桜才学園でももう時期期末テストが行われる……学年20位までに入らなければある事無い事噂を流されると脅されているから、それなりに頑張らなければ!
「俺全然勉強してねぇよー」
「あっ、私も全然してないよ~」
「赤点さえ取らなければ問題無いだろ」
「だよね~」
「「あはははははは」」
柳本と三葉が大きな声で話してるのを聞いて、少しは気が楽になったと言うか落ち着いてきた。
そうだよな、まだ勉強してない生徒の方が多いんだよな!
「おはようござい……」
「もう時期テストだが、皆大丈夫か?」
「問題ありません!」
「私も大丈夫かな~」
「そもそも失敗する要素が見当たりません」
此処に来ると焦るよな~……2年生の1位2位と、1年生の1位が居るから比べられると胃が痛くなるんだよな……もう少し頑張るか。
期末テストも大切だが、生徒会の仕事もそれなりにあるのでそっちもやらなければならない。私と会長で大体終わるのだが、津田にだって仕事をさせなければいけないのよね。
「どう津田、生徒会の仕事には慣れた?」
「うん、おかげさまで。あっでも……」
「何よ?」
中途半端で区切られると気になるじゃないの! その事を知ってか知らずか津田は少し考え込んでから言った。
「変な意味じゃ無く、周りが女の子ばっかだから少し緊張するかな」
「如何言う意味で?」
「ほら、会話に加わって良いのか如何かとかさ。良くついていけないんだよ」
「気にしすぎじゃない?」
「そうかな? 男と女じゃ一般的な会話も違ってくるだろ?」
「そうなのかしらね」
津田と別れて私だけ生徒会室にやって来た。津田は職員室に居る横島先生に呼び出されてたので仕方ないかな。
「夏場になるとブラ暑苦しいよね~」
「そうだな」
「………」
ゴメン津田、私もついていけなかったよ……果してこれが一般的な会話か如何かは疑問だけど。
横島先生に呼ばれて職員室に行ったら、如何やら資料室の整理を手伝ってほしいらしいのだが、それなら何故俺個人に頼んだんだ? 何時もなら生徒会に頼むのに……
「いや~悪いわね~」
「はぁ……」
「あっ、この教室よ」
鍵を開けて教室に入ると、確かに散らかってるのが分かる……やっぱり生徒会でやった方が早そうだと思ったが、部屋の散らかり具合に違和感を覚えた。
「(普通にものを置いただけで此処まで乱雑になるのか? 何か人為的なものを感じるのは気のせいなのだろうか)」
資料室と言う名前から分かるように、此処に置かれているものの大半は紙だ。紙なら大切に保管されてるのが普通だろうし、資料なら尚更だ。
「横島先生、此処って本当に……」
がちゃ。
何かが閉まる音が聞こえた。この空間で閉まるものと言ったらドアぐらいしか……ってまさか!
「何で鍵閉めたんですか?」
「いや、深い意味は無いのよ。ちょっと雰囲気を出そうと思って」
「何の雰囲気ですか! あと息荒立ててこっち来るな!」
「大丈夫。ほんの先っぽだけだから」
「あんたそれでも教師か!」
「保健体育の実習だと思えば良いのよ」
「良い訳あるか!」
「ぐぼぁ!?」
腹部に強烈な一撃を喰らわせ横島先生を倒した。教師相手にこんな事をしたら停学ものだろうが、今回は完全に正当防衛だと思ってる……過剰では無いよな?
「う~ん……もっと殴ってください……」
「うん、過剰防衛では無いな!」
殴られた本人が恍惚の表情で倒れてるんだから、これは過剰防衛にはならないだろう。俺はそう決め付けて足早に資料室を後にした……もちろん片付けは手伝ってない。
ちょっとお散歩していたら前から津田君がやって来た。何だか急いでるようにも見えたけど、私に気付くと会釈してくれた。
「津田君、如何かしたの?」
「いえ、ちょっと変態から離れてただけです」
「ん~?」
「ぶっちゃけると横島先生です」
「そう言えば呼ばれてたね~」
横島先生の事だからきっと津田君の事を食べようとして逆に気絶させられちゃったのかな? それにしても教師を気絶させちゃうなんて、津田君は本当にSなんだな~
「先輩?」
「ねぇ津田君」
「はい?」
「この学校って創立50年なのよ」
「はぁ……?」
私が唐突に切り出した話題に、如何反応すれば良いのか困っている津田君……Sを困らせるのって結構快感なのよね~。でも津田君はそんな事で焦らないでしょうけど。
「それが如何かしたんですか?」
「50年もあると、色々と伝説があるのよ」
「例えば?」
「あの木」
「木……ですか?」
「うん。あの木の下で告白すると恋が成就すると言われているわ」
「……去年まで女子高でしたよね?」
「うん」
それが如何したと言うのかしら……津田君は少し考えてから私の目を見て来た。そんなに見つめられたら濡れちゃうわよ。
「女子しか居ない学園で、如何やって恋が成就するんです?」
「……そう言われればそうね」
恋愛は男女でするものだから、去年まで男子が存在しなかったこの学園で恋が成就するはず無いのよね……レズでも無い限り。
「深く考えるのは止めておきましょう……」
「面白そうだけどね~」
「いや、絶対に面白くは無いと思うんですが」
津田君は呆れながらも生徒会室へ向かう速度を落とす事無く進んでいく……そう言えば私、何処に向かってたんだっけ?
生徒会室に戻ってきたら、会長が難しそうな顔をして腕を組んでいた……何か問題でもあったのだろうか?
「学校のホームページに我々生徒会のページを作る事になった」
「へー」
「そうなんですか」
「でも、何で今更?」
「……今日ほど信頼と言う言葉を重く感じた時は無い!」
「出来ないんですね……あと質問に答えてください」
「そんな事私は知らん! 気になるなら学校に聞け!」
出来ない事を指摘され少しキレ気味の会長を七条先輩が宥め、俺と萩村で構図を考える事にした。
会長にも出来ない事があって安心したが、生徒会のページって何を書けば良いのだろう?
「萩村、何か案ある?」
「とりあえず年間の予定表は載せておきましょう」
「それだけで仕事量が分かるからな」
「後は質問コーナーでも作っておけば大丈夫でしょう」
「……誰が管理するんだ?」
「ん!」
「えっ、俺!?」
指差され焦る……普通こう言うのって会長が……あぁ、そうか。
「俺、副会長だった……」
「会長のフォローはアンタの仕事でしょうが」
「はい、頑張ります……」
忘れがちだが俺は副会長、会長の補佐が主な仕事なのだ。
今までフォローする必要も無かったので様々な仕事をしてきたが、副会長として初の仕事がこれですか……何か情けないなぁ。
そろそろ津田の相手を考えなければ……