桜才学園での生活   作:猫林13世

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珍しくラブ要素多め……


お参り

 タカ兄が出かける準備をしていたので、私はシノ会長とカナ会長の側を離れタカ兄に声を掛けた。別に出かけるのは問題ないけど、さっきサクラ先輩も出かける準備をしていたので、これは何か面白い事になるかもしれないと感付いての行動だ。

 

「タカ兄、どこか行くの?」

 

「ちょっと近所の神社にお参りに」

 

「珍しいね。タカ兄が神頼みなんて」

 

「お前の成績を考えると、神様にすがりたくもなるだろ」

 

「……ほんと、大変だね」

 

 

 思わぬカウンターを喰らい、私はそそくさと逃げ出そうとして、肝心の事を聞き忘れたと踏みとどまりタカ兄に問いかける。

 

「一人で行くの?」

 

「いや、サクラさんも一緒に」

 

「ふーん、なんだかデートみたいだね」

 

 

 タカ兄が女性と二人きりで出かけた事なんてあったかな……あっ、お買い物とかはあった気がするけど、あれはデートって雰囲気じゃなかったし……

 

「バカな事言ってないで少しは勉強したらどうだ? 宿題だってあるだろ」

 

「えっ? そんなのあったっけ?」

 

「八月一日さんから聞いてるぞ。とぼけないで少しは片づけるんだな」

 

「マキめ……ラスボスに密告するとは」

 

「いい加減厨二も卒業しろよな」

 

 

 何だかタカ兄にお説教されるために声を掛けちゃったみたいになったけど、やっぱりタカ兄はサクラ先輩の事を意識してるようだ。何時もならもう少し柔らかいツッコミなのに、今日のは鋭さ満点でちょっと怖い雰囲気だし。

 

「お年玉が欲しかったら、帰ってくるまでに終わらせておけよ。大した量じゃないんだし」

 

「なっ、お年玉を人質に取るなんて卑怯だよ! タカ兄はそんなことしなかったはずなのに……」

 

「言い方は悪いが、金でもちらつかせないとやる気出さないだろ、お前」

 

「……ハイ、ガンバリマス」

 

 

 確かに前はお小遣いを人質に取られ、必死になって勉強したんだったな……今回はそれがお年玉になっただけだけど、これが無いと今月の私はかなり厳しいのだ。

 結局タカ兄を尾行しようとした計画は実行に移ることなく、シノ会長とカナ会長のお世話になりながら宿題を片付ける事になったのだった。

 

「(それにしても、やっぱりタカ兄の本命はサクラ先輩で決まりなのかな?)」

 

 

 帰ってきたらお義姉ちゃんとでも呼んでみようかな。どんな反応するんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 思いのほかすんなりと外に出ることが出来て、私はちょっと意外な感じがしました。何時もならタカトシさんが出かけるとなれば誰かしら声を掛けてきたり、コトミさんが付いて来ようとしたりするのですが、今日はそれもなく本当にすんなり外に出れたのです。

 

「何だかちょっと場違いな感じがしますね」

 

「確かに、周りは晴れ着だったりしてますからね」

 

 

 私たちは普段着で普通の上着を羽織ってお参りに来てますが、やっぱりちゃんと晴れ着の方が良かったのでしょうか。

 

「でもまぁ、ちらほらと普段着の人も見えますし、別に気にしなくてもいいかもしれませんね」

 

「でも、なんだかカップルとか家族連れとかが多くて、なんとなく居辛い雰囲気はありますよね」

 

「それは確かにそうですね……さっさとお参りを済ませて帰りますか?」

 

「出店とかを見てから帰りましょう。お土産もいりますし」

 

 

 黙って出てきたのだ、カナ会長や天草さんたちが後から文句を言ってくるかもしれないので、出店で何かを買って帰った方が良いでしょうしね。

 

「お参りといっても、凄い人ですね……」

 

「まぁ、お正月ですからね」

 

 

 普段はお参りなんて来ない人でも、お正月くらいはという気持ちで訪れるのでしょう。そこまで大きくない神社でも、結構な人がお参りに来ているのです。

 

「まぁ、十分もすれば順番が来るでしょうし、大人しく並びましょうか」

 

「そうですね」

 

 

 私も普段はお参りなどしないですけど、今日くらいは神頼みもいいかもしれませんし、せっかく来たのに何もしないで帰るのももったいないですからね。

 

「タカトシさんは何をお願いするのですか?」

 

「人に言わない方が叶うようですが、さっきコトミに言っちゃいましたからね。アイツが少しでも真面目に勉学に取り組むようにお願いしようかと」

 

「大変ですね、お兄ちゃんは」

 

「サクラさんにお兄ちゃんと言われると不思議な感じがします」

 

「そうですか? でも、タカトシさんみたいなお兄ちゃんがいたらな、とは思ったことがありますよ。勉強も家事も出来ますし、それにカッコいいですし」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

 珍しくタカトシさんが照れたようで、恥ずかしそうに頭を掻いて辺りを見回し始めました。

 

「タカトシさんでも照れたりするんですね」

 

「当然ですよ。サクラさんは俺の事をロボットか何かと勘違いしてませんか?」

 

「そんなことありませんよ。あっ、もうすぐお参りが出来そうですね」

 

 

 お喋りをしていれば十分などあっという間で、ようやくお賽銭を入れられる距離まで列が進み、私たちもお参りを済ませる事が出来ました。

 

「何をお願いしたのですか?」

 

「人に言わない方が叶うらしいので、言いません」

 

「それ、さっき俺が言った事じゃないですか」

 

「えぇ、だから教えません」

 

 

 タカトシさん相手にはぐらかす事に成功した私は、会長たちに買って帰るお土産を選ぶためにタカトシさんから離れました。ちなみに私が神様にお願いした事は、少しでもタカトシさんと親密になれますようにでした。




話作ってる間、なんだかムズムズしてました……

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