桜才学園での生活   作:猫林13世

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やっぱり駄目メイド……


出島さんへのご褒美

 とりあえずトランプをしようと決め、タカトシも姿を探したのだが何処にもいない。買い出しにでも行ったのかとも思ったが、昼の時に夕食の分も買ってきているようで、どうやら買い出しでもないらしい。

 

「いったい何処に行ったのだ……」

 

「シノっち、どうやらサクラっちの姿も見当たらないようです」

 

「何で誰も行き先を知らないんだ!」

 

 

 家主であるタカトシが出かける時に、誰かに声を掛ける必要は無いのかもしれないが、それでも誰かには声を掛けているはずだ。何せタカトシがいなくなった今、この家で起こった責任に対処しなければいけないのはコトミになるわけで、そんな危険な状況をアイツが善しとするはずもないからな。

 

「おっ、コトミ。タカトシは何処に行ったんだ?」

 

「へっ? タカ兄ならサクラ先輩と一緒に近所の神社にお参りに行きましたよ」

 

「なにっ!? 聞いてないぞ」

 

「シノ会長たちは真剣に何をして遊ぶかを話し合っていましたからね。タカ兄も特に声を掛ける事は無いだろうって思ったんじゃないですか? それほど長時間家を空けるつもりは無いでしょうし――」

 

『ただいま』

 

「――ほら、帰ってきましたよ」

 

 

 タカトシの声に反応した私とカナは、猛ダッシュで玄関に向かう。すると驚いた表情を浮かべていたタカトシとサクラが同時に苦笑した。

 

「そんなにお土産が楽しみだったんですか?」

 

「てか、そんなに匂いました?」

 

 

 どうやら私たちが土産のたこ焼きの匂いにつられたのだと勘違いしたようだ。だが、そんなものは今はどうでも良いのだ。

 

「何故我々に黙って二人きりで出かけたのだ!」

 

「わざわざ報告するまでもないかなと思っただけです。そもそも、ツッコミの機会から逃げ出す為にお参りに出かけたわけですので、ボケ側の先輩たちを連れて行ったら意味がないじゃないですか」

 

「そうですよ。ただでさえ人が多くて大変だったんですから、シノ会長たちを連れて行ったら好奇心でどこに行くか分からないじゃないですか」

 

「うぐっ!」

 

 

 何だか子供扱いされたような気になり心にダメージを負ったが、そうか……デートではなかったんだな。

 

「とりあえず、これは皆さんで食べてください。今お茶の用意をしますので」

 

「キッチンはスズポンと出島さんが使ってるので、お茶なら私が用意しますよ」

 

「カナ会長……そのポケットから取り出した錠剤は何でしょうか?」

 

「これは、ちょっとイケナイ気持ちになるかもしれない薬です。さっき畑さんから頂きました」

 

「あ、あの人は……」

 

 

 タカトシが盛大にため息を吐いたが、それを慰めたのもサクラだった……やはり私たちよりサクラの方がタカトシに近しいのだな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 外にいた時はあれほど気楽そうにしていたタカトシさんが、自宅に戻ってくるなりまた疲れたような雰囲気を醸し出しているのを感じて、私といる時は楽だと思ってくれているのだと分かって、タカトシさんには失礼かもしれませんが嬉しいと思ってしまいました。

 

「サクラ先輩」

 

「どうかしましたか、コトミさん」

 

 

 カナ会長と天草さんがリビングに引っ込み、タカトシさんがお茶の用意をするためにキッチンへ向かった後、コトミさんが話しかけてきました。

 

「タカ兄とのデート、楽しかったですか?」

 

「別にデートじゃありませんし、お参りをしてきただけですから」

 

「えー、二人きりだったのですから、キスくらいしたんじゃ――って、タカ兄?」

 

「お前は余計な事しかしないな」

 

「な、何もしてないじゃん!」

 

 

 お茶の用意を終えて、私がまだリビングに入ってこないのを不思議に思ったタカトシさんが、コトミさんの襟首を掴んでリビングまで引き摺って行きました。

 

「サクラちゃん、お土産ありがとね~」

 

「確かに美味しいな、これ」

 

 

 既に七条さんや天草さんはお土産に夢中になっているようで、その間にタカトシさんは洗濯物を取り込んだりと家事に勤しんでいました。そして、コトミさんは反省させられているのか、部屋の隅で正座させられていました。

 

「タカトシ様と二人きりになれるよう、ロリっ子を引き受けた私にもご褒美を」

 

「な、なんですかいきなり……」

 

 

 部屋全体を眺めていると、背後から出島さんがそのような事を言って近づいてきました。てか、別に出島さんにお願いしたわけでもないのに、何で偉そうなのでしょうか、この人は……

 

「出島さん、またいろいろと教えてください」

 

「それは構いませんが、普段ですと私も仕事がありますのでそうそう教える時間が作れるわけではありませんよ」

 

「それは分かっています。ですから、時間がある時で構いませんので」

 

「いえ、そう言う事ではなくてですね……報酬次第ではいつでも時間を作ると言っているのです」

 

「報酬って……何が欲しいんですか?」

 

「それはもちろん罵声! ロリっこに罵声を浴びせられるなど、この上ない快感じゃないですか!」

 

「誰がロリだ! この変態駄目メイドめ!」

 

「あぁ! この為だけに相手をしたようなものです!」

 

 

 世の中には変わった性癖の人もいるのだと分かっていましたが、まさかこんなに身近にいたなんて……とりあえず出島さんへのご褒美(?)も終わり、天草さんの提案でトランプをして遊ぶことになりました。

 

「(皆さんには悪いですが、私も必死なんですからね)」

 

 

 トランプの最中にそんなことを考えましたが、もちろん声には出しません。だって出したら集中砲火を喰らう事間違いなしですからね。




ツッコミコンビは大変ですね……

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