプレックスくらいみんなあると思うんですよね……ちなみに私は、タカトシさんやスズさんと比べて残念な頭が悩みなんですが……




気にし過ぎは何事も良くないですけどね……

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