桜才学園での生活   作:猫林13世

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これくらいしなきゃダメですからね、彼女たちは……


夜も勉強

 タカトシ君の部屋に泊まるにあたり、問題が一つある。それはどっちがタカトシ君に近い布団で寝るかという事なのだが、じゃんけんだとサクラちゃんが圧倒的不利だし、公平を期すためにはどうすればいいんだろう……

 

「私は別にこちら側でもいいんですけど」

 

「ほんと? 後で文句言わない?」

 

「言いませんよ」

 

 

 サクラちゃんが自分から扉側を選んでくれたお陰で、私は労せずタカトシ君の側で寝る事が出来るようになった。ちなみに、タカトシ君は今お風呂に入っている。

 

「それにしても、タカトシ君の蔵書は凄いね。噂でしか聞いてないけど、男の子の部屋ってイカ臭いエッチ本があるって思ってたよ」

 

「タカトシさんと一般的な男子高校生を同列に見てはいけませんよ」

 

「それもそうだよね~。もしタカトシ君が普通の高校生だったら、私たち今夜にでも処女じゃなくなっちゃうし」

 

「タカトシさんの前以外でも控えてくれませんかね?」

 

「こんなの、女の子の一般的な会話でしょ?」

 

「七条さんの一般的は、いろんな意味で一般的ではないと思います」

 

「そうなの?」

 

 

 首を傾げて尋ねた私に、サクラちゃんはどう一般的でないかを説明してくれた。

 

「まず、七条さんはお金持ちの家の人ですから、金銭感覚が一般の高校生とはズレていると思います」

 

「そんなことないと思うけどな」

 

「七条さんのズレたエピソードはいろいろと聞いていますから……それはさておき、次に天草さんと長い間下ネタで盛り上がっていたので、恥じらいも一般的とはズレています」

 

「まぁ、それは最近になって自覚してきたけど」

 

 

 ノーパンで過ごしてたり、男の子の前で平気で下ネタを言ったりと、今考えると大分恥ずかしい事をしてきたんだと思うわよね。

 

「後はそうですね……テスト前にこんなのんびりしてられるのも、普通の高校生ではありえないと思います」

 

「そうかな? むしろコトミちゃんやトッキーさんのように慌ててる方が珍しいと思うんだけどな」

 

「七条さんの周りではそうでしょうが、一般的な高校生は、テスト前になると憂鬱になり、勉強しなきゃと慌てるものなのです」

 

「そうなんだー」

 

 

 サクラちゃんも特に慌ててるようには見えないけど、コトミちゃんたちの方が普通だったんだね。

 

「ところでサクラちゃんはまだ勉強するの?」

 

「まぁ、私は皆さんほど出来が良くないので、もう少しやっておかないと厳しいので」

 

「そうなの? まぁ、努力すればきっといいことあるよ」

 

 

 絶対になんて言い切れないけど、努力しないで後悔する事があるなら、努力した方が良いと私は思うけどな~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風呂掃除も済ませて、リビングで一服しようと思ったら、時さんが死にそうな顔でキッチンにやってきた。

 

「どうかしたの?」

 

「いえ、少し水でもと思いまして……」

 

「相当絞られてるようだね」

 

 

 リビングには確か、スズとカナさんと八月一日さんがいるはずだから、時さんもかなり大変な思いをしてるんだろう。まぁ、勉強を疎かにしてきた時さんが悪いんだけど、少し同情してあげよう。

 

「三葉や中里さんもだけど、部活ばっかりに重きを置いていたら駄目だよ」

 

「分かってはいるんですが、勉強嫌いなんです」

 

「まぁ、好きな人はそんなにいないだろうけどね」

 

 

 時さんが使ったコップを受け取り、すぐに洗ってしまう。あまり長居をして時さんの勉強時間を奪ってしまうのも悪いから、部屋に戻るとするか。

 

「あっ、タカ兄助けて!」

 

「コトミ? お前勉強は」

 

「シノ会長とカエデ先輩がスパルタ過ぎてこれ以上勉強したらパンクしちゃうよ」

 

「スパルタって、そんなに厳しいのか?」

 

「少しよそ見しただけで怒られる」

 

「勉強中によそ見をするお前が悪い」

 

 

 コトミの襟首を掴んで、部屋まで引き摺って行く。こうでもしないとまた逃げ出すからな……

 

「コトミ、このページを終わらせるまで寝かせないからな!」

 

「コトミさんの為なんですから、もう少し頑張ってください」

 

「私だって頑張ってますよー! 先輩たちの基準で考えないでください」

 

 

 まぁ確かに、コトミ基準と先輩たち基準だと、頑張っているの捉え方が違うのだろう。コトミにしては頑張っている方だと思うが、ここは先輩たち基準で頑張ってもらおう。

 

「あと見開き一ページだけなんだから頑張れ」

 

「タカ兄までそんなこと言うの! 私頑張ってるじゃん!」

 

「そうだな。このページまで頑張れば、明日の昼にコトミの好きなカツカレーを作ってやろう」

 

「頑張る! タカ兄のカツカレーは最高に美味しいからね」

 

 

 物でつるのも何だか気が引けたが、物欲でも何でもこの際やる気になるなら使って行こうと思った。

 

「さすがタカトシだな、一瞬でやる気にさせるなんて」

 

「ご褒美をチラつかせただけですよ」

 

「それでも、やる気がなくなってきたコトミさんをやる気にさせたのはさすがだと思います」

 

「それじゃあ、俺は部屋に戻るので、コトミの事よろしくお願いします」

 

「うむ」

 

 

 シノ会長とカエデさんにコトミの事を頼み、俺は俺の部屋に戻る事にした。

 

「あっ、タカトシ君お帰り」

 

「サクラさんの勉強を見てたんですか?」

 

「あんまり教える事ないけどね」

 

 

 布団の上に座りながら読書をするアリア先輩と、その隣で必死に問題集を解いているサクラさんを見て、俺も自分の勉強をすることにした。よくよく考えれば、今日あまり勉強してないからな……




コトミとトッキーは頑張れ……

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